Chapter7 王国の奪還。
更新がかなり遅くなってしまい申し訳ありません。
その夜、牢屋に閉じ込められた4人は牢屋の狭い窓より月を虚ろな目で眺めながら話していた。
「あたしたち、一体どうなっちゃうんだろ…。」
「多分明日には殺されるだろうな。だからその前にここから脱出必要がある。」
「そ、そんなの嫌! 早くここから出ようお兄ちゃん!」
「ああ、咲魔の言う通りこのままだと明日の今頃には僕たちの命はない。と言ってもなぁ…、あの監視カメラをどうにかしない限りはどうにもできないし…。」
シグが牢内の監視カメラを見て悩んでいると、
「どうやらここは私の出番みたいね、おいで、『カラニビエリ』!」
レミリィがカービンライフルを顕現させ、狙いを定め一発で監視カメラを破壊した。
「よし、でかしたぞレミリィ、あとはこの鉄格子を斬って脱出するだけだ! 出でよ、『グラム』!」
牢に入れられる前に武器は取り上げられてしまったものの、彼らは自分たちで武器に名前をつけることでそれを顕現することができるため、さほど困ることはなかった。
しかし、シグが牢屋の鉄格子を切ろうとしたところで、何者かの足音が近づいてきた。
「やばっ! おい、みんな隠れろ! あとレミリィはその銃を隠しといて!」
シグが慌てて刀を鞘に収め他の3人に隠れるよう言い放った後、どんどん足音が近づいていき、遂に彼らの牢の前で足音が止んだ。
そしてヨルムンガンド兄妹と吸血鬼二人組の前に現れたのは、Dr.ウロボロスの使い魔であるサナであった。
「おや、あなた方はここに捕まっていたんですね。かわいそうに、今出してあげますね。」
そう言って彼女は牢屋の鍵を開ける。
「ど、どうしてお前がっ…。」
「しーっ、話は後です。さぁ、先を急ぎましょう。」
「う、うん。とりあえずありがとう。」
思わぬ助けに戸惑いながらも、4人は牢屋から出ることにした。
「なんでウロボロスの配下のお前が僕たちを助けるんだ?」
「私はもうご主人に怒ったんです。プンプンなんです。いつも役立たずだのなんだのと罵倒されて挙げ句の果てに私にあなた方を捕まえるよう命令しておきながら衛兵とロボットを使ったんですよ。もうこれって、私を馬鹿にしているようにしか見えませんよ。ひどいですよね〜。だからこそご主人にはお仕置きが必要なんだと思うんです私。なのでこれからはあなた方の味方をさせていただきますね。」
「でもそれって、契約違反にならないのか?」
「大丈夫です。ついさっきご主人に契約を解消させられてお暇を出されたところですから。『今日からはこのフレースヴェルグが私の召使いになるから役に立たないお前はいらない。どこへでも行っちまえ。』って…。もうひどいじゃないですかぁ〜(泣)」
そう言ってサナはシグに泣きつく。
これを見たブルーはサナに向かって体当たりを食らわせた。
「貴様、妾のお兄ちゃんに触るでない!」
「痛いですよブルー様(泣)。というか話には聞いていましたが怪盗ヴァルキリーの正体が姫様の双子の兄、シグ様だとは大変驚きましたよ。こう見てみると確かにそっくりですよね。」
「ああ、そうだね…。」
「ふん、妾はまだお主を信用した訳ではないからな!」
「あれ、私たちなんか蚊帳の外じゃない?」
「き、きっと気のせいですよ『お嬢様』。」
根は善良なサナであったが、長らくウロボロスに仕えていた身であったためか、ブルーの信頼はなかなか得られそうになかった。
「ふぇぇぇ…(泣)。ならどうしたら信用してくれるんでしょうかブルー様。」
「そうじゃな…。ではまずあの傀儡を倒して見せよ。」
「「「「え??」」」」
シグとサナ、そしてレミリィと咲魔は壊れた機械人形のように首を後ろに振り向かせると…、
「ギシャアアアアアアーーーーーン!!!」
「うわっ!? いつからコイツここにいたんだっ!?」
「ん? ついさっきだけど。」
「妙に存在感薄いなおい!?」
後ろには例の鳥人間型、『フレースヴェルグ』がいつの間にかそびえ立っていた。
そしてその後ろから人影が現れた。
