64 後からギロチンで
「で?ついて行くとは言ったが理由も告げないのはどうかと思うんだが?」
チゼルの後をついて行きながら嫌みをこぼすように言うと流石イケメン、嫌な顔一つせずに話してくれる。こういうのが俺との違いなんだろうね。
「あぁ、君には俺達の仲間になってもらいたいんだよ」
まぁその説明が意味分からんがだけど。
「仲間になって欲しいって漠然とし過ぎだろ。それに仲間になるぐらいだったらわざわざ移動する意味もないだろ」
「んー。俺の仲間なんだけどさ、多いんだよね。そんな大人数で移動してたら時間削られるじゃん?」
「俺来るのをここでその仲間とやらと待っていた方が俺が移動するより早く話進めれるんじゃないか?」
「・・・天才か!?」
あ、こいつ馬鹿だ。残念イケメンだ。
「確かにその方が時間的ロスも少なし・・・・・でもダメだ」
うんうんとつぶやいていたが急にその考えを否定し始めた。
「なんで?」
「俺の仲間が面倒くさがる」
こいつパシリかよ。
「じゃあ俺も付いてくの面倒くさいんで。じゃ」
「待って!そこを何とか!お願い!」
来た道を戻ろうとすると凄い力で腕を引っ張られる。
「痛い!痛い!痛い!痛い!腕もげるって!」
「えっあ、ごめん」
引っ張っていた手から力が抜け、拘束を解かれる。それにしても【痛覚軽減】を貫通して痛みが来るとかどんだけ力強いんだよ。
痛かったので取り敢えずジト目を向けとく。
「う、ごめんって。まさかそんなに痛がるとは思ってなくて・・・」
「それは挑発と受け取っていいんだな?」
「あ、そういう意味じゃなくて・・・えっと・・・」
そういう意味以外に何があるんだよ。それにしても俺の耐久紙なのな。
「はぁ、もういいよ」
「え?ホント?ありがとう」
チゼルの表情は笑顔そのものだ。だけどな、俺はもういいよとは言ったけれど許すつもりは微塵もないんだよ。
「ああ。後からギロチンで勘弁してやるよ」
「・・・へ?」
今度はぼうけたような間抜け顔。それでも絵になっているからイケメンは腹立たしい。
「いやそれ割とマジで死んじゃうよ」
硬直から解けたようだが、冗談と思っているのか苦笑いだ。
「大丈夫だ。首にとはだれも言ってないだろう?腕にすればまぁ、ぎりぎり生きてけるだろ」
「いや、でも四肢が一つ無くなるのは・・・」
「あー腕痛てー。もう動かないかもしんないなー(棒)」
と、わざと肩をぶつけて慰謝料をせびるヤンキーみたいなことをしてみたり。まぁ引っかかるわけないだろうけど。
「本当!?え、うわど、どっどうしよ」
マジかよ。普通引っかからねえぞ。だが面白いからこのままで。
「ああホントホント。めっちゃ痛いわー。もう冒険できないかも。グスン」
「じゃ、じゃあお詫びに――」
「遅っせーじゃねぇかチゼル!何日待たせたと思っていやがる!」
第三者の声に驚く。どうやら遊ん・・・話しているうちに目的地に到着したらしい。
おそらく宝箱があっただろうそこは、一辺十メートルくらいの長方形の部屋。十人くらいの冒険者たちが居座っていた。二人で固まっている冒険者が一組、四人で固まっている冒険者が二組。
いま声を発したのは四人組の髪を逆立てた男。そのそばには大剣が突き刺さっている。見るからに怒りっぽそうな人だ。てか怒り過ぎじゃない?鉄分足りてないでしょ、血でも飲んだら?美味しいよ。
「まぁまぁ、チゼル君にもいろいろあったんだろうし」
「にしても一日も待たせるのは流石にないでしょ」
怒りさんを他の組の男の人がなだめ、それを女の人が茶化す。
「彼、今三十一層に着いたばかりだから仕方ないじゃないか」
さらっと俺に罪を擦り付けてないですかね?
