77 俺がここにいるのだと俺が証明できる
変なテンションで執筆してたらなんか変なの書いていたのでタイトルにしました。本編読んでも何が言いたいのか分かりません。意味が分かった方は作者よりもこの小説の事を理解できています。
突然だが、「父親の血を色濃く受け継いでいる」とか「〇〇人の血が流れている」とか聞いたことはないだろうか。
人の遺伝子を血で例えた言葉なのだろう。血が濃いほど親の遺伝子が多く、親に似てくる。逆に薄ければ遺伝子が少なく、親に似ない。
“濃化”と“薄化”というのはつまりはそう言う事だ。自分の血の中の遺伝子を多くしたり薄くしたりして一時的に種族を変える能力。二つ以上の種族を持つものが使う事ができるのだ。前に使った時発動しなかったのは、体外に出ている血に対して使ったから。
三十層のときのように自分の身体が書き換えられる感覚。更に血が沸騰するかのように熱くなる。視界がブラックアウトし、聴覚や嗅覚、触覚までも無くなっていく。この分だと味覚も無くなっているだろうが今は試せないな。
「うがぁぁぁぁぁ!!」
心臓に定期的に来る衝撃。メトロノームのように規則正しく響くそれは、物理的な痛みにも感じるほどの苦しさを生む。
そしてひときわ大きな波が来ると、水風呂に入ったかのように体が冷め、衝撃はだんだん小さくなっていきやがて消えた。
〈“濃化”並びに“薄化”が完了。個体名緋月凪が半血鬼から吸血鬼に変化しました〉
またも前と同じように響く変化完了のお知らせ。
殺気を向けるアントビーと目が合う、アントビーの羽の音が聞こえる、血の香ばしい匂いが鼻いっぱいに広がる、空気と地面と触れ合う感触が懐かしい。
〈技量が一定に達しました。スキル【聴覚強化】【嗅覚強化】【触覚強化】を獲得しました〉
〈【視覚強化】【聴覚強化】【嗅覚強化】【味覚強化】【触覚強化】が統合。スキル【五感強化】に変化しました〉
感じる感覚が一段階大きくなる。俺がここにいるのだと俺が証明できる。目の前にいるのは半血鬼の俺が勝てない相手。オルクスもチゼルも怒りさんもサリアもヴァイロも、こいつに勝てなかった。
その相手を見て恐怖を思わず、不安を感じず、はたまた勝機があると自分を鼓舞もしない。俺が思うのは・・・
「面白れぇじゃねぇーか」
そう口を三日月形に裂き、突入する。
~パル目線~
“濃化”“薄化”。そう言った瞬間にナギの雰囲気が変わった。楽しい事をして行こうという感じから、殺人鬼のソレへ。殺人鬼なんてここで生まれた私は見たことないのだけど、時々来る微精霊が教えてくれる知識では、こんな感じだ。
血を好み、悲鳴を聞いて笑い、命を奪って喜色を示す。
いや、やっぱり違うかな。血を好むのは吸血鬼なんだし当然だけど、それ以外は当てはまっていない。ただそうしたら様になるだろうなという顔。
多分【鑑定】はその理由を知っている。さっき意味の分からないことを話していたけどその事と関係があるだろう。
「ナギは・・・どうしたの?」
『パルちゃんは今のマスターを見て嫌いになったりしましたか?』
質問を質問で返すのは止めて欲しい。その質問の答えなら決まっているから良いけど。
「そんな訳ないでしょう」
たったのこれだけで嫌いになるはずがない。ナギといるのは楽しいし、なんだかんだ言って大事にしてくれてたりする。ちょっと言いにくいけど、私のことで精霊王にも喧嘩を挑むようなことを言ったときはその・・・うれし、かったし?それに
「ナギ、今すごく楽しそうなんだもん。少し前からだけどどこか無理してるような感じだったし」
『そう、そうなんですよ!』
私が感じたことを言うと【鑑定】は一度頷いてから(なんとなくそう感じた)さらに質問をかけてくる。
『パルちゃんは吸血鬼についてどんな風に理解していますか?』
「血が好物。銀と太陽に弱い、あとは・・・」
取り敢えず私が知り得る限りの事を話すと【鑑定】はやっと本題に入ってくれるらしく『吸血鬼は・・・』と続ける。
『簡単に言えば戦闘狂です』
「・・・」
『あれ、反応が薄すぎませんか?』
「必ずしも戦闘狂になるというわけではないでしょう。ナギだってハーフだったけど吸血鬼なのに今までそんな素振り――――」
『パルちゃんだってさっき言ってたじゃないですか。無理してるようだったって』
私の話を遮って言った【鑑定】の言葉に私は何も言えなくなった。確かに、そう思ってしまった。
『まぁそれだったら途中からとも言っていましたけどね。パルちゃんはマスターの事、マスターと会ってからのことしか分かりませんもんね。私が教えてあげます』
『マスターには内緒ですよ』と言って【鑑定】はナギのこれまでの事を話してくれた。
勇者召喚、半吸血鬼、幽閉、魔王やソラとの出会い。そしてこのダンジョンへ。
『っとこんなところですね。もう少し詳しく聞きたいならマスターに聞いてください。その方が分かりやすいですよ。何分私その時ただの意思なき【鑑定】だったもんで』
逆に意志なかったのに何で覚えているのか聞きたかったけど脱線しそうなのでやめた。
「ナギが半吸血鬼になった理由とかは分かったけどそれが何?どんな関係があるのよ」
『人間から種族自体が変わったんですよ。今まで培ってきた価値観がすぐに変わるわけじゃないですか。徐々に半吸血鬼としての考え方に変わっていくんですよ』
「でも―――」
人間としての価値観も混ざって狂わないかもしれない。かもの時点でそれは希望でしかなく、目の前の光景がその考えを真っ向から否定してくる。続きが言えないでいる私に考えている事は分かっているという風に【鑑定】がさらに続ける。
『人族でもあるので必ずしもそうなるとは言えないでしょう。でもマスターは一度進化し、より一層吸血鬼に近づきました。進化したのがまだ半吸血鬼として慣れていない時で、今は慣れ始めている時に本当の意味での吸血鬼化。人族のときとのギャップが強くまだ未熟な年齢では人族の価値観を少し残すくらいが精一杯だったのでしょう』
【鑑定】は『体が変わって四日も置かずに生命をたくさん奪っていたのもその要因かもしれませんね』と最後に締めくくった。
一気にたくさんの情報を聞いたので覚えきれていないところもあるだろうけど、それはまた聞けばいい。今は分かる情報だけをまとめる。私のその行動を違う意味でとらえたのか【鑑定】がまた口を開く。
『もう一度聞かせてください。パルちゃんは今のマスターを見て嫌いになったりしましたか?』
声はいつものバカみたいな能天気さは失せ、もの寂しさを感じさせる。同じ質問なのにさっきよりも重く感じる。
「さっきも言ったでしょう。そんなことありえない。それに今の話を聞いて貴方とナギの話していたことの意味が分かったわ。つまりナギはそんなちっぽけな事で私が離れるとか思ったって事ね」
少なくともこれは私にとって確定事項なので疑問刑にはしない。
「取り敢えず、ナギが戻ってきたら開口一番に『バッカじゃないの?』って言ってやるわ」
『ふふっ。喜んでくれると思いますよ』
罵倒のつもりだったんだけど・・・。これで本当に喜んだらナギは変態ということになるわね。