その人影は紫色のタキシード姿に顔の右半分を覆い隠した長くて白い髪に血のように紅い瞳、頭には不気味な目玉模様のようなものがデザインされたシルクハットをかぶり、右腕には紫色の珠がはめ込まれたステッキを持っていた。
間違いない。
この騒動の黒幕であるDr.ウロボロスである。
「やれやれ、牢のセキュリティーシステムの電源が切られている上に、研究室にあった人間に戻る薬もなくなっているからおかしいと思ってここに来てみたら、そういうことだったのか。役に立たない上に私の邪魔までするとは、本当に使えない使い魔だな。これだから自分のドジが原因で天界から追い出された堕天使は…。」
「堕天使!?」
「お主、元は天使じゃったのか!?」
「俺はてっきり元から悪魔だと思ってたわ。どうやらそこのお二人さんもそうだったみたいだが。」
「あ、それ私も。」
ヨルムンガンド兄妹は揃って驚愕の声を上げるが、吸血鬼の二人組はやけに落ち着いていた。
「……はい。」
サナが肩を落として答える。おそらく散々馬鹿にされて落ち込んでいるのだろう。
「どうやらお前たちはこいつについて実は何も知らないようだな。いいだろう。お前たちに特別に聞かせてやろう。こいつはもともと天界の天使だった。しかしこいつは根っからのどアホで食べることを禁じられていた赤い果実を知らずに食べてしまったんだよ。それが原因で天界の神の怒りを買い、地上に追放されて堕天使になってしまったわけだ。そこで路頭に迷っていたあいつをかわいそうに思った心の優しいこの私が、拾ってやって使い魔としての契約を交わし、召使いとして雇ってやったわけさ。しかしこいつはドジばかりで使えないし、最近開発したこの『フレースヴェルグ』があれば戦闘にも雑用にも使うことができる。正直サナよりもずっと役に立つからな。だからこいつとの契約を破棄してやってクビにしてやったんだ。しかし、役に立たないばかりかあの時助けてやったにもかかわらず私に逆らうとは、愚かにもほどがある!!」
ウロボロスがひとしきり語り終えた後、サナは何かが頭の中でプッチンと切れるような感覚を感じた。
そして彼女はいつの間にかどす黒いオーラを纏いながら怒りで肩をプルプルと震わせていた。
もう我慢ならない。サナはこの時、怒りスイッチが入ってしまったのであった。
「ご主人……、いや『元』ご主人、言ったじゃないですか……あれほど私の過去をベラベラしゃべらないでくださいって……。あれは私にとって忘れたいほど恥ずかしい黒歴史なんです……。どうやら元ご主人にはかなりきっつ〜〜いお仕置きが必要みたいですねぇ……。ですので私の黒歴史を言ってしまった貴方には死ぬほど後悔させてもらいますよ……! お出でなさあぁぁい!! 『グンニグル』ッ!!」
サナはまるで鬼か悪魔のような顔をすると、右手に赤く輝くトライデントのような槍を召喚し、ウロボロスに襲いかかった。
「「「「うわぁ…….。サナってマジギレさせたらこんなに怖かったのか……。こいつだけは怒らせないようにしよう……。」」」」
激怒したサナはまさに悪魔そのものであった。そんな彼女の様子を見たヨルムンガンド兄妹と吸血鬼二人組はかなりドン引きしていた。
しかし、ウロボロスは怯むことなく、フレースヴェルグをけしかけた。
両者の戦闘力はほぼ互角であった。どちらも一歩も引かない真剣勝負。
これほどの体格差にもかかわらず、サナは一歩も引かなかった。やはり怒りというのは時として人に思わぬ力を引き出すことがあるのだろう。
しかし、戦いが長引くについてサナはだんだん押され気味になっていき、端から見ても疲弊しているのが見て取れた。
「チッ、やばいな。サナの奴限界が近づいている。こうなったら、行け! ワイヴァーン!」
それを見かねたシグは、以前ワイヴァーンを封印したモンスターカードを懐から取り出し、その場で投げ放つ。
「グエェェェェェェェェェ!!」
すると、カードを中心にして現れた魔法陣からワイヴァーンが召喚され、その場で不気味な雄叫びをあげた。
「ワイヴァーン! あの傀儡に向かってファイヤーブレス!」
