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8マジで漏らしたらどうしよ

魔王。


 意図せずそんな言葉が思い浮かんだ。


 彼女の唇から顔をのぞかせる犬歯は間違いなく吸血鬼のソレだった。


 そして彼女は戦闘経験が全くない俺でも瞬時に勝てないと思わせる異様なまでの威圧を放っていた。


 半吸血鬼の俺とは強さの次元が異なる。


 それが半吸血鬼と吸血鬼の違いだと言われればこの世界に来たばかりの俺は信じるしかないが、だとするとあの王はこんな化け物がうようよいて更にそれよりも強い魔王が居るようなところと戦うつもりだったという事になる。


 絶対に勝てるわけが無い。例え勇者が居たとしても無謀。そんなの死にに行くようなものだ。


 「初めましてだね。召喚された吸血鬼って、君で合ってるよね?」


 急に話しかけて来たんだけど、これ俺に対して話しかけてきてるよね?


 「正確に言えば半吸血鬼だね。」


 ちょっと恐怖とか感じちゃってるけど、それに気づかれないように敬語とか使わずに素で答える。


 少し足震えてるけどね。マジで漏らしたらどうしよ。


 「あぁ、そーだったんだ。で、名前はなんていうのかな?」


 「人に名前を尋ねる時は自分から名乗るものだと思うが?」


 よし頑張った。頑張って口答えした。でもこれ意地はってやってるけど下手したら殺されるよね。


 「生意気だなぁ。【威圧】が効いてないのかな?」


 そんな感じのスキルがあるのかな。ありそう。


 さて本当のことを言うべきか。別にこんな感じだと騙されてくれそうだからそんなの効かん!とか言ってもいいんだけど、長時間これ受けてると真面目に漏れるかもしんないんだよね。


 「いや、効いてるよ。今は意地で耐えているけど、長時間それを受けるのはきついかな。穏便に済ませる気があるなら解いてくれると助かる」


 ここに来る時も兵士達を倒すのではなく睡眠系の魔法で眠らせていたことから穏便に積ませる気があると踏んだが、実際はどうなのだろう。


 「そうだね、分かったよ。でもその代わり貴方の名前を教えてね。」


 どうやらその考えは当たっていたらしく、彼女に対する恐怖が和らいでいったのが分かった。あくまで和らぐだから恐怖自体はまだあるが先程に比べるとあってないようなものだ。


 てかそんなに名前が知りたいのかよ。別にいいが。


 「俺の名前は緋月凪だ。あんたは魔王で合っているか?


 自分の名前を言うのと一緒に魔王かどうか気になっていたので、聞いてみる事にした。


 「察しの通り。私は今代の魔王シエラ・スウェンディ」


 と、そんな答えが返ってきた。やはり魔王だったか。


 てかどうせ名乗るならさっさ自分から名乗れば良かったのに。多分相手の言う事に乗るのが嫌だったんだろうけど。


 そういえば何故俺が吸血鬼ってことがバレたのだろう?ここに来たってことは明らかに俺が目当てだよな。だとしたらどこで俺がここにいるって事を知ったんだ?俺みたいな奴の事の情報を王が漏らすなんて考えにくい。この国の人達に漏らしたとしたら国民に不安が襲う。魔王のところに漏らせば最悪取返しに襲撃を仕掛けられる可能性がある。見事にデメリットしかない。


 「で、今日はどんな御用で来られたのでしょう?」


 今度はこちらが質問するので敬語とか使ってみる。


 俺が敬語を使うことで機嫌を良くしたらしいシエラが丁寧に教えてくれた。


 扱い方分かったらチョロそう。


 事の発端は勇者召喚の前に遡る。


 『人族が勇者召喚を行う。』


 魔族領にそんな情報がもたらされた。


 いくら強大な思うといえども勇者なんか召喚されれば命の危険が出てくる。


 危機感を覚えた魔王はある考えに思い至る。


 『そうだ。あちらが召喚を使うのならばこちらも召喚すれば良いじゃないか』


 魔王はすぐさま大魔法同種族召喚の準備を始め発動させた。


 この魔法は確かに成功した。だが、そこには何も見当たらなかった。


 もうそのことは諦めて、情報を掴むために自分の眷属を王城に遣わせた。


 そして王城には吸血鬼が召喚されていた事を知った。


 どうやら同種族召喚で王城に転移されたらしい。


 なんでも勇者召喚と同種族召喚がほぼ同時に使われ、その所為で時空が歪んでしまった。


 そこで俺は消費魔力量の多い勇者召喚のほうに引っ張られ、王城の方に召喚されたと。


 で、出来れば魔王側の方に着いてもらいたいので、魔王が直々に交渉しに来たと。


 今思えば俺が召喚された時に見た魔法陣は同種族召喚の魔法陣だったんだな。



 俺の非なくない?

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