表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/165

81 どうしてもしたいならオカマバーに

〜ヴァイロ目線〜


奥歯に仕込んでいたポーションの箱を噛み潰すことで漸く話すことができるようになった。少量なので少ししか回復してないが、それでも話すくらいなら問題ない。


「おいおい、大丈夫なのか?そこの精霊曰く死にそうなんだろ。口開かないで安静にしてた方が良いんじゃないか?」


言葉こそ心配している風だが、ユウナギは面白そうに笑っている。何が面白いのかわからないがアナスタシアの時みたいに適当にあしらわれるということはないようだ。


「ふ、ん。どうせ、何も、喋らな・・・くても、死ぬ・・・だろ」


ユウナギは俺の言葉を聞いて更に笑みを深めた。人が苦しむのを見て喜ぶ趣味でもあるのかと思ったがそれは違うのだと次の行動で示された。


「苦しそうだな。聞き取りにくいし、ポーションでも分けてやんよ」


そう言ってユウナギはどこから取り出したのかポーションの瓶を口の中に突っ込んできた。いきなりの事で少しむせて、全て飲むことはできなかったがいくらか楽になった。


「感謝はするが、せめて自分で飲ませてくれ」

「ひどい言い草だな。体を動かすのも苦しそうだったから飲ませてあげようと思っただけなのに。悲しいなぁ、しくしく」


最後の泣き真似も笑いながら言っている。なんとなくこいつがどんなやつか分かった。睨んで見てもその顔は変わることなく、むしろ更にニヤニヤしている。


「で?何を話したかったのかな?」

「その前に三つほど質問させろ」


ユウナギの表情が変わった。一瞬だけだったが、動揺したようだ。


「あんま時間ないのにそんなことしてて良いのか?」


やはり、か。あのポーションの香りは間違いなく上級回復薬(ハイポーション)だった。なのにそれを飲んでもいくらか楽になっただけ。おそらく全て飲み干せたとしても死ぬことは免れないのだろう。


「さっきまで寝てて、起きたら何が起こっているのか全然わからないんだ。本題の前に知らなきゃいけたいことがあるだろ」


ーー例えばお前が味方かどうかとか。


何が言いたいのか分かったのか、聞いて良いようだったので質問する。


第一にアントビーはどうなったのか。


歪な形で転がっている死体を見ればわかるが、一応聞いて見た。やはりユウナギが倒したらしい。そしてボスであるアントビーは保留だそうだ。


意味がわからないが次の質問をする。


第二に、他の仲間はどうなったのか。


これも予想通りで生きているのは俺とサリア様だけ。遺体のないチゼルとアルは食われたのだと。


第三に、これが一番重要なことだ。


「お前は、吸血鬼なのか?」


紅の瞳、鋭い犬歯。それは吸血鬼の特徴だ。ユウナギは「そうだよ」と軽い調子で答えたが、俺たちにとっては大問題だ。


今、人族と魔王の種である吸血鬼は戦争状態と言って良いくらい対立している。勿論中には共存派も存在するが大体は魔王派だ。


つまり俺たちは命を、対立している側に握られているという事なのだ。


「さて、もういいかな。で、本題は何?」


だというのになぜユウナギはとどめを刺さない?所詮死に体と甘く見ているのか、それとも交渉の余地ありか。


どちらにしろ時間がないし、俺には後者に賭ける選択しかない。


「頼みがある」

「ヤ☆ダ」


清々しいくらいの即答が返ってきた。アナスタシアとの会話を聞く限りそうだとは思ったが話を聞くこともないとは。





〜緋月 凪目線〜


「待て、俺はアナスタシアのように頼むだけで終わらせる気は無い」


ヴァイロがそう言うが、それが魅力的な提案だったとしても俺にはどうすることもできないんだよね。だって治癒魔法使えないし。


頼みが何かとか聞いてないけどそれくらいはわかる。ヴァイロ達、せめてサリアの命を助けること。


上級回復薬(ハイポーション)でも治せないのを俺が治せるわけないし。でも一応話くらいは聞いてもいいよね。


「へぇ?どういう意味?」

「交換条件だ。俺の血をくれてやる」


いいねいいね。欲しいよヴァイロの血。でも残念なことに対価を払えれないんだよな。


「俺治癒魔法使えないから無理」


心底悔しそうな表情になってる。頼み事はやっぱりそれだったのか。


今思ったんだけど別に許可もらう必要なくない?今ならガブっていけるでしょ。


やんないけどね。


あー治すことができたら直ぐにやってやるのに〜。


『治せますよ?』


【鑑定】(かんていさん)それマジ?ヤバイよ、あんた優秀だよマジで。で、どうやんの?


