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78 なんだそれ

 どうも作者です。すっかりソラのことを忘れていた作者です。ソラのことが好きな皆様すみません。無理やり話を繋げた感じになっておりますが、しょうがないなと大目に見ていただけると嬉しいです。

 パルは【鑑定】(かんていさん)と話し始めているのでソラに声をかける。


 「ソラ、もういいよ」

 『むー、ほんと?』

 「ああ。もうみんな絶賛気絶中だから」


 久しぶりにソラの声を聴いたような気がする。というのももしかしたらサリアかサリアの精霊――アナスタシアが【念話】に割り込むことができたらソラの存在がばれてしまうと思ったので、ソラにも【念話】をしないように言ったのだ。


 ちょっと機嫌が悪そうなのはソラにそう言ったにもかかわらず、【鑑定】(かんていさん)やパルと普通に【念話】で話していたからだろう。ついでに言えばサリアにもアナスタシアにもそんな能力がなかったのでそれなのに話す事を止められたことにも原因はあるのかもしれない。


 「俺の楽しみが終わったらうまいもんでも買いにいくか」

 『うん!いくー』


 一瞬で機嫌が直ってしまった。食い物は偉大である。


 「・・・」

 『? どうしたの?』

 「いや、なんか・・・怖くないか?」

 『?』


 俺が言っているのは言わずもがな吸血鬼化の事である。自分で言うのもなんだが少しは思うところがあると思っていたのだが、ソラのいつも通りの対応に疑問が生じたのだ。


 『なにいってるのかわかんないけど、なぎはなぎでしょ?』


 ソラの言葉で少し救われたような気分になった。


 「ありがとう。じゃ、頑張ろうか」

 『うん!』


 取り敢えず親指を噛んで自傷する。その血で刀を作成し【鱗片】で強化する。


 〈技量が一定に達しました。スキル【鱗片】が【鱗】に進化しました〉


刀身の鱗が更に生え、赤色の鱗で覆われる。少しの光しか射していないが鱗で反射して刀自体が輝いているかのように見える。


凄い良いところでの進化、ご都合主義いいですよね。


ここになけなしの【弱毒鱗】も加える。


 いつもよりも力強い踏み込み。半血鬼と吸血鬼じゃ、身体能力が全然違うようだ。


 アントビーの計六本の刃が迫りくる。それを今作った刀で捌いていくが、手数が違うので多少傷を負っていく。頬に、刀を握る腕に、足に、わき腹に。【剣術】の補正が得られないので全て我流なのだがやはり隙が多い。


 このままいっても体力を削られるだけだから一旦仕切り直した方がいいかな。


 【鱗】を使った手足や剣で振るわれる刃をはじきながらバックステップで後ろに下がる。勿論タダでは逃がさんとばかりに追ってくるが“固化”で足元の血(多分アルの)を固めて四本ある足の一本を固定する。すぐ破壊されるだろうが下がる時間を稼ぎたかっただけなので問題ない。狙い通り血の枷が壊されるところには十分な間合いを取る事ができた。


 「切り傷がいっぱいできちまったじゃねぇか。これは、お返しだっ!」


 気合を入れるように吠え、刀を横一文字に振り切る。距離の関係から当たる事はないが、刀がアントビーの前を通る時に【放射】を使えば・・・


 シュバババババッ


 鱗が飛び散り、散弾となって飛来する。マシンガンのように飛び散るそれでもダメージらしいものを与えられていない。せいぜい外殻が傷つくくらい。そんなことは分かりきっているので更にもう一手加えるべく、振り切った勢いを利用してさらに回転を加える。


 半回転くらいしたところで“固化”。レティさんやオルクス、チゼルたちの血が刀身に集まる。極太ともいうべき大きさ、ここからアントビーまで余裕で届くくらいの長さを兼ね備えた刀が出来上がった。


 「うらぁぁぁ!」


 普通は持つ事も出来ないその巨刀を回転の勢いと遠心力でもってアントビーに叩きつける。


 〈技量が一定に達しました。スキル【怪力】を獲得しました〉


 鱗の散弾によって視界が制限されていたアントビーでも流石に気が付いたのか避けようと、四本の刃を羽に戻す。が、飛ぶ前に巨刀がその体を捕らえた。気づくのが少しばかし遅かったな。


 ドゴォンと刀が鳴らさない様な音が鳴り、外殻が飛び散る。巨刀は見事外殻を粉砕した。


 だが安心ばかりしていられない。【再生】で直に治るし、身体を変えてくるかもしれない。この機を逃さず巨刀を分解し、刀を数十本作り“操作”でむき出しになっている肉を狙う。


 刀が刺さるのが早いか、身体を変えて守るのが早いか、その勝負になるかのように見えた。


 瞬間右脇腹に襲い来る激痛、紅い刀身が霧散し、視界が急速に変わったかのようにアントビーが右に流れる。今度はドンッという音と共に逆側に衝撃。一泊遅れて自分が吹き飛ばされたのだと理解した。


