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74 掘りまっせ~

 「うるさいわね。何が――って魔物!?」

 「っ――!」


 チゼルが騒いだのでサリア達がこちら側を覗きに来てしまった。どうやら俺が魔改造した屍が敵認定されたらしい。サリアが驚愕の声を漏らし、ヴァイロが剣を構える。


 「ストップ、ストップ。死体だから切り刻んでも意味ないよ」


 屍を改造しただけなのでまた治せばいいだけなのだが、それも面倒くさいので取り敢えず鋭い突きを繰り出そうとしているヴァイロを止める。


 「は?」

 「・・・?」


 二人が一転して不思議そうな顔をする。そりゃあね、動くか調べるために今も“操作”で動かしていたら、死体だなんて信じらんないだろうけどね。


 「ほら、ユウナギがこの巣の中に入る時に乗っていたアントビーの死体あっただろ?あれをユウナギが改造したんだってさ」


 ここでチゼルの援護が入った。ナイスです。しかも理解しやすい。これが俺なら説明にどれだけ時間がかかったことか・・・。


 チゼルの話を聞いた二人は納得した様だが、それが解消されたら別の疑問が出て来た。


 「で、何でそんなことしたの?」

 「男子たるもの改造せずしてどうしろというのか!?」

 「パルちゃん、そこのバカが何言ってるのかわかる?」

 「分かってしまったのなら同じくらいの思考能力しかないってことよ?そんなこと分かるわけないわ。だからそういうのは無視してるの」


 パルさん最近毒舌が板につき始めてるよね。サリアがパルの言っている事を復唱するのでみんなが引き始めてる。


 「チゼルは?」

 「それは俺の頭が逝かれてると思われているという事なのか!?」

 「え?違うの?」

 「素で返されたぞ!?」


 チゼルざまぁ。それとは別に、肩を落としているチゼルの肩をぽんぽんと叩き、慰めの言葉を言ってやる。


 「良かったな!俺と同じくらい頭いいって言われてるぞ!」

 「悪いって言われてるんだ!」


 慰めてやったのに怒鳴るとは何事か。はぁ最近の若いもんは、これだから。


 「で、何でそんなことをしたの?」


 さっきと同じ質問が返される。だからと言ってさっきと同じ回答じゃ怒られるのは目に見えているので、それっぽい嘘をつく。


 「やっぱり三手に分かれるだけじゃ時間かかりそうじゃん?もう一手増やした方がいいかなって」


 実際は動ける範囲は【空間把握】の届く範囲だけだから探索の意味はないのだけど、サリア達知らんし問題ないでしょう。


 「命があるわけじゃないから【生命感知】に引っかからないし、壊されても痛くもかゆくもないし」


 ワーカーたちは【生命感知】というスキルを所持しており、それを使って奇襲を成功させている。逆にそれさえなければ奇襲を受けることもないし、警戒されないから集まっている所も見つかるかもしれないとか、壊されたとしても血糸を動かして手元に戻す事ができるだとかいろいろ言うと俺にも考えがあったのだという事が分かったらしい。


 「最初からそう言いなさいよ」

 「考えることを怠ったらそれはもう知識ある生き物とは言えないのです」

 「ハイハイ」


 適当にいなされた。結構いい言葉を言ったつもりなんですけど。地球の誰かさんの受け売りだけど。


 「でも、形を変える意味はなかったんじゃない?」

 「弱そうに見えたら舐められるだろ」


 沈黙した。無言の訴えが聞こえてくるようだ。すなわち――いや、逆になんとしてでも排除しに来るだろ――と。


 もしかしたら違うという可能性とかあるじゃん。無いか。


 「取り敢えずもういいよね。じゃ、俺はこいつの操作に集中するんで」


 皆何も言わないのでもういいという事でしょう。というわけで“操作”開始。


 屍が浮く。足動かすの面倒くさいなと思っていたら、そう言えば足動かさなくてもほとんど血になっているから“操作”で浮かせることできるじゃんと今更ながらに気が付いたので実行してみたのだがうまくいってなにより。ただ、すべてが血というわけではないので、少ししか浮かせないけど大丈夫でしょう。


 じゃねー、と進路の反対側に飛んで行く屍に別れの挨拶をして、休憩に入る。皆ももう少し休むべきだからまだ時間はあるでしょう。その間にやる事を終わらせるとする。


 先ほども言った通りただ探索するなら【空間把握】で間に合っているし、形も変える必要はない。だが一応それなりの理由はあるのだ。そのやる事というのは――


 ズバリこの巣の破壊だ。


 普通に【アシュタロス】使ったらバレるし、かといって一人行動したいといったとしてもこのチームに入った後でやっぱり抜けるというのは違和感しか感じない。なのであの屍君に破壊してもらおうというわけだ。


 そのうえで問題だったのが【アシュタロス】が発動するのは俺だけという点。生前に【アシュタロス】を持っていたとしても死体となっては発動する事ができない。


 ならばワーカーみたいなドリルを俺の体を使って作ればいいじゃないという事である。俺の血を使ったドリルなら【鱗片】のときみたいに【アシュタロス】も使えるのだ。翼とか尻尾は多少、いや、ほとんどは俺の趣味だが。


 だってどうせ自分の好きなように作れるのなら、カッコよくしたいじゃん?


