綾音2 嫌な予感
――――――――――――――――――――
名前 ニカイドウアヤネ(二階堂綾音)
種族 ドワーフ:土人
スキル
オリジナル
【刻印金属】
エクストラル
【鍛冶師の心得】【武器庫】
ノーマル
【高速演算】【切断力】【堅固】【再生】【生命感知】
固有
【怪力】
スペル
【基本火属性魔法】【基本水属性魔法】【基本風属性魔法】【土属性魔法】
称号 勇者の連れ
―――――――――――――――――――――
これが、私がこの世界に来た当初のスキルカードに映っていた文字だ。
最初は元の世界に帰る事の方に集中していたために、種族の事とかおかしなところがあるのにそれには目もくれなかった。
王様に質問をして弘斗君が私たちで魔王を倒すと誓った後、ある人の言葉でその事に気づかされる。
「じゃあ固有スキルって何ですか?」
そう言ったのは緋月凪君だ。彼は問題児と言うわけではないけれど、授業中は寝ていたり、休み時間にも寝るなどと人との関わりをあまり持とうとしていない人だった。
いえ、事業中寝ている時点で問題児ね・・・。
とにかく、話をしても同じクラスの篠村君とだけなので、私とはあまりかかわりのない人だと思っていた人だ。
だけど最近話す機会が多くなっている。私から話しかけていたわけじゃない。確かに私はクラス委員ではあるが、見るからに人とのかかわりを拒絶しているような人とまで仲良くしようとするようなお人よしじゃないもの。
話しかけて来たのは彼から。彼は口を開けば人をおちょくるようなことばかりを言ってきて非常に腹立たしかった。偶に真面目な顔をしたかと思えば次の瞬間になったらまた悪戯っ子みたいな顔になっておちょくり始める。
そんな厄介な子だが、いつの間にか私から話しかけたりするようになった。そのほとんどが授業中に居眠りしていたことに対する注意だったけれど。
私からしたら嫌な意味で印象の強い子だったからすぐにわかった。
そして彼の言葉を聞いて、そう言えば私のスキルの中にもそんなものがあったなと思っていたら王様の顔が変化した。今まで浮かべていた表情と違う、まさかそんな!と言った顔だ。
「ち、ちなみに種族はなんじゃ?」
「? 半吸血鬼ですが・・・・・?」
「「「「!」」」」
周りの鎧が一斉に動き始め、瞬時に彼を囲む。
「その者を捕らえよ!」
「「「はっ!」」」
その後の事はあまり覚えていない。気が付いたら彼のこんな言葉が聞こえた。
「これは迂闊だった。まさか固有と言うのは種族固有と言う意味だったか。異世界に来て浮かれすぎたみたいだな」
固有が種族固有と聞いた時、私の思考は止まった。それはいったいどういう意味?
再び思考が回り始めたのは彼が騎士に連れていかれてからだ。
この間に分かったことは、人族は固有スキルを持たないこと、吸血鬼が魔王だという事。
正直、吸血鬼が魔王だという事はどうでもいい。それよりも固有スキルだ。人族が持っていないのならば私が固有スキルを持っている事を知られるのは不味い。
私の種族はドワーフと言うらしいが、何のことだかさっぱり分からない。が、この世界では魔王と同じ様に恐れられていたり、魔物と同じ様に討伐対象になっているかもしれない。
もしかしたら人族とは友好的かもしれないが、確証もないのに決めつけるのは早すぎる。
後はスキルも隠すべきだと思う。固有は勿論の事戦闘に関係ないだろうスキルも教えるのは止めといたほうがいい。
と言うのも、私達はここに魔王を倒すために来た。なのに戦闘スキルが多くないのであれば、外に出す必要がなく、王宮にこもって鍛治でもしていろという事になりかねない。
ここにいれば私が人族でないという事を直に悟る人が出てくる。それは私の今の身長を見ればわかる。ドワーフと言うのは皆身長が低いのか、この世界に来てから私の身長は少しづつ縮んでいっている。
なんとかしてバレる前にここから出なくては。
そう思ってもどうしたらいいのかわからず時間が過ぎていき、そして起きた出来事が篠村君の喪失だった。
実際は篠村君の教官のセフィさんがダンジョンに挑戦するために脱出したのだけれど。
そしてその後考えた結果出て来た方法は、単純に普通に頼むこと。
誰にって、勿論私の教官に。篠村君の教官であるセフィさんが連れ出してもいいなら私の教官が私を連れだしても問題ないのではと思ったから。
ここから出たいではなく、街に行きたいと言うことにして。流石にここから出たいでは何か裏があると思われかねないし、騎士が付いてきたとしても振り切って逃げればいいのだから。
その後の事もあるから、買い物したいという事にしてお金も貰っておいた方がいい。
そして今、私の教官、コーラスさんにその旨を伝えに行こうとしている所だ。その作戦を考えてからすぐに聞きに行こうとしているわけではない。
昨日はもし作戦を実行したとして、コーラスさんはどんな反応を見せるか、そしてなんと言うか、それに対しての目的を実現させるための返し方などどんな事を言われてもいいようにシュミレーションを何回とした。
準備はバッチリと言ってもいい。
よく後の事を考えずに、思いついたことをしようとする人が居るけど、そんなので成功するのはあまりない。
なので私は絶対に成功させるために行動する。
いつもコーラスさんと稽古をしている場所に着く。そこにはまっていましたとばかりに笑うコーラスさんがいた。
「さあ!今日も魔王討伐に向かって頑張るぞ!」
コーラスさんは熱血教師みたいな人で、少し苦手だったりするのだが、基本的に良い人なので嫌いと言うわけではない。・・・ただ鋭い人なので私の種族がばれないか冷や冷する。
「あの、コーラスさん。少しいいですか?」
「ん? なんだ?」
私が呼ぶと口ぶりから何か言いたいのかと読み取ったコーラスさんがすぐにどうしたのかと聞いてくる。
騙している事に対して少し罪悪感が生まれたが、そんなものは今更だと言い聞かせて私は言葉をつぐむ。
「街に買い物に出かけたいのですけれども、よろしいでしょうか?」
「ん?ふむ、そうだな・・・」
コーラスさんは少し考えこむしぐさをする。何を買いに行くのかとか何か言われるだろうと思っていたので少し意外だ。
と、何か思いついたのかコーラスさんが「うん、そうだな」と顔を上げる。
なにか、嫌な予感がする。
「子供はご褒美を見せたらやる気になると言うしな!これからの稽古に模擬戦を入れるから、それに勝てたら街に連れて行くと約束しよう!」
予想だにしない答えが返ってきた。
「お前たちなら稽古をすれば俺達なんてすぐに追い越せるからな!ワハハハハッ!」
生産系スキルの多い私に模擬戦で・・・コーラスさんに勝つ?
「無理な気しかしないわ・・・」
その言葉はコーラスさんの笑い声にかき消さられ本人に届くことはなかった。