「グエェェェェェェェェェ!」
シグの命令で、ワイヴァーンがフレースヴェルグに向かって紅蓮に燃える炎の息を吐く。
ファイヤーブレスをまともに受けたフレースヴェルグはたちまち業火に包まれた。
「今だサナ! あいつに止めを刺せ!」
「ありがとうございます。では!」
そして、サナが一瞬の隙をついて、フレースヴェルグの心臓部と思われる胸元の赤い宝石に狙いを定めると、
「闇・壊符『ラグナックルデストロイヤー』ッ…….!!」
と唱え、赤く鈍い光を放つグンニグルをフレースヴェルグの心臓部である赤い宝石に突き刺した。
「ギシャアアァァァァーーーーーーーーーーン!!!」
フレースヴェルグは断末魔の鳴き声(?)を上げると、その場で爆散し、粉々に破壊されてしまった。
「よし、ご苦労だった。ゆっくり休んでくれ。」
爆散するフレースヴェルグを眺めながら、シグは召喚したワイヴァーンをカードに戻す。
「ふふん、どうですかブルー様。これで私のことを信用してくれますか?」
サナが何事もなかったような笑顔でブルーに尋ねると、
「わ、わかったのじゃ…….。妾はとにかくお主のことを信用するぞ…….。」
恐怖で引きつった笑顔でブルーはそう答えるのであった。
「ま、まさか私の開発したフレースヴェルグがいとも簡単に破壊されるとは…….。」
さすがのウロボロスもこれには肩を落とさずにはいられなかった。
「貴方の切り札だったフレースヴェルグはもうなくなりました。」
「観念するんだな、ウロボロス。」
「どうやらもう終わりみたいね。」
「ここで降参するなら命だけは助けるが。」
「そうじゃ、もうおしまいじゃウロボロス!! わかったらさっさと降参するんじゃ!!」
「…….フフ、フゥーハハハッ…….! こんなことで私が終わると思うか?」
「「「「「何ッ!?」」」」」
ウロボロスはいきなりまたどこぞの中二病大学生みたいに笑い出したかと思うとすぐさま立ち上がり、ポケットから怪しげな薬を取り出した。
その薬が入った試験管には『魔力増強EX!!』と書かれたラベルが貼られていた。
ウロボロスは蓋を開けると、それをゴクゴクと最後まで飲み干した。
するとその瞬間、ウロボロスの体が光り出した。
魔力の光に包まれた彼の体はなぜか次第に女性っぽくなり、服装もどんどん変わっていった。
そして5人の目の前に現れたのは…….。
かなり露出度が高いエロい格好をしたスタイルの良い魔女であった。
ガーネットのような紅い瞳に白くて長いサラサラヘアー、真紅に染まった妖艶な唇に純白の肌。頭にはシルクハットではなく魔女の帽子をかぶり、手に持っているステッキも形状が変わり、紫の珠が巨大化していた。
体の方も出ている所はかなり出ていて、引き締まっている所はちゃんと引き締まっていた。胸は低く見積もっても九十センチ以上はあり、ブルーとサナ、そしてレミリィは恨めしげにそれを見ていた。
一方シグはというと、どうやら女体に免疫がないらしく、顔を真っ赤にしながらウロボロスから目を背けており、咲魔に至っては鼻血を出して倒れていた。
「どう? 薬の力でパワーアップした私の姿は。なかなかいい感じだと思わない?」
「いや、なぜ女体化するんじゃ? 別にそのままでも良い気がするんじゃが…….。それに無駄に胸がでかいのがすごく気に入らないんじゃが…….。」
「そうよ、いくらなんでもデカすぎる! 咲魔がなんか鼻血出して倒れちゃってるし!」
(うう…….。僕には刺激が強すぎる…….。)
「う〜ん、こればっかりは薬の副作用だからなぁ…….。魔力を最大限に引き出す代わりに、男が服用すれば女になるし、女が服用すれば男になる。これが『魔力増強EX!!』の効果なんだ。おっと、こんな無駄な話をしている時間はないんだった。超超パワーアップした私の力で、あんたたち全員を葬り去ってやるわ!」
そう言ってウロボロスは魔法の杖を5人の方へ向けた。
まずシグが愛刀『グラム』を抜いて彼女に斬りかかり、『グンニグル』を持ったサナ、そしてそれぞれ自分の使い慣れた武器を持ったレミリィと咲魔もそれに続く。
しかし、