 脇腹に視線だけ向けるとドロリとした液体が溢れているのが目に入る。えぐれたような傷口、口内に滲む香ばしい味で内臓もいくつかやられていることが分かる。今はこんなので済んでいるけど半血鬼だったらどうなっていたことか。こんなので済んでいるのは吸血になったおかげで頑丈になっているからだろう。


 アントビーの方を見ると腹が細長く進化していた。左側から迂回して脇腹に針を打ち込んだという事だろうか。たとえ【迷彩】を使っていたとしても【空間把握】で分かるはずだが・・・そんなことにも気づけないほど攻めることで頭がいっぱいになっていたのか。


 ゆっくりとアントビーが近づいてくる。腹は元通りになり、刃が鎌の様な内刃に変わった。


 「はは・・・尚更死神の鎌みたいになったな」


 口に出るのは乾いた笑みとそんな皮肉にもならないような呟き。


 さらに近づき、もう目と鼻の距離になった。アントビーが口を開ける。怒りさんのときのように丸呑みにする気か元々大きな口が更に大きくなる。鎌使わんのかいっ!


 先程まで感じていた感情が抜けた。


 「なんだそれ」


 口の中に吸い込まれるように入ったのは血の槍。


 「ギィィ!?」


 アントビーが悲鳴のような鳴き声を上げるがそんなのどうだっていい。


 アドレナリンが吸い込まれたかのように笑みが抜け落ちる。


 「ああ、お前はまだ分かってなかったんだな」


 脇腹から零れ落ちた血だまりが固まり、足場を固定する。


 「残念だ」


 抜け出そうと羽を刃に変え、計六本の腕を突き立てようとするが、同時に現れた血の鎖が絡みつき地面に伏せられる。地に着いた瞬間から更に血が覆いかぶさり、破壊されないように鱗が茂る。


 「いいか?よく聞けよ。今お前と俺は対等の立場に立ってるんだ」


 傷を感じさせない様な身軽さを見せてアントビーに飛び乗る。というよりもう怪我は治っている。吸血鬼の生命力の根源にあるスキル。これのおかげでアントビーが近くにくるころにはもう治っていた。


 「俺がお前の捕食対象であるように、お前は俺の獲物でもあるんだよ」


 絶えず背から針が出てくるが【鱗】でダメージ軽減、【高速再生】で負った傷を消していく。


 「なのになんだその舐め腐った戦術は?()えちまったじゃねぇかよっ!」


 外殻と外殻の隙間部分に思いっきり刀を刺す。接続部なので外殻より硬くなく、【怪力】も使ったおかげかズシュと音を立てて刀身が埋まる。またも悲鳴のような鳴き声が響くが無視して話を続ける。


 「あそこまでいったら四肢の切断、詠唱封じのために舌をぶち抜くくらいするのは当たり前だろうが!」


 実際俺はそう来るだろうと思って鎌を振り上げるその一瞬を待っていた。確かに油断させようと辛そうには見せかけたけど鎌を使わないどころか確実性を無視して食らいに来るとは思わなかった。


 「なのになんだその(てい)たらく?舐めてんのか!?」


 八つ当たり気味にさらに深く突き立てるが先のような肉を断つ生々しい音もたてなくなった。体の構造を変えて避けたのだろう。


 「分かったらさっさと吹き飛べ」


 刀身を引き抜き、飛び降りると同時に旋回、血を“液化”させ【怪力】【鱗】のせの回し蹴りを放ち、文字通り吹き飛ばす。


 地味に体力を削られていたのか着地を決めもせずに三回地を跳ねたのち少し引きずって止まる。


 〈技量が一定に達しました。スキル【蹴術】を獲得しました〉

 〈スキル【挙術】と【蹴術】が統合。スキル【格闘術】に変化しました〉


 ビクンッと痙攣し、アントビーが立ち上がる。刺された接続部も貫かれた口内も徐々に治り始めている。完全に治るのも時間の問題だろう。だがそれをあえて待つ。


 先程よりもなお強烈な殺意のこもった複眼で俺を見つめる。


 「良いねぇその殺気。そうこなくっちゃあ面白くねぇよな。回復終わってでいいからかかって来いよ虫ケラ。本気でやんなきゃ楽しくねーだろ?」


 【威圧】を放ち血の滴る刃身を舐めとった。


 〈【悪魔吸血】並びに【超幸運】の使用を確認〉

 〈スキルの獲得・・・成功しました〉

 〈オリジナルスキル【身体変化】の劣化スキルは存在しませんでした。スキルを製作します〉

 〈スキル作成に成功しました。スキル【肉体変化】を獲得しました〉

 〈【蝙蝠化】【身体拡張:口】【倣体】【部分巨躯】【成形】【肉体変化】が統合。オリジナルスキル【肉体改造】を獲得しました〉


 【部分巨躯】、作中に出していませんでしたが【巨大化】の劣化スキルです。三十二~三十九層をさまよっている時にワーカーから獲得したスキルしました。書いていなかったスキルを急に出して申し訳ありません。

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