Chapter1 妾がこのヨルムンガンド王国のプリンセスなのじゃ!
昔々ある所に、科学と魔法が混在している世にも不思議な王国がありました。その王国はとても広い領域を支配下に治める大国で、国の頂点にはとてもワガママで意地悪な王女様が君臨しておりま((「ちょっと待たぬか! 妾のことをワガママで意地悪じゃと!? その言い方は聞き捨てならんぞ! 妾のことは『誰にも流されない可憐で麗しき姫君』と言い直すのじゃ!」
え、えぇ…。でも君、確かに美少女なのは認めるけど、現にその性格のせいで国民からの信頼ゼロなのわかってるよね? 国事だってほとんど大臣と元老院に押し付けてるし…。後、ナレーションの途中に割り込んでくるのってどうかと…。
「う、うるさいZOY! そんなことはどうでも良いのじゃ! もう良い、ここからは妾がナレーションをする。華婪、お主は引っ込んでおれ!」
はいはいわかったよ…。(全くこの世界って基本的にまともな人間が存在しないからなぁ…。本当相手するだけで疲れるなぁ…。)
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おっとすまん、自己紹介が遅れてしまったな。妾はヨルムンガンド王国第一王女、名はブリューネ・ヒルデリン・ヨルムンガンド、齢16、ちなみに皆からはブルー又はブリュンヒルデという呼び名で呼ばれておる。いや、正確には女王と言った方がよかろう。
というのも前国王であるお父様が数ヵ月前に亡くなったのでつい最近王位に就いたばかりなのじゃ。
え? ヨルムンガンド王国を知らない?
まあ無理もなかろう。お主らが住んでおる現実世界とはまた違う異世界にある国じゃからな。
ヨルムンガンド王国は妾のお爺様の代で建国された王国で、その後お父様の代になってから空想魔法理科学により急速に発展し今ではイーロ大陸のほぼ全土と暗黒大陸の北半分を支配する大国として君臨しておるのじゃ。
え? 空想魔法理科学も知らない?
空想魔法理科学____通称MSAはこの世界の魔法と現実世界の科学が組み合わさってできた新しい技術なのじゃ。
今から百年程前、城の地下にあった遺跡からこの世界と当時二十世紀だった現実世界を結ぶ時空トンネルが発見されたことをきっかけに研究が始まった比較的新しい学問なのじゃ。まぁ実用化されて技術になったのはもっと後のことじゃが。
これを使えば空艦や戦車、核ミサイルといった兵器からパソコン、スマホにタブレットやゲーム機、家電、自動車といった身近な物まで何でも生み出すことができる代物なのじゃ。
特にこれによって生み出された『魔法機械』は呪文を唱えるだけで音声認識装置が反応し、その通りに動いてくれるとても便利な代物で、今の時代は家電から兵器まで様々なものがこの『魔法機械』の技術で作られておるんじゃ。
いや〜ホント便利な時代になったもんじゃ。
これのおかげで妾の国は周辺諸国にMSAによって進んだ科学技術を伝える先進国となっており、今では王都アースガルドの中心は高層ビルが並び、車や電車や飛行機が行き交うような状態になっているのじゃ。
とはいえ、比較的現代的なのは王都だけで他の主要都市は中近世風の街並みが広がっておるわけじゃが。
まさに我が国の科学力は世界一ィィィィーーーーッって状態なのじゃ。
じゃが実はつい最近まで我が国のMSAにケチをつける国があったのじゃ。
ヨルムンガンド王国の南の大きな半島方面にあったルーム=クライエスト教皇国とかいうこの世界で信仰されておるクライエスト教の敬虔な信者の国は、お父様が国王だった頃からMSAが発展したこの国を『魔女の国』だとかほざき出した挙句、度々十字軍なるものを寄越してきたのじゃ。全く醜い嫉妬じゃ。自分たちの科学技術が中世並みだから僻んでおったのだろう。