「炎・弾符『フレアボール』!」
ウロボロスは杖の先端からいくつもの火炎弾を発射してくる。
「「うわっ!」」
「「きゃっ!」」
4人は火炎弾をもろに食らってしまい、体力の四分の一程度のダメージを受けてしまう。
一方、後ろのブルーはというと…….、
「あつぁっ、あちちちちちっ…….。おい、ウロボロス! 妾のふかふかの体毛が黒焦げになったらどうしてくれるんじゃ! 弁償できるのか! これでも妾、この白いふわふわを気に入っておるんじゃぞ!!」
「「「「そんなこと言ってる場合か!!」」」」
シグとサナ、レミリィ、咲魔は同時にツッコんだ。
「さぁ、お次はこれだ! 氷・吹符『エターナルコールドブリザード』!」
ウロボロスはそんなことはお構いなしに間髪入れずに次の攻撃を繰り出す。
今度は杖の先から極低温の冷気と激しい吹雪が繰り出された。
「「「「寒っ!」」」」
「いくらふかふかの体毛がある今の妾でもこればっかりは耐えられんぞ!」
全員先ほどとは比べ物にならないほどの大ダメージを喰らってしまった。
「ちっ、攻撃の隙さえあれば…….。」
「相手の魔力を封印してしまえばこちらに勝機はあるのですが…….。」
「これは吸血鬼である私にもきついわね…….。」
「ここまで戦闘で苦戦したのは去年のハロウィーン以来かな…….。」
「わ、妾もうダメなのじゃ…….。」
5人とも息も絶え絶えであった。
「ふん、もう終わりか。ならこれで全員あの世へ送ってやる…….。せいぜいあの世で楽しんでこいよ…….。さようなら、闇・暗黒符『ブラックホールバニッシュメント』!」
次の瞬間、ウロボロスの杖の先からどす黒いエネルギーの塊が現れた。
ブルーは倒れ伏した4人とウロボロスの杖の先にある今にも自分たちを吸いこもうとしている黒いエネルギーの塊を見ながらすすり泣いていた。
(ああ、妾にも魔法が使えたら…….。こんなことにはならなかったのに…….。ごめんなさいお兄ちゃん…….いつも迷惑ばかりかけて、しかもこういう時全然役に立てなくて…….。)
彼女が絶望しながらそんなことを思っていると、彼女はふと、あることを思い出した。
(そういえばお兄ちゃんから少しだけMSAについて教えてもらったっけ…….。確か相手の攻撃を防げてその間に体力を回復できる魔法…….それを使えばこういう時役に立つって教わったっけ…….。確かその魔法の名前は…….。)
その呪文は…….。
光・護符『ヒーリングフィールド』っ_________!
彼女が心の中と自分の声でそう唱えた時、彼女のティアラの宝石が輝いたかと思うと、三人の周りに白い光のフィールドが現れ、ブラックホールを一瞬で消し去ってしまった。
「こ、これは一体!?」
ウロボロスが驚愕の声を上げる。
そして5人はフィールドの効果で体力を回復させ、再び立ち上がった。
「さっきはよくもやってくれたなウロボロス!」
「私をここまでやり込んでくれたお礼を返してあげるわ!」
「覚悟はできているんだろうな。」
「この借りはちゃんと返してやりますよ!」
「光・斬符『ライトニングソードスラッシャー』!」
「「光・弾符『ライトニングブレッド』!」」
「光・槍符『ライトニングスピアーズスラスト』!」
シグは光を纏ったサーベルでウロボロスに斬りかかり、レミリィがカービンライフルから光の弾丸を放ち、咲魔もそれに続くように光弾を放つ。
そしてサナも光を纏った槍でウロボロスを突き刺そうと後に続いた。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ウロボロスはその攻撃をもろに食らった。少なくとも体力の半分以上ものダメージを与えることができたはずだ。
「くっ、よくもやってくれたね…….。もう容赦しないよっ…….! 電・雷符『トールサンダー』!」
ウロボロスがそう唱えると、三人の頭上に雷雲が現れ、いくつもの雷が三人に降り注いできた。
しかし、それはどれも彼らにあたることはなかった。
彼らはなんと素早い身のこなしで雷撃を全てかわしていたのだった。そして隙あらばウロボロスに様々な攻撃を繰り出していた。