 というわけでこちらからは見えないところまで行ったので早速“迷宮破壊”発動!掘りまっせ~どんどん掘りまっせ~。ただ、先ほど言った通り【空間把握】内でやらないといけないから近くにいないといけないんだよな。何が言いたいかって?つまりこう言う事。


 ドゴンッ!


 「ふぁ!?」

 「何処だ!?」


 大きな破壊音がして、サリアとチゼルが慌てる。ダンジョンが破壊された時に同じような音がするので奇襲と勘違いしたんだろう。


 さっきの話に戻るが、近くでやると聞こえてしまうという事を言いたかったのだ。


 まぁ、聞こえたからと言ってだからどうしたという話ではあるが。


 「オルクスたちが近くにいたんじゃない?」

 「え?そう、そうね」


 有り得ないというほどの事でもないし、どうとでも誤魔化せれるんだな。


 ドゴンッ!ドゴンッ!


 誤魔化せれるかな・・・?


 「ねぇ、さっきからずっと響いてるけどほんとにオルクスたち?」

 「さらに近くにいか――ハーゼとかも同時に襲われてんじゃない?」


 危なっ。つい怒りさんって言いそうになった。大丈夫、バレてない。たとえジト目を向けられようとも、それは俺の考えが適当過ぎたから向けられているのであって怒りさんって言おうとしてたからじゃない。――あれ?どっちみちピンチじゃん。


 とかしてる間に屍さんが【空間把握】の届くギリギリのところまで壊したので移動しないと。


 「さぁ、休憩はもういいよね。早く行こう」


 だからこれは別にごまかしたとかそういうのではない。


 「ねぇユウナギ、さっきのあれ、本当に形の変わった死体なのよね?」

 「その通りだが」


 嘘は言っていない。ただその形を変えるために使った素材が俺の血というだけだ。そして死体を使っての新しい探索(破壊活動)が始まった。


 ある時は頭上の通路に、ある時は隣の通路に、はたまたある時は地下に。移動しながらもドゴンッドゴンッと音をさせていく。そんなことをしていたら流石におかしいと思うよね。


 「ユウナギ、いい加減本当の事を――」

 「おっ上に行く道を見つけたって。こっちだよ」

 「ってちょっと待ってくれっ」


 と、別の興味をそそらせる場所に行く振りして無視する。連れて行った場所もヤバいけどね。そこには穴だらけの壁、連なる穴の道、要するに貫通された壁。もうね、故意にやられない限りこんなのないでしょって感じだよね。


 「ユウナギ、これはどういう事なんだ?」


 皆もそう思ったのか代表してチゼルが聞いてくる。


 「【生命感知】に引っかからないはずなのに野生の勘と言う奴はすごいな」

 「綺麗に貫通してるけどこれはどう言い訳するつもりだ?」

 「【念話】で援護要請したとか?貫通しているように見えるのは偶然じゃない?」

 「無理有り過ぎだろう!?」


 ですよねー。俺もそう思うもん。


 「これ死体じゃなくて本当は生きているんだよ。生きているんなら【アシュタロス】発動するから何も問題はないはず!」

 「いや、【生命感知】引っかかるだろ!?」


 鋭いなもう。


 「そうか!【生命感知】に引っかかったからワーカーに襲われたのか。だったらこの状況もうなずけるな」

 「おい、自分で墓穴掘ってるだろう・・・はぁ、もういい。話したくないという事は分かったからな」


 渋々という感じだったが何とか諦めてくれた様子。ありがたや。


 さらに進んでいくと長らく見なかった扉が。あれ?四十層への階段は壊れてないの?分かりやすいから良いけど。


 「予想していた入り口前の待ち伏せもなってことは・・・そう言う事よね」

 「一体何体この向こうにいるのやら」

 「取り敢えず、あの穴を抜ければ簡単に来れるし、オルクスたちが来るまで待つか」


 その後無事、オルクスや怒りさんたちと合流できたのだが、説明を求められたのは言うまでもないだろう。


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