『マスターは吸血鬼になったので新しいスキルが追加されているはずです。それを使えばなんとかなります』


新しいスキルで回復系って事は【高速回復】かな?これって自分だけじゃないんだ。スゲー。


『【眷族】というスキルです』


全然違った。


『それ仲間にするスキルじゃないの?』


【眷族】 対象を自分と同じ種にすることができる。対象の血を直接飲むことによって発動可能。


というスキル。こんなんでどうやって助けるのよさ。


『吸血鬼になれば固有スキルを獲得できます。その中に【高速回復】があるはずです』


あ、そういう事。じゃ、実験してみようかな。


「一つ方法がある」

「本当か!?」


ヴァイロが期待の眼差しを向けてくる。そして同時にパルが「煩い!」と叫び出す。どうやらアナスタシアが元気になってしまったようだ。


するとヴァイロの手が何かをつかむように見えた。


「あ、ありがとう・・・」


パルがお礼を言ったので、アナスタシアを抑えてくれたのだろう。好感度が少し上がった。


「あんがと」

「今の話をなかったことにされたくないからな」


打算の上でそうやってたのね。


「話を元に戻すけど、俺にはお前らを助ける 力がある。けど、元に戻す力じゃない」

「・・・どういうことだ?」


うん、まぁそういう反応するよね普通。


「人を、辞めてまで生きる覚悟があるか?」

「ッ!・・・」


それだけで理解できたのか。凄いな。


あと、手がめっちゃ震えてますよ。怖いです。アナスタシアが暴れてるだけだろうけど。


「で、どうなんだ?」

「・・・」


そんな簡単に答えなんて出ないよね。でも、悪いけどこっちも時間がないんだよ。


『マスター、もう少しで魔力が尽きます』


魔力が尽きれば吸血鬼ではなくなって固有スキルがなくなる。そうすれば【高速回復】は勿論【眷族】も消えて無くなってしまう。


「人族のままがいいならーー」

「いや、やる」


短い時間しかなかったのに決めれるなんて凄いな。


「サリア様には生きていて欲しいし、もし吸血鬼が嫌でもこのまま死ぬんだったらその時に自殺でもなんでもすればいい」


割り切った感じですね。


「悪いけど【契約】させてもらうぞ」


なにそれ?


『スキルの一つです。お互いに決めたことを魂に刻みつけ、絶対的なルールにする、みたいな能力です』


うん。意味わからん。


『やってもいいと思いますよ。あちらは“血を与える”マスターは“吸血鬼にさせる”。デメリットもないですし、多分【契約】も獲得できます』


なんで【契約】も獲得できるのだろうと思ったが、そういえばソラやパルとしたのも一応契約だし、技量がたまってもおかしくないかと思い直した。


「じゃ、いいよ」


【契約】の発動は小難しい説明の割に簡単なもので、【契約】の使用宣言、契約内容を言う、お互いの合意、そして【契約】の発動と言った流れのようだ。


これだけで発動し、内容を違えれば激痛が走るとか、もう呪いじゃんって感じだよね。


「サリアとヴァイロの血を貰う」

「サリアには手を出さないと誓わせる」


あれ?


「不満だったら言い直すが?」

「吸血鬼にしなくてもいいのか?」

「血を飲ませる時点で吸血鬼になるだろ」

「・・・その通りだな」


実際は発動の合否ができるのだけど。


「内容はそれでいいよ。今回はしてやられた、そう言うことにしといてあげる」

「そうか、【契約】」


〈技量が一定に達しました。スキル【契約】を獲得しました〉


・・・何ともないんだけど。え?これで終わり?


「じゃあ、早速やってもらおうか」


そう言ってヴァイロは襟元をはだけさせ始めた。


「ヴァイロ、俺にはそう言う趣味はないんだ。どうしてもしたいならオカマバーに」

「勘違いも甚だしいぞ!?」


冗談に決まってるのに。だからお願いします、この頭痛を止めてください。


「痛い痛い痛い!吸う!吸うから!痛かったら吸えないから!」

「「自業自得だろ(でしょ)」」


お前ら本当はお互い見えてるんだろう?そうなんだろ?


ヴァイロの血を吸うと少し痛みが薄れた。


〈【悪魔吸血】並びに【超幸運】の使用を確認〉

〈スキルの獲得・・・成功しました〉

〈スキル【炎刃】の劣化スキル【弱炎刃】を獲得しました〉

〈火属性適性が上昇しました〉

〈【眷族】の使用を確認〉

〈眷族化に成功しました。個体名ヴァイロ・ビラウスが吸血鬼(薄血種)に変化しました〉

〈条件を満たしました。称号【始祖】を獲得しました〉


ログ多!そしてうるさい声が聞こえてきた。


「おい!俺はサリアを吸血鬼にするなんて反対だぞ!」


ヤベェ、幻聴が聞こえてきた。もうそろそろで魔力が尽きて倒れるのかも。


「聞いてんのかテメェ!?」


パルの気持ちがようやくわかった。コイツウルサイ。


『うるさ〜い』

「テメェ、ソラが煩いっつってんだろーが!」


取り敢えず殴って黙らせた。一発だけじゃ、黙らなかったのでその後【糸】でぐるぐる巻きにした。


〈技量が上昇しました。スキル【糸】が【変則糸】に進化しました〉


それでも煩かったので、“固化”で息する穴だけ作って閉じ込めた。


そしてその後ちゃんとサリアも吸血鬼にした。


〈【悪魔吸血】並びに【超幸運】の使用を確認〉

〈スキルの獲得・・・失敗しました〉

〈【眷族】の使用を確認〉

〈眷族化に成功しました。個体名サリア・ネリエールが吸血鬼(薄血種)に変化しました〉

一人称にも無理が出てきた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