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62 ペロペロしたくなる

取り敢えず【解体】を使うためにミミックの死体に目を向ける。白目をむいて死んでいるミミックを見てあることを思いついた。


「もしかして目玉にこの容姿って映るんじゃない?」


死体だからどうなるか知らないけど他人の目を見た時、よく見るとガラスみたいに自分の顔が映ったりする。色は分からないがこの際どうでもいい。

それにはまず、黒目を向かせる必要があるか・・・。


「よし、くり貫こう」

『あなたは遠慮って言葉をよく知った方がいいと思うわ』

「敗者に遠慮とかする必要なくない?」


というわけでくり()く作業に入りましょう。【同一化】の制限時間が迫っているしね。

まず、目玉を傷つけるわけにはいかないので素手でもぎ取るのは出来ない。【血液支配】をつかって目玉を包み、取手も作る。


剣の柄の様な取手を掴み、一気に引き抜く。ブチッブチッと神経か何かが切れるような音を立てて、血に包まれた生気が失われた目玉が顔を離れる。


目玉の抜かれた顔には絶えることなく赤黒い涙が流れ続けている。


それを無視して黒目のある所の血を気化させ、顔をのぞかせる。


「・・・!」


言葉を失った。こういう陳腐な言葉でしか表現できないがとても綺麗だったのだ。


優しさを思わせるとろんとしたたれ目。唖然と開かれた小さな唇は下品ではなく、むしろ上品にすら見える。全てのパーツが完璧に、かつ超バランスでつけられた顔は間違いなく美少女だった。


傍から見たら返り血を浴びた美少女がくり貫いた目玉をじっと見つめているという、文にしたらとんでもなくカオスな事になっているが。


「触手に弄ばれてるところ見たかった」

『もっと別の感想あるでしょうが!』

「そうだ。鏡なんて気の利いたものないし、ケータイすらないからそんなの見れないじゃん!!第三者の位置から見たかった!」

『今更!?可愛いとか色々あるでしょーが!?』

「思わずペロペロしたくなる位可愛い!」

『キモいわね!?いちいちあんたは一言多いのよ!!』

『マスター、パルちゃんで遊ぶのはそれくらいにしてあげてくださいね?』


【鑑定】(かんていさん)からのストップがかかったのでこれくらいにしておこう。【同一化】が終わったらちゃんとソラには可愛かったと言わないとな。


【解体】を始める。硬くて外殻は切れないから触手と宝箱の中を切っていく。

触手は生え際から切断し、中は外殻に沿って切り離していく。


『マスター、あれ!』


宝箱の中を切っていたら、何かが光を反射した。気を抜いていたら分からない位だったけど【鑑定】(かんていさん)が俺の視覚を通して見てくれていたおかげで分かった。


流石【鑑定】(かんていさん)。更にそれを【鑑定】してくれていた。


『防具ですよマスター!シルドアームですって』


嬉しい誤算とはこの事だな。アームに小さな盾がくっついているような形の小手で、なんと【盾術(弱)】のスキルも使う事ができる。


なかなか嬉しいんだけど何で体内にあるんだよ。あれか?魚の骨が喉に引っかかった感じなのか?


俺の言いたい事が分かったのか【鑑定】(かんていさん)が答える。


『おそらく体内で精製されたんでしょうね。種族に宝箱とかありましたし』

「あれ【偽装】で誤魔化してたんじゃないんだな・・・」


まいいよ。戦力増加はありがたいし貰っとこう。


解体した触手を【異空間収納】に入れていく。二本分くらいが吸い込まれたところで入らなくなった。


「あれ?」

満杯(まんぱい)になったんじゃない?』

「これ限界あったんだ・・・」


確かに無限に収納可能な四次元ポケットとか反則だもんね。よくよく考えれば二層分の毒沼毒海全部収納したからよくこれだけ入ったというべきだろうね。


でも触手(これ)どうするよ?ボディの方は防具を作るのに役立ちそうだから収納したいし、かと言って毒沼毒海ここで解放したら次挑戦する人の迷惑になるし、何よりそんなことしたら最悪俺死ぬし。

ここに置いていくというのも手だけど勿体無いような気がする。こんなもの捨てるのにも勿体無いと思うあたり俺は生粋の日本人だなと思う。


食うか?いや、生肉だし・・・。今まで食べてたくせにとか思うけどダーさんが焼いた肉を食って、やっぱり生肉はダメだなと思うようになったわけだよ。

一層まで戻る?ないな。いっそダンジョンから出る?幸いここに転移陣あるし。・・・それこそないな。そんなことバレたらシエラが黙っていないだろう。まだ俺は死にたくない。


