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70 問題ない!

 蜂と蟻のハイブリット型の魔物、アントビーのうちの二匹が巣にかかる梯子(はしご)を上っている人間たちに襲い掛かる。一匹は体当たり、もう一匹は何やら腹の部分を人間たちに向ける。


 一拍置いて、その腹から針が飛び出してくる。ここは毒のダンジョンであり、その容姿からも毒のついた針だろう事が分かる。


 毒の針は体当たりを繰り出そうとしている蜂を追い越し、寸分たがわず魔法を詠唱していたサリアに肉薄する。


 この三パーティー合同チームにおいて一番の火力を誇る魔法使いはサリアなので、蜂型の魔物の判断は正しい。狙い通りまだサリアは詠唱しきれておらず、さらに梯子に上っている状態というのもあり、回避行動を起こすそぶりを見せない。


 それでも普通は詠唱を放棄して、梯子を登るなり別の直ぐに放てる魔法に切り替えて相殺するなりするのだが、サリアは全く動こうとしない。


 それはこれくらいの攻撃なら耐えられるというような傲慢のようにも感じられるが、そんなこと彼女は微塵も考えていない。彼女の目には、ただ無心に詠唱を唱えきるという狂気にも満ちたものが宿っている。


 毒の針があと数メートルでサリアに達しようとなったとき、これまた毒でできた水玉がその針を吹き飛ばす。それは勿論俺の放った【毒弾】だ。


 サリアが迫りくる針を無視して、詠唱を完遂させようとしたのはひとえに傲慢からくるものだけではなく、同じ精霊魔法を持つものの力量を信じていたからかもしれない。


 だが一息つく暇もなく、もう一匹のアントビーがさらに追撃してくる。詠唱はいまだ終わっていない。が、それはサリアの魔法だけ。


 「――【衝撃風】」

 「――【氷槍】っ!」


 体当たりしてくるアントビーをマリアさんの【衝撃風】が体当たりの勢いを殺し、なおかつ少し後退させる。続いて放たれたレティさんの【氷槍】がアントビーの腹の付け根の部分を穿つ。


 さすがに絶命とまではいかないもののその威力は絶大の一言。


 【衝撃風】はエイリャが使っていたものと比べると圧縮密度が倍くらい違うし、【氷槍】は明らかに俺の【毒槍】より大きい。魔力を多く使えば同じ大きさにはできるだろうが、練度の違いから彼女の日ではない位の魔力を消費してしまうだろう。


 そしてサリアの魔法が発動する。


 「――【紅蓮柱】」


 瞬間、炎の柱が真下より広がる。それも一本だけではなく、俺達を囲むように周囲に計五本の炎柱が猛威を振るう。炎柱一本だけならば詠唱にはこれほど時間はかからない。同時に五本展開するからこその長い詠唱時間なのだ。


 「今のうちにさっさと上るぞっ!」

 「言われなくても!」


 オルクスの号令に誰もが従う。というかレティが言ったが、言われなくてもみんなそうしていたのだろうけど。


 (ほとばし)る炎柱のおかげか、アントビーたちも攻めあぐねているようで五つの炎柱の周囲を旋回しているようだ。


 といっても、炎柱もいつまでも現れているわけではなく、魔法陣に注ぎ込まれた魔力が無くなれば消えてしまう。そして五本もの炎柱を同時発動、それも急いでともなると、その魔力量も多くはない。それを代弁するかのように火が弱々しくなってくる。


 そして炎柱と炎柱の間がわずかに開いて来た時、やつらはその隙間をかいくぐってやってきた。


 大量のアントビー共が入ってくる光景は、虫に耐性のない者からしたら鳥肌ものだろう。そして耐性があり、冷静なものでも一瞬呆けてしまった。


 なぜなら、火の勢いがなくなってきたことによってできた小さな(・・・)隙間に先の蜂共が入ってきたのだ。あの大きな穴に身体を詰めらせていたのと同じ蜂共がだよ?


 まだ安全と思っていたのに入ってきたんだよ?一瞬思考が飛んじゃっても仕方ないよね。


 『ちょっと誰か説明してっ』

 『【巨大化】が解かれただけですけど?』

 『いや、一般常識を語るみたいに言われても困るんですけど』

 『やだなぁ、あんなでっかいアントビーがいるわけないじゃないですかマスター』


 【鑑定】(かんていさん)はやはり問題児だったようです。


 『どうして言わなかったのよ!』

 『聞かれなかったから?』

 『意思持っている意味皆無じゃないの!』


 そして今日のパルのツッコミも絶好調の様だ。


 『取り敢えず【鑑定】してくれ』

 『いいですけどぉ、私もしかしたらまたバグっているかもしれませんよ?』

 『はぁ!?どういう・・』

 『ま、言われたからにはやりますけど

結果:名前 無し

   種族 アントビー:魔物、蜂、蟻

   ランク D

   スキル

    エクストラ

     【巨大化】

    ノーマル

     【毒霧】【再生】【放出】【糸】【飛行】【アシュタロス】

    固有

     【穴掘】【毒針】

   称号 なし』


 またしても固まる思考。


 【糸】?