「はぁ!?あんなのを倒すのに一日もかかったのか?本当に戦力に何のかそいつ」
むっかっと来ましたよ今のは。断固として訂正を要求します。
『でもまともにやってたら最悪死ぬこともあり得たわよね?』
『それはそうだけどね、俺だって最初から魔物だってわかっていたらあんなに簡単に捕まることなんてなかったと思うんですよ』
『『・・・』』
パルと【鑑定】が視線を逸らしたような気がした。責任は感じているって事かね。
『よく考えてみなさいよ、あの階層ボス部屋なのに魔物がいないって時点でナギももうちょっと警戒しなかったというのも悪いと思うわ!』
『そうですよマスター。ほら、私が残念なのは知ってるでしょう?だったらもう少し警戒していてもよかったと思います!』
【鑑定】が自分の事残念な子だと分かっていたのがびっくりだわ。
でもパルと【鑑定】の言う事ももっともなので痛み分けという事で。
「昨日感じた魔力の四分の一もありませんよ。本当にその子なんですか?」
この状況忘れてた。今の人の言葉もひどいな。怒りさんと同じグループの女性、本人を目の前にしているのにスパっと言うところがなんとも・・・。
それにしても魔力とな?昨日は【同一化】によって魔力が二倍以上に膨れ上がっていたと思っていたんだけど、どうやら四倍以上だったらしい。つまり耐久も魔力も雑魚と・・・ハハッ泣けてくる。
でもなんで階層の違うところにいたのに魔力流なんて分かるんだよ。
「確かに変だよな。おい、おまえ、もしかして他のやつと三十層に居たのか?」
怒りさんの所の筋肉だるまの声が響く。いや、だってそうとしか言いようがないもん。迫力あり過ぎて声が響くって思うくらい筋肉という天然の鎧を身にまとった大男、武装は俺と同じくらいの大きさの戦斧。
そしてその疑問の答えはイエス。だって魔力量の変化を聞かれると答えるの面倒くさそうだし。ここは素直にその異常な魔力量の人は俺ではないと言った方がいいだろう。
「っち。アナスタシアの言ってた魔力量なら何とかなると思っていたんだがな」
「仕方がないわ。まぁ彼でも戦力にはなるでしょうし」
俺には毒をわざと吐いているようにしか聞こえないんですけど。なに?挑発?
取り敢えず怒りさんと同じキャラになるつもりなないので自分を落ち着かせる。するとだんだん俺を仲間にしようとしていた理由が分かるようになってきた。異常な魔力を持つ冒険者を仲間に入れてここを攻略しようとしていた、ってことか。
あのミミックをあんなの呼ばわりする奴らでも攻略困難な層を俺達で攻略できるかと言われれば無理だ。だとすればこいつらに取り言って寄生するのが最善手か。
「あ!そうだ、腕大丈夫!?」
「腕?」
「あ、いや、ちょっと腕を強く引っ張り過ぎちゃったみたいで・・・」
あ、バカこのクソイケメン。
「おいおいマジかよ。雑魚じゃねえか。こんなん使いもんになんねぇだろ」
クソのせいで弱いと判断されてパーティに入れてもらえそうになくなった。遊んでた俺も悪いんだけどさ、タイミング悪すぎるだろ。
だけどこのまま去るという選択肢はない。この階層の難易度が予想以上だったと分かった今、一人で行くのはあまり賢い選択ではない。
どうしようかとしばらく考えていたら予想だにしないところから助け船が来た。
「その子達が物理面がそう強くないことくらい別に大した問題じゃないじゃない。要は強いかどうかでしょ?一応魔力量は昨日のやつよりは低いけどここの中で上位に入るくらい多いわよ。試してみたら?」
今まで無言を貫いてきた二人組の片割れ、紅く燃えるような髪色をした女性だ。
ひそかに彼女も観察していた。なぜならこちらをじっと見ているからだ。自意識過剰ではない。それに彼女は俺を見ていたわけではない。
“その子達”、間違いなくそう言った。この場合の達とは三十層にいた誰かではなく、パルの事だろう。そしてパルもその女性の方を見ている。正確には女性の方ではないだろうが。
『ナギ、精霊よ。属性は火』
やはり、か。どうでもいいけど俺火の適正無いのか。少し憧れあったんだけどな。
話逸れたけど相手に精霊がいるならソラのことも分かるかもしれないな。精霊同士は適性が無くても見る事ができるそうだし。
『ソラ、あまり見られないようにしてくれ』
ソラが空間属性の精霊だと分かるのはまだいい。属性として認識されている以上、居てもおかしくない。まあ、なぜ毒のダンジョンに空間属性の精霊がいるのかと言われたら何とも言えないけど、俺と契約しているのがばれるのは不味い。
そんな珍しい情報が王国にいかないわけがない。で、俺の正体がばれればまた牢獄行き。別に前までならそれでもよかったのだけど、魔法学園に行きたい今はそんなところに行っている暇はないんだよ。
そう考えると確かに意外だが、契約しているのか探るためにも戦闘させてみるというのは理にかなっていると言えるのだろうな。
さて空間魔法を使わずに勝利ね。どうせ攻撃系の魔法は【空間湾曲】しかないし大丈夫、かな?
都合よすぎますかね?・・・・・まぁ大丈夫でしょう。ご都合主義と言う奴ですよ。多分。