『てか触手なんかそこまでして料理する必要ないじゃん』


ぐうの音も出ない正論。そう思うとこの肉塊の存在意義がなくなってくるな。美少女に絡まない触手なんてそれだけで存在意義が小さいのに。


思えばもし持ち帰る事ができて換金したとして、誰が触手の輪切りなんて買うものか。凄いうまいならいるだろうが、ここの魔物は総じて不味い。これもその例に漏れないだろう。


金にならない肉塊。なんだゴミか。ゴミにまで勿体無いという気はないので、捨て一択で。


直後気怠い感覚と共に重力のかかるバランスが変わる。急だったこともあり、バランスを崩して後ろに倒れる。


ゴッ


「うっ」


石の床にぶつけた頭の痛さに顔をしかめるが、起き上がることも、頭をさする事もしないでただただ上を見上げる。


「ちょっ!ナギ!?」

「だいじょーぶ?」


一向に起き上がろうとしない俺を心配したのかパルとソラが俺から出て来て顔を覗き込んでくる。


ソラがいるという事は【同一化】が解けたという事か。このけだるさはその代償かもしれないな。


「少し寝る」


短めに用件だけを伝えて言葉通りに目を閉じる。


パルが「ちょっと待ちなさいよ!」とか言っていたが俺が目をつむったまま動こうとしないのを見ると諦めたのか、もしくは俺が生きている事が分かってもう何も言わなくていいだろうと判断したのか、それきり何も聞こえなくなった。


お腹あたりに何か乗った感じが、したが確認するのも面倒くさくなってそのまま寝た。





すがすがしい気持ちと共に目が覚めた。こんなに寝たのはいつぶりだろうか。少なくともこの世界に来てからこんなに寝たことはないというくらい寝た気がする。


【鑑定】(かんていさん)に聞いたら丸一日くらい寝てたそうな。

この世界どころか前の世界でもそんなに寝てたことなかったわ。


【睡眠耐性】無かったらもっと寝てたのだろうね。いやーアブナイアブナイ。


それはそうと、起きてからあの気怠さについて色々と考えてみたんだけど、原因は魔力の使い過ぎという何ともしょうもないものだった。


今までも魔力の使い過ぎ、というより使い切ったりもしていた。けど今回のはそんなレベルではなかったんだよ。


ブラットフェアリーに変化した俺は【魔力増大】で魔力が増えたのを良い事に魔法を使いまくった。そして変化が解けて【魔力増大】が無くなったら?本来の魔力の限界を超えて使われた体は魔力をためるため本人の意思は関係なく休憩を取ろうとする。それがあの気怠さだったというわけだ。


魔力が少し溜まってギリギリ活動できる状態になったけど前回には程遠い。なので今は常時発動していた【空間把握】を切って【精霊使い】の効果で回復させている所だ。


生き血ではないから効果は薄いがないよりはましだろという事で【悪魔吸血】(デビルバンプ)も使っている。


暇潰しに【糸】の技量上げと武器の開発のために糸玉づくりもする。


魔力が十分回復したところで糸玉に最後の仕上げを行う。その糸玉を右腕に巻き付けていく。全部巻き終わると厨二病っぽくなったが、この世界ではあまり変ではないだろうという事でそのままにした。


勿論【偽り】を使うのも忘れない。


後は食料をどうするかだが、丸一日触手の輪切りを放置していたら水分を含んだ干し肉みたいなそんなのになったのでそれを持って行くことにした。


食べるのはお腹が減ってどうしようもないというときにすれば大丈夫だろう。


俺らの攻略速度は異常だ。それはここまでくる道中で理解した。二十一層から三十層までは大体二日。いや、昼寝(と言ったらいいか分からないが)を合わせると三日で攻略できるぐらい。頑張れば飢餓する前に攻略することも可能なはず・・・。


と決まったらすぐ行こう作戦は「取り敢えず立ちふさがるやつはぶっ飛ばす」で。


「わかりやすい~」

「はぁ、能力的に逃げるのが精一杯のくせに。バカ?」

『まぁまぁ。マスターが残念なのは今に始まったことじゃないですし』


どうやら俺の味方はソラだけの様だ。


・・・でも今までだったら確かにDランクに遭ったら血吸って逃げるって言うのにしてただろうに何でそんなこと考えるようになったんだろう?


自分で自分の考えが分からないことに変な違和感を感じながらも三十一層への扉が見えてきたので一度考えを放棄し、扉に力を入れる。


扉の前にいたのは十数人の冒険者。扉が開かれたのに気づいてその視線が俺に集まる。


全員が張り詰めた雰囲気を放っているのを見て【空間把握】使うの忘れてた、と考えてる場合じゃないことを悟った。


ただものではない彼らの気配。三十一層にまで進んだというのにも関わらず扉の前でたたずむ冒険者。


頭の中で冷静に情報を分析して、最悪の事態を想像する。


もしかするとどこかから半吸血鬼(おれ)の情報が洩れて待ち伏せして討伐しようとなったとか・・・。


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