 ・・・・・・


 『アレ?オカシイナ。【イト】ナンテツカエルノ?』

 『ナギが壊れた!?でも、【糸】って・・・そうよ、【偽装】使っているのかもしれないわ!』


 パルのその言葉は虚しく響くだけに終わった。


 それは梯子にアントビーの糸がくっついたから。【偽装】は偽るだけの能力なのでスキルとして使えるわけではない。三十層のミミックがいい例だ。


 という事はつまり、【糸】をアントビーが持っているという事である。


 思考が回復したと同時に【血液支配】の“液化”と“固化”を使い梯子に絡まった糸を切断する。


 見ると炎柱はもう消え去っており、オルクスたちは巣の中に入っており俺だけが取り残されている状態となっていた。そして俺の周りを十二匹のアントビーが囲んでいた。


 二匹減っているのは炎柱の間をうまく、くぐれなかったおかげだろう。下方に所々黒くなっている死骸が落ちている。だからと言って余り状況的には変わらないが。


 数匹のアントビーが蟻の歯をギチギチと鳴らしながら迫ってくる。


 この絶望的な状況で俺は、なぜか笑っていた。それは傍から見たら、あまりの絶望的な状況に狂ってしまったかのように見えたかもしれない。


 「ハハッ面白れぇじゃなぇか」


 その言葉を合図にしたかのように、迫っていたアントビーたちが速度を上げ、急速に肉迫してくる。


 対して俺は【高速思考】で引き延ばされた思考力の中もっともはやく俺の元へ到達するだろう、正面のアントビーを見据える。


 そして俺に当たるギリギリのところで回避し、その背に飛び乗る。言うに易し行うに難し。だが、なんとなくできるような気がしていた。なんという幸運、これも【超幸運】のおかげかもしれない。


 避けられて仲間と頭突きにならないように少しタイミングをずらしていたというのもなす事の出来た要因かもしれない。

 なまじ頭が働くばかりにこの状態に陥ってしまったアントビーたちはもうちょっと野生の勘を研ぎ澄ました方がいいのかもしれない。


 普通ならだからどうしたと振り払うなりどうとでも出来る。ここは空なのだ、だからこのままアントビーを殺したとしても待っているのは墜落。所詮苦し紛れの道ずれに過ぎない。


 ただ、普通の事を考えてないとしたら?


 俺の右手に先ほどまで梯子になっていた、糸が収束する。オルクスたちももう中に入っているころだろうので問題ない。うわぁぁぁぁぁとか聞こえてもそれは空耳なので問題ない!ないったらない!!


 そしてその糸を槍状に固める。収まりきらなかったものは、自らの体とアントビーを固定するのに使う。


 羽には絡めていないので墜落するという事はない。死ななければ。


 そして血と糸でできた槍を、いまだ俺を振り払おうとアクロバティックな動きをしているアントビーに突き刺す。


 ギチギチギチと悲鳴にも似た声を発するアントビー。が、そんなもので息絶えることはないと代弁するかのように、その高速移動は続く。


 ミミックのしぶとさからもこれくらいは予想していた。本番はこれからだ。


 ドクンッと槍が脈動する。そして本体を更にアントビーの中に潜り込ませる。しかし、その体を槍が貫通することはなく、それでもやりはどんどん体の中に入って行く。


 アントビーの体に赤黒い筋が何本も現れる。


 悲鳴のような鳴き声もだんだんと力を無くしていき、最後にはなくなる。当然そんなことをしたら墜落するわけで。


 高度何十メートルもある所からの墜落は、それだけで人一人を殺すには十二分すぎる威力がある。が、俺は焦らず、槍をアントビーの中に差し込む。


 ある程度まで糸を入れ終わったとき、すでに高度は20メートルを切っていた。


 【血液支配】“操作”。


 【高速思考】を最大限に発揮したほんの少しのろくなった世界で、【空間把握】をアントビーの体の中に集中させ、なおかつ新たな【集中】というスキルも発動させ、さっきまで槍の形だった血のにじんだ糸を動かす。


 瞬間、(むくろ)が動いた。


 羽を伸ばし、空気を捕らえ、生きていた時と何も変わらない動きを見せて飛翔した。


 今回いつもより千文字多いんですよ!頑張りました。もう本当に頑張りました。・・・褒めてくれてもいいんですよ?え?まだ足りませんか?そうですか・・・次回頑張ります!


・・・・・・多分。

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