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75 鳴る腕無いから

 いつも通りの扉、いつも通りの階段。


 「いつも通りなのにそこがこの不安感を増大させる。一体なぜだろうか」

 「今まで巣の中にいたから、扉が無い事に慣れちゃったんじゃない?」


 俺の不安感は気のせいだといわんばかりにサリアが否定するが、顔色は悪い。自分に言い聞かせるつもりでもあったのだろう。見るとオルクスたちも険しい顔をしている。唯一変わらないのは怒りさんたちだけだ。


 「大体この先の展開は読めてるからな。どう考えてもあれだけのワーカーじゃこの巣は作れないだろうし、十中八九この先にいるんだろうな~。数百匹のアントビーが・・・」


 チゼルが俺達の不安感の種を言う。一団体ぐらいならこのメンバーなら討伐できる自信はあるが、数百匹とか大隊レベルの規模のモンスターを倒せとか。


 「でっでも、魔物はボス部屋の出入りは出来ないはずだから・・・」

 「床壊して出るなり裏道はあるから一概にそうとは言えないけどな」


 レティさんが希望的観測を口にするが、オルクスがそれを否定。オルクスは俺達の心を折りに行っているのだろうか。


 「今どうこう言ってても仕方ねぇだろ。言って見ねぇと分かんねえんだし。さっさと行くぞ!」


 怒りさんの号令で皆が皆歩を進め、同時に気持ちも入れ替える。


 そしてついた四十層の扉。ここの中に入ったらもう後戻りはできない。どちらかが尽きるまで完全に出口がふさがる。


 「じゃあ、行くぞ」


 さすがの怒りさんもここまで来ると緊張でもしてくるのか、一気に慎重になる。バンッと勢い良く扉が開けられ、中が明らかになる。見えたのは視界一面を覆う複眼の目、目、目、目!意識が刈り取られそうになるほどの光景というのはまさにこの事だろう。


 アントビーで作られているといわれたら信じてしまいそうになるほど床、壁、天井に至る全ての所に群がるアントビー。数百数千というほどの複眼が同時に向けられ、カサカサと動く音が恐怖心を掻き立てる。


 虫嫌いでなくとも失神するだろう光景。その奥には恐らくボスであろう、一回り大きなアントビーが白い楕円形のものにくっついている。


 思わず上がる悲鳴。その中でも詠唱を唱えようとしている者が何人かいるのは流石というべきだろう。


 先に詠唱が完了したのはオルクスパーティーもう一人の魔法使い、ティラ。


 「――【光壁】」


 光の半球の結界が俺らを覆う。防壁系の光属性魔法らしい。何回かのダメージを与えれば消えるらしいので稼げる時間も数秒と言ったところか。それだけあればこちらの最高火力の魔法発動の時間は稼げる。


 「――【焔星礫】」


 ある一点に炎の塊が出現する。その塊は数秒膨張と圧縮を繰り返し、やがて破裂した。破裂と同時に塊から炎を纏った散弾が飛来する。こちらには飛んでこないが、他の場所の被害は凄い事になっているだろう。


 当然こちら側には来ていないので近くにいたアントビーたちは毒針を飛ばしたりしてくるが、各々が対処することで何とか凌ぐ。【光壁】はひび割れ砕け散ってしまったが、先の魔法で戦線はこちらに有利となった。


 それも物量に任せればすぐに逆転されたが。


 「きりがねぇな」

 「サリア、あの魔法もう一度頼めるか!?」

 「出来るけど後二回分くらいしか魔力がないかも」

 「なら、温存するべきか・・・っ!」


 サリアはあれから【火弾】で牽制している。魔力調整をして最低限の魔力しか使っていないが、先の魔法はやはり使用魔力が多いのだろう。


 俺はというと【毒弾】や屍を使って何とか身を守りつつ戦えている。屍のドリルじゃ面制圧に向いてなさそうだったので、剣に形を変えて。主に屍は壁など届かないようなところにいるアントビーを狙っている。両腕のリーチの長さを生かして、右に左にとぶつけて寄せ付けないような戦い方で。


 何体も倒しても一向に数が減った気がしないので怒りさんの悪態にも頷ける。


 「だぁー面倒くせぇ!アル、ベノ!決めに行くぞ!」


 怒りさんがついに動く。アントビーの群れの中に迷わず足を突っ込み、そのまま駆け抜ける。呼ばれたアルと筋肉だるまが怒りさんに追随するように離れていく。


 「あぁもう!どうしようって言うのよ!?」

 「あの大本(おおもと)をぶっ倒してくる!」

 「ちょ、いつもいつも勝手に動いて・・・ハァ、さっさと行きなさい!サポートは任せて――【翔旋】」


 なんだかんだ言って補助しようとするレティさんはツンデレなのかな?仲良さそうで何より。


 風が吹く。それと同時に怒りさんたちの動きが早くなったような気がする。付与じゃなさそうだし、おそらく空気抵抗を減らす魔法だったのだろう。ここからは結構離れているが、数えれるくらいの時間でボスの目の前にやって来る。


 その時パキパキッという音が響いた。その音は怒号響き渡る戦場においても鮮明に聞こえた。


 「くらいやがれぇぇぇ!!」


 怒りさんが大剣を肩に担ぎ、一際大きく飛び上がり袈裟斬りに振り下ろそうとする。


 またパキパキッという音。だが今回はその音の発信源がどこなのかしっかりと聞き取れた。


 「避けろ!ハーゼ!!」


 オルクスも分かったのか、直ぐに怒りさんに指示を飛ばす。だが身動きの取れない空中において避けることなどできるはずなく、それに貫かれた。ザシュッという音と共に鮮血が舞う。レティさんの「ハーゼ!?」という叫び声が響き渡り、アルと筋肉だるまが動きを止める。


 ボスの背後の白い物体、そこから刃が現れ、怒りさんに突き刺さったのだ。【空間把握】を見ると中に生きものがいるのが分かる。どうやらあの白い物体は卵で、先の音は卵にひびが入った音のようだ。


 誰もが硬直する中、その刃が横にスライドされ、まるでごみでも捨てるように慣性の法則でもって怒りさんを吹き飛ばす。


 「ハーゼッ!!」

 「よくもハーゼを!!」


 またもレティが悲鳴を上げ、アルと筋肉だるまが怒りでもって突っ込む。


 と、次は反対側から刃が出現し殻を横半分に等分していく。そのスピードはそこまで遅くはないが、怒りさんの後に追撃しようとしていた二人が斬撃と刺突を入れるには十分な時間だ。


 アルの槍による突きが、筋肉だるまの戦斧による骨をも叩き割れそうな斬撃が、むき出しの刃めがけて振るわれる。結果はギィィィンという金属音が示した。


 「いや、金属音っておかしいだろ。【外殻】でそんな音なんの?」

 『【外殻】の上位スキルじゃないですか?ちょっと近く行ってくださいよマスター。腕が鳴ります』


 鳴る腕無いからね?【鑑定】の事だと分かるけど。


 アル達も刃に吹き飛ばされたようだが、怒りさんとは違い貫かれたわけではないため着地する事ができた。


 そして卵が完璧に脱げる。


 卵から生まれたのは巨大なアントビー。【巨大化】使ってる?使ってない?ですよね、生まれる時からスキル使ってるとかおかしいもんね。よく考えたら卵からデカかったもんね。


 やべぇ。でけぇ。


 というかその刃腕なの?確かにそれしかないだろうけどさ、刃と腕の付け根が不自然なんですけど。


 刹那、暴風ともいうべき風が吹き荒れた。


文字数戻った。

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