「ふん、そのようなへっぽこな攻撃、今の妾たちにはちっとも当たらんぞ!」
「体力が元に戻ったどころかHP、MP、攻撃力、防御力、素早さの全能力が格段に上がっていたからな。今までの僕たちとは違うんだ!」
「ブルー様すごいですね! そんな魔法が使えたなんて驚きです!」
「今回ばかりはブルー、お前に助けられたよ。本当にありがとう。」
「いや〜、それほどでもないがな〜。妾にかかればこんなことはお茶の子さいさいじゃ。」
三人には自分の攻撃が全く当たらず、自分だけが攻撃を受けているこの不利な状況にウロボロスはかなりイライラしていた。
「おのれ小癪なあぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜(怒)。ならばこれならどうだっっっっっっ! 闇・弾符『マジックダークボール』!」
今度はウロボロスは紫色の魔力の塊であるいくつもの球を杖の先から大量に打ち出してきた。
「だからそんなもの当たらんと言っておるじゃろう! 本当に学習しないやつじゃなぁ〜♪」
「なんかここまでくるとウロボロスがただのバカに見えてくるな〜(笑)。」
「だよねー。ふふふ、おっかしー(笑)。」
「全くでございます。『お嬢様』(笑)。」
「おのれ〜〜〜〜〜、この天才科学者であるこの私、ラグナロク=ミッドガルディア=ウロボロスを愚弄するとはただでは済まさんぞ! こうなったら、闇・惑符『ラストセデュースチャーミング』!!」
魔女ウロボロスが投げキッスをすると、そこから三つのハート形のオーラが現れ、三人に向かってそれぞれ一つずつ飛んで行った。
「うぅ、なんだか心が奴に惹きつけられている感じがするのじゃ…….。」
「なんていうんだろこの感じ…….メロメロ状態?」
「そうですね…….なんだか魅了される感じがします…….。」
「うう…….、変な気分だ…….。」
ブルー、シグ、サナ、咲魔の4人はウロボロスの術にかかり、魅了されたような状態になってしまった。
「やばっ、4人とも魅了状態にされたみたいね。こうなったら、闇・療府『ディジーズリカバリー』!」
しかし、ウロボロスの術をすんでのところで避けていたレミリィの回復魔法により、4人ともすぐに正気に戻ることができた。
「お、助かったぜレミリィ! サンキュー!」
「ヘヘッ、どうもね、シグ。」
術をすぐに説かれてしまったシグは信じられないと言った顔をしていた。
「なっ、私の術にかかったくせに何故普通に回復魔法を打て…….いや普通に動けるんだ!?」
「ふふっ、純血の吸血鬼を舐めないでちょうだい。こんな術なら交わすことなんて用意よ。」
「何!? 私の術を躱したというのか!? こうなったら、射出量増大だ! 必ず仕留めてやる!」
ウロボロスがそう言い放つと、先ほどよりも魔力球の数が大幅に増えた。
「う〜ん、さすがにこうなったら攻撃の隙が無くなりますね。」
「やっぱりここは相手の魔力を封印するのが得策か。ただこうなると僕たちも魔法が使えなくなるなぁ…….。う〜ん。」
サナとシグが攻撃をかわしながらウロボロスへの攻撃手段について議論していると、球に魔力球の嵐が止んだのであった。
ふと見ると、ウロボロスはゼェハァゼェハァと疲れ切ったように息を切らしていた。
どうやらウロボロスのMPが底をついたらしい。魔力はにとっては体力とも密接に関係するため、魔力が底をつくと体力も大幅に減ってしまうのだ。
これでもうこちらが勝ったとみてもおかしくはないのだが、ただここで一つ心配事があった。
もし相手が魔力復活魔法を使える場合、また魔力を復活させられてしまうかもしれなかった。
だからここで相手の魔力を完全に封印する必要があった。
しかし、それは通常の場合、自分たちの魔法を使えなくなるという弊害もあった。
さて、どうするか…….。
5人がそれについて悩んでいると、シグがある考えを思いついた。
「そうだ、奴の魔力を吸い取ってしまえばいいんだ。」
「え? でもどうやって…….。」
