68 百点満点の回答ここに来たり!
そして全然進まないっていうね・・・
「ユウナギ、これがこの層・・・と言うより三十一層から四十層の問題だ」
「層と層を隔てている床と天井が壊され、アントビーと言う魔物の巣が作られている。上に上るにはこの巣の中に入って行くしかないという事よ」
チゼルとサリアが絶妙なところで話を繋げて説明してくれる。どれくらいかと言うと事前に打ち合わせでもしていたのかと言うぐらい。
「今まで階層が壊されているなんてことはなかったんだけどな」
最後に話を締めくくるようにオルクスがつぶやくが、まぁ何が原因かは何となく想像できる。
『スキル【アシュタロス】の能力でしょうね。層と層の間は異空間で繋がっているため【迷宮破壊】では壊せませんが、【アシュタロス】の技量が上がってもう一つ能力が追加されたのでしょうね』
【鑑定】が推測を述べるがむしろそれしかありえない。ダンジョンと言うのは絶対に壊れることのない謎物質で出来ている。だが、唯一干渉する事ができるものにそのダンジョンと同じ名前のスキル、このダンジョンで言うところの【アシュタロス】などがある。
それしかない。それしかないのだが・・・
「この中にいる魔物は全て【アシュタロス】と言う謎のスキルを持っているのだが多分それのおかげだろう」
全てってどういう事でしょうね?ここで今まで討伐した魔物は全てと言うのは分かるよ。もしかしたら偶然【アシュタロス】持ちばかりを討伐したのかもしれない。
でもね、こんな広大な広さを壊すのに少なくとも百単位の魔物はいると思うんだ。
『あのクソストーカー何やってんだ・・・』
【アシュタロス】の性質上、獲得するためにはダンジョンマスターからもらう必要がある。という事はあのクソストーカー野郎がそんな大勢に加護を与えたという事だ。そんなことしたら難易度跳ね上がるに決まってんじゃん。
だからこうして呆れるような愚痴をこぼすのも仕方がないと言えるだろう。ただ、そこには少しばかりの喜色が浮かんでいたような気がするがそこは何でもないとばかりにスルーする。
それに難易度が高いと言ってもそれは普通に攻略した時の事。四十層に行くだけならもっと簡単な方法がある。
「この巣を燃やすのは?厄介な謎物質が無くなったんだからショートカットすればいいだろ」
百点満点の回答ここに来たり!そうだよ、なにも馬鹿正直に攻略することないじゃん。と思っての言葉だったのに返ってきたのは呆れ、嘲笑等々。
「そんなことここに来てすぐに試したわよ。残念ながらこの巣はダンジョン物質化しているわ」
「多分、ダンジョン自体が壊されたのを悟って急いで元に戻そうとしたけど、その前にアントビーたちが巣作りし始めたからやむなくこの巣をダンジョン化させたのだろう」
後半チゼルが憶測を述べるが、残念ながらそれは違う。【アシュタロス】の更にもう一つの能力だ。オルクスたちは勘違いしているだろうが、そもそも【アシュタロス】というのはダンジョン内である程度の権限を持つという能力であって決死って破壊をすることのできる能力ではないのだ。
俺も推測だがこちらの方が当たっていると思う。
もっとも、クソストーカーが面白そうだからってダンジョン化させたとしても不思議ではないが。
とにかく、先に進むにはこれを登る必要があるので、この話はいったん止めて全員で巣の下まで歩きだす。
下の方まで来るとその巣の大きさが嫌と言うほどわかった。
まず、穴からして大きい。六方形の一辺が大体、二メートルくらい。その穴が無数に開いている時点でこの巣はどんだけ大きいんだと言いたい。
そしてその大きさの穴から体を詰まらせながら出てくる、蜂型の魔物。その大きさなら仕方がないと言うべきなのだろうが、見たところそれより小さな魔物が一匹たりとていない。
と言うかそれ以外の種族の魔物がいない。
蜂型の魔物しかいないのは蜂の巣なのだから仕方ないだろうと言う人が居るかもしれないが、よく考えてみて欲しい。三十一層から四十層までの魔物がここに入るはずなのだ。
なのになぜ同じ魔物しかいない?三十一層からすべて蜂型の魔物だったのか?否、そんなわけがない。
歩く速度をチゼルたちより遅くして最後尾になり、少し間が開いたあたりで気づかれないように詠唱を始める。
発動した魔法は【空間把握】。ソラは先ほど収納しており、中に魔力を通すことで発動させた。
そして驚愕の事実が・・・明らかになるわけではなかった。
というのも、いよいよ【空間把握】の範囲が百メートルを超えたのはいいが、処理速度が追い付いていなく、そのうえで沢山の情報を知ろうとするならば自然とその範囲は狭まる。
範囲は大体六十メートルまで狭まっているのだが、そのせいで内部を詳しく探る事ができなかったのだ。
まあ、そのおかげで別の問題を知る事ができたのだが。
「どうやって中に入るんだこれ・・・?」
六十メートルも範囲を広げて分かったこと、それは穴までの距離が約四十メートルくらいあるという事だった。