もちろんあまりにもうざかったから、一週間くらい前にMSAの力で造られたハイテク飛行戦艦『レーヴァテイン』の圧倒的な力を見せつけた上で攻め滅ぼしてやったわい。
ちなみにお父様はあの国を煙たく感じてはいたが神に背く行いはできないとか言ってあの国は滅せずにおった。じゃが妾は別にクライエスト教には興味がないのでな。
レーヴァテインを見た教皇国の奴らは完全に戦意喪失しておったのじゃが、妾は気まぐれな性格なのでなぁ、この日は妾の機嫌が悪い日じゃったから教皇国全土を焦土にしてやったのじゃ。
全く運の悪い奴らじゃ。もし妾の機嫌がよかったらああならずには済んだのに。
これでかつてこのヨイロップ大陸で勢力を誇っておったクライエスト教会の権威も完全に地に落ち、我が国が恐れるものはほぼ無くなったというわけじゃ。
ちなみに妾の国とは別にMSAの研究をしていて、それにより軍事力と科学技術を発展させ、世界のあちこち(例えばインディール地方や暗黒大陸の南半分、そしてメリカン大陸の一部)に植民地を作っておるアース=ブリテーヌ王国という島国がこの国の北の方にある。
奴らは、我が国もいつか進出しようと目をつけておる、遥か東方の華朝帝国や和皇国にも勢力を広げようとしておるらしい。
しかし、現段階ではヨルムンガンド王国の方が軍事力も科学力も上じゃから、この国こそがイーロ大陸一の大国であることには変わりないのじゃがな。
つまりそんな大国の王女である妾はとっても偉いのじゃ。
それに、妾のこの美貌を見よ。金色のサラサラとした長い髪と紫水晶の如く輝く魅惑的で大きくくりっとした瞳。ほんのりと桃色に染まった頬と、桜の花びらのような艶かしい唇。そして出るところはきちんと出ていて引き締まったくびれも持ち合わせた見事なスタイル。妾こそこの世界で一番の美少女なのじゃ。
だから国一番の富と権力と美貌を持ったこの妾に逆らえる者は一人もおらんのじゃ。
役に立たぬ者・妾の気に食わぬ者・妾に意見する者は即刻追放または極刑なのじゃ。
現に妾のクライエスト教皇国侵略計画に反対した幾つかの教会の神父やシスター達は即刻ギロチンで処刑してやったのじゃ。
そんな中でも妾が一番気に食わぬ者が一人おる。
宰相のDr.ウロボロスじゃ。本名はラグナロク・ミッドガルディア・ウロボロス。
胡散臭い雰囲気の陰険な魔法使い(MSAの知識に長け、これを利用して戦ったり道具を発明したりする者のことじゃ)でいつもMSAの研究をしておるのじゃ。
お父様の代から宰相をしていて、基本的にお父様の補佐をしながら多くの侵略戦争を引き起こして周辺諸国を征服し、この国をイーロ大陸の大国にした張本人だそうじゃ。
ついでにMSAの研究を推し進めて学問から技術へと発展させたのも奴だそうじゃがそんなことは妾の知ったことではないわ。
実年齢は二百歳を超えてるにも関わらずMSAで調合された薬(MSAを応用すれば薬も作れるらしい)で若作りして二十代ほどの見た目にしておるのも気に食わぬし、そもそも妾は奴の雰囲気が嫌いなのじゃ。
しかも奴はお父様には忠実に従っていたくせに妾が王位に就いた途端に妾に隠れてこの国を動かそうとしているらしいのじゃ。(まあ奴とはクライエスト教皇国侵略計画に関しては珍しく意見が合ったのじゃが)
妾があいつを嫌う理由は数えれば千個ほどあるのだがそれを言うとこの話が長くなってしまうので割愛する。
そこで妾は奴を失脚させてやることにしたのじゃ。もちろんこれも妾の気まぐれというやつなのじゃ。待っておれウロボロス、お主が今の地位で居られるのもこれまでなのじゃからな。
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