82 寿命が縮んだってことでしょう
ヴァイロもサリアも寝てしまった。俺が十層で進化した時みたいなものだろう。
その間に日本人の魔物の方の問題をと、思ったのだが、
「フゴー!フガフガ!フガガッー!」
こいつウルセェ。てかなんで見えてんの?見えなくていいよ一生。こんな物。
『おそらく、マスターが【弱炎刃】を獲得した時に火属性適性が上昇したせいでしょう』
【鑑定】がそう言うけどまずなんで上昇したんだよ。
「スキルにも適性ってあるのよ。獲得しやすいスキルもあればしにくいスキルもあるの。そもそも獲得すらできないスキルもあるわ。それを簡単に獲得したから適性が増えたんじゃない?』
小難しい言い方はやめてほしい。つまりなんだ?【弱炎刃】みたいなもろ火適性必要なやつを獲得したからと。そう言うことでいいけど取り敢えず、
「こいつどうやったら見えなくなんの?」
「そんなの無理に決まってんでしょ」
マジかよ。この視界に入れるのもおこがましい、変物体を見ていろと?こういうのはソラの教育的に見るべきではないのだが。無視スキルってないかな。
「でも煩いのは確かに嫌よね。穴があるから聞こえるのよ。この穴も埋めましょうか」
「そうだな。精霊だし簡単には死なないだろ」
『いや、自重してくださいよ二人とも。流石に数時間は持つでしょうけど、もしもがあったらどうするんです』
冗談に決まってるじゃん何言ってーー
「きっと煩かったから寿命が縮んだってことでしょう。だからあいつの糸の隙間も埋めましょう」
『マスター、パルちゃんが!パルちゃんがー!』
「落ち着け【鑑定】。パルも冗談はほどほどにしといたほうがいいぞ」
「?」
パルはコテンと首を傾げている。俺らが何を言っているかわからないという様子だ。
だんだんパルも毒されてきたらしい。誰だパルをこんな風にしたやつは!?
色々あったが結局そして一応穴は塞いだ。煩く無くなったのでもし亡くなったとしても最後に役に立てたのだと前向きに考えてもらおう。
さて、問題の日本人魔物だが、ぶっちゃけどうしようもない。
同郷を殺すのは気分的によろしくないし、かと言って倒さないと転移陣は使えない。
一つだけ方法があるとすればダンジョンマスターに頼むことだけど、話すことができないし、出来たとしても奴の性格上タダで帰らせるというのは考えにくい。
一番手っ取り早いのは奴のいう面白いことをして満足させること、だろうけど何が面白いのかもわからん。
まさに八方塞がりというやつだ。
「一応聞くけど、転移陣の発動はお前の意思ですることはできないんだよな」
コクッ
ですよね。だとしたら死んだら発動するというのはおかしいし。部屋のマスターの死がスイッチになっているんだろうな。
マスターの死、ね。
プログラムにマスターが死んだと誤認させる方法は?問題の方法がわからない。
マスターを変える。変え方知らない。
う〜〜〜ん・・・無理じゃね?
俺らにダンジョンの仕組みなんてわかんないし、わかったとしても俺の頭にそんなの理解できないだろうし。
すると不意に足下をくいっと引っ張られた。見るとクイーンーー華織だった。頭を左側に向けてチラチラ視線(?)を向けてくる。
一体何がしたいんだよと見ていたのだが、今度はヴァイロとサリアを指(いや、足か)差し始めた。本当に何がしたいのかわからん。
『ちーすえば?』
ソラからの言葉。あ、そういうことなの?
「えーと、血貰っていいってこと?」
コクッ
イェスかノーでしか会話できないから不便だな。【念話】使えるようになったら普通に会話できるかな。
ちょっと思考がずれたけど、取り敢えず血を吸わせてもらう。そういえばだけど俺の持ってないスキル持ってたよね。エクストラスキルだったっけ。
ゲテモノとかの感覚なくなってきたな。
〈【悪魔吸血】並びに【超幸運】の使用を確認〉
〈スキルの獲得・・・成功しました〉
〈スキル【遺伝】の劣化スキルは存在しません。スキルを作成します〉
〈スキルの作成・・・成功しました〉
〈スキル【遺伝細胞】を獲得しました〉
〈【遺伝細胞】が【眷族】に統合されました。スキル【眷族】が擬似固有スキルから隔絶しました〉
〈【眷族】の使用を確認〉
〈眷族化に成功しました。個体名ヒノ カオリが吸血蟻蜂に変化しました〉
おう?間違えて【眷族】使っちゃった?
すると転移陣が光り始めた。どういう意味か全然わかんない。キャパ量超えちゃったかも。
「え?え?なんで転移陣発動してんの?」
パルもわかんないよね。大丈夫、俺もわかんないから。ただ、【鑑定】は分かるようで。
『成る程、流石マスターです!』
さ、流石?意味は全然わかんないけど、俺がわかっててやったと勘違いしているらしい。ここはカッコ悪いイメージがつかないように、話を合わせとこう。
「だろ?俺ってやっぱ頭いいから」
「何何?どういう事?」
質問された時なんて言えばいいか、なんて考えてなかった。
『それは私が説明しましょう』
【鑑定】ナイスです。まさか助け舟を出してくれるなんて。
『ダンジョンの十の倍数層にいるボスは進化したらダメなんです。エネルギーバランスが崩れてしまいますからね。もし、ボスが進化した場合通常は上の階層に繰り上げられますが、今回は私たちがいた。挑戦者がいる状態で改装を変えるわけにもいかず、さっさと転移陣で帰ってもらおうということになったのでしょう』
そうらしい。ま、そんなすぐに出て行く気なんてないんですけどね。
「よし、帰る当てはできたし、ヴァイロ達が起きたら出てこう」
その間に新しいスキルの試運転を・・・あ、怠い・・・
『マスター、魔力が切れました』
【鑑定】の言う通りいきなり虚脱感が襲ってきた。魔力使い切った時ってこんなのだったっけ。
ソラとの【同一化】の時ほどじゃないけど動くの怠。
「魔力使い切っちゃったのね」
「【同一化】以前はこんなにだるくなかった」
「そりゃそうでしょ、使い切ってなかったんだから」
どう言う事だよ。
「魔力を使い切るなんてなかなかできる事じゃないのよ。限界に感じていても実際にはまだその先があるの。それを使い切ってしまったのが三十層のときにナギが感じた虚脱感みたいなものよ」
へー。じゃなんで使い切ることができるように?