「そうだぞシグ、そんなことをできる奴はここには…….。」
レミリィと咲魔は怪訝そうに尋ねるが、
「僕にはこれがある。」
シグは二人に向かって自信ありげに言った。
そうすると、他の4人は妙に納得したような面持ちでうん、と頷いた。
「無・鉤符『フックマジックハンド』!」
早速シグはウロボロスに向かって左腕のワイヤーフックを伸ばし、そのままぐるぐるとワイヤーをウロボロスの体に巻きつけた。
「ぐぐっ…….。なによこれっ…….、身動きが取れないじゃないっ…….!」
「忘れたんですか元師匠、これが僕の得意な魔法だったことを忘れましたか?」
「そ、そういえばそうだったな…….。そんなことよりこの鎖をさっさと離しなさい!」
ウロボロスはもがきながらワイヤーを外そうとするが強く巻きついたワイヤーはビクともしなかった。
「お断りします。今から貴方の魔力を吸い取って根絶やしにするんですから。」
「そ、それだけはやめろ! やめてくれっ! そうなると私はもう二度と魔法が使えなくなる!」
「そんなの僕の知ったことじゃありません。ましてや僕の可愛い妹を酷い目にあわせたんだから…….覚悟しとけよ(怒)。じゃあ、行きますよ、闇・吸符『マジカルドレイン』!」
「ぎゃあああああああああああああああああ!」
ウロボロスは魔力を吸われていくごとに元気が無くなっていき、すべての魔力を吸い終わる頃にはもうぐったりして意識がなくなっていた。
そしてシグルスが気絶したウロボロスを手放すと、
「妾をこんな目にあわせた報い、存分に受けてみよ!」
ブルーが猛スピードでウロボロスに向かって突進し、廊下の奥へと突き飛ばしてしまった。
「ふぅ、これにて一件落着ですね。」
「まだじゃ! 妾はまだ人間に戻っておらんぞ!」
「おっと、すっかり忘れていました。そういえば人間に戻る薬をブルー様に渡していませんでしたね。はい、どうぞ。」
そう言って、サナは人間に戻る薬をブルーに手渡した。
「おお、これでやっと人間に戻れるのじゃな!」
「よかったな。ブルー。」
ブルーは薬を手に取ると、すぐにその薬を飲み干した。
すると、彼女の体は光に包まれ、一瞬にして元の美しい姫の姿に戻ったのであった。
「戻ったぞ! これでこの国は妾の元に戻ってくるのじゃな!」
「ああ、おめでとう。お姫様。それじゃあ私たちはこれでお暇するよ。疲れたからもう屋敷に戻るわ。」
「はい、私も疲れました。『お嬢様』。シグ、ではまた会おう。」
ブルーが元の姿に戻ったのを見届けると、レミリィと咲魔は足元に赤い魔法陣を顕現させ、自分たちの住む屋敷へと戻って行った。
3人がすべて終わったことに喜んでいると、そこに鎧に身を包んだ大勢の兵士たちが三人の元に駆け寄ってきた。
「おお、ブルー王女、まさか生きておられたとは! 我々はてっきり死んだとばかりに…。」
兵士たちは王女を見て泣いていた。
そんな様子の兵士たちを見て、ブルーはどこか優しげな声でこう言った。
「まったくこの愚か者共め。お主らはウロボロスにまんまと騙されておったのじゃ。まぁ、これからも妾の家臣として精一杯忠義を尽くすのじゃぞ!」
『了解です! 陛下!』
兵士たちが答える。
「ところであちらで倒れている魔女はどう致しましょうか?」
「ああ、奴はとりあえず牢屋行きじゃ。処分は後で考える。」
「わ、わかりました…。」
そう言って兵士たちは廊下の向こうで倒れている魔女ウロボロスを捕らえて連行していった。
「さて、これで今度こそ一件落着じゃな!」
「うん!」
「はい!」
窓の外を見るともう朝日が昇っていた。
戦いで疲れた三人は、とりあえず今は眠ることにしたのであった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
この作品が面白いと思った方は高評価・ブックマーク登録をお願いします。
この作品がつまらないと思った方も1ptで結構ですので評価と感想にこうした方がいいというアドバイスをしてくれれば嬉しいです。
あと読みやすくするために章の区切りを改変しました。




