66 こいつリリースしていいですか?
大変長らくお待たせしました!これからはいつも通りに投稿していこうと思っているのでまた見てくださると嬉しいです。
拘束が解けたアルはその場にがっくりと四つん這いになって項垂れている。今回は先制を譲ってもらえたから勝てただけなんだよね。だから自業自得だし、俺が声をかけるというのも筋違いな話だろうのでそっとしておく。
まぁ、怒りさんがなんとかしてくれるでしょう。さっきから拳がわなわなと震えているし、青筋めっちゃ立ってるし、怒られることは確実ですがね。
この試合?をするよう促した女性はどこか満足げにしているが見間違いと言うわけではないだろう。なんだかんだ言って精霊使いってのは珍しいのかね。
「ユウナギ!今の赤いのは何だ!?スキルか」
「いや、見たところ身体につながっているわけではなさそうだし、そんなスキル見たこともない。魔道具じゃないか?」
チゼルと怒りさんじゃない方の四人パーティーのリーダーっぽい人が糸に興味を示している。その四人パーティーのほかの人達も会話には入ってこないが気になる様子。
それはそうとリーダーの人が良い事を言ってくれた。ぶっちゃけあんな糸の使い方をしなくても【血液支配】だけで拘束なりなんだり出来る。じゃあなぜ糸に染み込ませるという方法をしたかというと、リーダーの言う“魔道具”、それに見えるようにしたかったからだ。
これから先の層では最前線のため戦う人が多くなる。
俺の攻撃の主なものは【血液支配】、【精霊魔法】それと毒系統のスキルだ。毒系統のスキルは魔法に見せるという方法をとればいいが詠唱が適当だから食い違いが生まれる可能性があり、【血液支配】は言わずもがな。実に三分の二のスキルが使い物にならない。
唯一【精霊魔法】だけは使ってもいいが火力不足。
そこで、バレないように使うために考えた策がこの糸を使うというものだ。
予備知識がない以上、この世界に魔道具があるかどうかは賭けだったがそれはリーダーによって認められた。ならばあとははったりを言うだけである。
「ああ、そうだ。見た通り粘着性のある糸を操れる魔道具だ」
「そうか。何処で手に入れたんだ?」
「俺の家に代々伝わる家宝だ」
リーダー色々と質問してくるが俺はソレを全て嘘で返していく。
それにしてもこいつ食いつき過ぎじゃないか?と思ったが次の言葉でその理由が分かった。
「それ売ってくれないか?」
さっきの試合?でこれの有用性が理解できたか。
「勿論家宝を買うって言うんだ、それなりの金は払うよ。銀貨10枚でどうだい?」
あいにく通貨単位分かってないんだよな、俺。
「無理だな」
「どうして!?」
売らないと言えば、思わずといった風に突っかかってくる。銀貨十枚と言うのがどれほどの価値かは分からないが、たとえ日本円で言う100万であっても売ることは出来ない。
だって俺しか使えないもんこれ。
「これは所有者を選ぶ魔道具なんだ。・・・選ぶというのも違うな。契約と言った方が良いか。その契約者を所有主と認め、それ以外の言う事を聞かないようにできているんだ。だから無理だ」
という事で今考えた出まかせを本当の事ですよと言わんばかりに話す。
「・・・確かにそうだな。それにそうでもしないと他のやつらの言う事も聞こうとしてどう動いたら分からないかもしれないからな」
どうやら納得してくれた様子。嘘しか言ってないから内心冷や冷やだったわ。
「ところで、君は他に何が出来るんだ?戦闘のときは前衛?それとも後衛?魔法を使うから後衛の方か?いや、君の魔道具だったら前衛も出来そうだな。珍しいが両方できるオールラウンダーか?」
そんなことをきいてくるという事はお眼鏡にかなったという事ですかね?やった―これで楽して攻略ができる。
「両方できることは出来ますが役割をしっかりしてもらえると嬉しいです」
「そうだな。じゃあ後衛を頼めるか?後衛一人前衛一人の二人組パーティーと前衛のソロ、その促成パーティーに入ってもらうつもりだったからその方がいいだろう」
「はい」
バランスを重視するなら確かにそうだな。
・・・まてよ?二人パーティーとソロの野良パーティー?最初にここに入ってきたとき、居たのは怒りさんたちの四人パーティー、目の前の人の四人パーティー、あとは精霊使いの二人パーティーだからソロは・・・
「これから四十層攻略までよろしくな!ユウナギ!」
目の前にはさわやかなイケメンの人懐っこい笑顔があった。
「すいません、こいつリリースしていいですか?」
「ユウナギ!?」
その後、やはりその案は却下された。当然なんだけどね。勿論チゼルにはいろいろ言われた。曰く、なぜそんなことを言うのか、俺達は仲間だろう、俺たちの友情はそんなものだったのか、らしいがそんなこと知ったことかと言ってやりたい。
そもそも俺たちの友情とか言っているが、さっき会ったばかりで友情とか何言ってるんだ。
そしてさらにその後ひと悶着あった。
「【鑑定】してもいいか?」
「あ、オレも」
「じゃ、同じパーティーとして私も」
リーダー(オルクスと言うらしい)につられるように同じパーティーの二人が俺のスキルに興味を示して来た。もう一人の方は黙って女性の傍に控えている。騎士って感じだよね。
「えっ、【鑑定】って許可いるの?」
「いや、そういうわけではないが人間性的にな。・・・もしかしてユウナギはもう俺達の事をしたのか?」
あ、コレしてないって言わないといけないやつだ。信用とか色々消えるやつだ。なので勿論ここはしていないと言う。
それっぽい証拠はちゃんとある。先の模擬戦で【鑑定】を使っていたら、あんな奥の手みたいな魔道具は使わない。最後まで温存しておいて対策などを取られないように秘するべきなのだ。
自分より強いだろうなと何となく思って使った。と言うよりアルの武器は槍だったのだが、その時点で遠距離戦をしていたら勝てたのだ。
それをしなかったのは【鑑定】していなくて直感で判断していたためだ。と、若干言い訳に聞こえなくも無いようなものだったが納得してもらえたようだ。
そもそも本当に【鑑定】してないし。そう思ったのだが、うちのバカは今日も絶好調で空気を読まな過ぎた。
『え?しましたよ?』
やはり【鑑定】は馬鹿だった。どうやら【鑑定】を頼まなかったので自分だけで処理した様だ。
『俺の所にはまともな奴はいないのか。人間性を疑うぞ』
『その筆頭が何言ってんのよ』
『それに人間じゃないですしね』
そうなんだけどさ、こう、気分的にね。
【鑑定】が勝手にやったことなので俺は【鑑定】していない。してないったらしてない。
65話読んでて思ったんですが、あれって厨二と言うよりミイラ男ですね。