『一度限界まで使えば、あとは簡単に使いきれるようになるんですよ』
【鑑定】が俺の思考を読み取って答えてくれた。
『いつぞやみたいに寝てたら時期に回復しますよ。ですのでさっさとそこの二人みたいに寝ててください』
お言葉に甘えて瞼を閉じた。
おはようございます。起きて早々失敗したなと言うことがありました。アナスタシア解放するの忘れてた。
【空間把握】に映る生命反応が凄く小さくなってた。寝るのならこれで正解だったかもしれないけど・・・いや、正解だな。うん失敗じゃない。煩かったら寝れないしね。
どれくらい経ったか分からないけどヴァイロもサリアもまだ起きてないのでそこまで経ってないのかな。
ま、時間はあるようだしやろうと思っていたスキルの実験しようかな。
新しく獲得したのは【肉体改造】【眷族】【弱炎刃】か。てか戻ったのになんで【眷族】あんの?隔絶されたとか言ってたけど、それのせい?
そう言うのは後にして実験実験〜。
と言ってもやるのは【肉体改造】だけだけどね。【眷族】は三回も使ったし、【弱炎刃】は【毒刃】と同じだろうから剣ないと使えないし。
【肉体改造】自他の身体の構造を変えることができる。“構築”“着色”
【血液支配】みたいな中に別の能力がある感じなんだね。
取り敢えず腕に“構築”を使ってみる。そして【血液支配】“固化”の時みたいに形を想像する。例えば・・・巨大アントビーが使ってたみたいな刃とか。
腕が刃の形状になった。思っていた通りの形になったのでそこまで想像力がなくてもできるのかな。
と思ったが、右手の指先に夕の指人形を作ろうとしたら、すごい集中力が必要だった。刃は形状がシンプルだったからできたみたいだ。
次に“着色”を試してみる。出来た刃は肌色で、違和感があったのだ。
テレビとかでみる色の刃にしたらしっくりきた。
そして最後に容姿の変換。これ変装みたいに使えるんじゃない?と思ってたので試しに。
今度は自分でどうなったか確認できないのでソラやパルにも協力してもらう。
試しに夕の顔を造形してみる。
「どう?」
「おもしろ〜い」
「逆に聞くけど本当に人間よね?それ」
そんなに酷い?
次にヴァイロでも真似てみる。近くに顔があったので見ながらだと大分やりやすかった。
「ゔぁいろ!」
「凄い。そっくりよ。さっきなんであんな化け物だったのか不思議なくらい」
そんなに酷かったんですね・・・
最後に体も真似てみる。腕や胴は確認しながらできるので顔を作るよりも早くやることができた。
「ん?んぅーん・・・」
サリアが起きたらしい。小さく背伸びをしている。
「あれ、ヴァイロ?ん?・・・なんで二人!?」
本物と俺を指で差しながら驚いている。あぅあぅ言っているのが面白い。
「おはようございますサリア様」
「え?ユウナギ?」
ヴァイロの真似したつもりなのにあっさりバレてしまった。ちょっと肩透かしくらった気分。
「なんで分かったんだよ」
「やっぱりユウナギだったのね。どうしたのその顔?」
質問したのは俺の方なのに・・・因みに後から聞いたことだがなんで分かったかと言うと声らしい。今度喉の形を変える練習をしよう。
「そう・・・チゼルもオルクスも」
サリアが気絶してから起こったことを話した。
最初に口に出るのは他の奴らのことなんだな。この世界は命が軽いものだと思っていたんだけど案外そうでもないのかもしれない。
「最初に口をつくのがそれって。吸血鬼になったんだぞ、それに対してはノーコメントかよ」
「そんなの今更でしょ。今ここで騒いだって人に戻れるわけじゃないし、そうしなかったら死んでたんでしょ、私」
そうなんだけど、あっさり納得されるのは面白くないんだよ。
「不満そうね」
「そう思うならもうちょっと面白い反応を返してくれよ」
そう小言を挟む間にも声帯を変える練習をする。
「それにしても面白いスキルね。私にも受け継がれてないかしら」
「そうだ、なんかスキル増えてないのか?」
すっかり忘れていたが吸血鬼になったんだしスキルが進化したり、固有が足されていたりしているはずだ。始祖としてはどんな風になるかは知っておきたかった。
「そうね。まずーーー」
増えていたのは以上三つ
【吸血】【血液凝固】【蝙蝠化】【隠影】。
最後のスキルだけ固有スキルじゃないらしく、能力は“始祖”の影に潜り込むことができるというものらしい。
始祖だけなのかと落胆したのは言うまでもない。
華織も【隠影】を獲得したようなのでここから出るときはこれで隠れてもらおう。
そして一つだけ進化もしたらしい。変化でも技量はたまるということかな。
よく考えたら【空間把握】で他人の喉を確認しながらやれば上手く声真似できるようになるんじゃ・・・。と思ったのはヴァイロが起きてからだった。
そして約何日かぶりに外の世界に出ることになった。
・・・あ、またアナスタシア忘れてた。




