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59 職務放棄

 「せっかく来てやったというのに・・・」


 誰も呼んでないのに来てやったってどういう事でしょうね。


 これが精霊王じゃなければ助けを求めたかもしれないが、こいつに助けを乞うなんて出来れば・・・いや、絶対したくない。


 「やれやれ、わしも嫌われたものじゃのう」


 俺達・・・というか俺の敵意が十分伝わったのかそんなことを言う。


 とっとと追っ払いたいと思っていると、いまだに理性を取り戻していない自称めっちゃ強いミミックさんの触手が精霊王に伸びる。


 「やったって下さいめっちゃ強いミミックさん!」

 「お主は誰を応援しておる。【電磁弾】」


 その触手は精霊王が何気なく放った一撃をくらい、一瞬ブルりと震えてから動かなくなった。いや、触手だけじゃない。ミミックの全身が動かなくなった。


 おそらく麻痺の効果のある魔法だろうが、静止と言っていいほどピクリとも動かない。【麻痺毒吐息】をくらった魔物は動けなくはなっても痙攣はしたままだったのを思い出すとその強さがうかがえる。

 しかも何気なく、言葉と一緒に自然に放った一撃がである。本気で放った場合どれほどの威力となるのか。

 これがこの世界最強の一角、神霊種の力か。


 「調子こいてホントすんませんでした」

 『ちょっと凪!』

 「なんじゃ?こんなものにビビりおったのか?」


 このじじぃ挑発の才能があるな。ウザい。でもここで恨みを買うと大変なことに・・・あ、もう遅いね。恨み買いまくってるわ。じゃ、もういいね。


 「で、何のためにここに?・・・まさか、お前もストーカーなのか?」

 「・・・何のことだ?お前が言ったではないか。美少女はいないかと」


 いや、確かに言ったけども。来たのおっさんじゃん。


 「お主の言いたいことは分かる。勿論儂ではない」


 まさか、美少女を召喚するというのか!?そんなことできるのか?いや、先ほどの魔法も素晴らしいものだった。このお方が召喚魔法を使った日にはもしかしたら・・・


 「是非とも呼んでください!精霊王様!」


 触手に掴まれててうまくできないが、最大限に腰を曲げて懇願する。触手が無かったら九十度以上腰を曲げていただろう。それどころか土下座までしていたかもしれない。


 『凪キモいんだけど』


 明らかに侮蔑のこもったパルの声が聞こえるがそれでもいい。俺はこのお方に一生ついて行くと誓おう。


 「え?いや、召喚するわけでもないのだが・・・」


 精霊王は戸惑いの色を浮かべそう言ってくる。


 「・・・じゃあどうするって言うんですか?」

 「分かりやすい性格しとるのぅ」


 まさか、ファンタジーでありがちな決まった姿を持たない存在で、どんな姿にでもなれるとかそんなのか?うっわきもっ。


 俺が心の中でそう思ってるのを知るよしも無い精霊王は、髭を撫でながらやれやれと話を続ける。


 「時間も無いので手短に済ませるぞ」


 時間?麻痺の状態が続く時間かね?別に早くする必要なんていらないように見えるけど。


 「もう一回麻痺らせればいいじゃん」


 麻痺が一回しか効かないというわけではないだろうし。【麻痺耐性】がそんなに早く手に入るとは考えられないし。


 「スタンの時間じゃなくての。・・・わしにも仕事があってのぅ。今はそれが嫌で逃げてきたところじゃ」


 まさかの職務放棄かよ。


 「早く用を済ませないと秘書的な奴が追いかけてくるのじゃ」

 『だったら無駄な時間稼ぎなんかしてないでさっさと職場に戻りなさいよ!』

 「少しの間くらい休んでても罰は当たらんと思うのじゃ」


 精霊王の態度的にその秘書とやらは許してくれないんだろうけどな。


 最強種の一つ、神霊種の王ですら言う事を聞かなければいけない相手の方に、興味が出て来た。


 「どうでもいい事で時間を使ってしまったの。ここに来た目的を早々に片付けるとするわい。ほれっ」


 そう言って精霊王は俺に向かって何かを放り投げる。


 体が固定されている状態だったので掴めなかったらどうするつもりだよ、と思ったがそれはすっぽりと俺の手に収まる。ビックリするくらい綺麗に。なに?これも魔法なの?


 精霊王が投げたのはペンダント。ソラを思わせるような水色の宝石がつけられており、神秘的な光を宿している。


 「【鑑定】(かんていさん)

 『了解です

結果:空妖精のペンダント

 妖精の力を宿したペンダント。宝石は妖精の魔力の結晶ともよばれ、水色は空間属性の妖精の魔力が可視化した色。

 一度だけ空間属性の精霊との【同一化】を使う事ができる。』


 なんか知らん単語がいくつかあるんですけど。まず妖精って?


 『一般的に精霊の堕ちた姿と言われています』


 【同一化】は?


 『精霊など、異種族との融合を言います。精霊使いと精霊の同調率が上がった時に覚えるスキルです』


 また知らん単語が出て来たけどそれは後回しにして、精霊と【同一化】の関係性は?精霊の堕ちた姿と関係があるのか?


 『詳しくは分かりませんが、精霊との【同一化】で、種族が妖精になるからだと。精霊の堕落との関係性は分かりません』


 「これを渡す意図が掴めないんだけど」


 一度だけでも【同一化】が使えるようになる。この世界の常識がまだ分からない俺にとってもこれが異常なのが分かる。とんでもない魔道具だ。


 それを譲る事にどう、考えても裏があるようにしか思えない。


 「意図か・・・そうじゃのぅ。お主儂の事が嫌いじゃろう?」

 「そうだな」


 質問を質問で返されたがそれを答えることがその後の言葉につながるのだろうと思い、嫌みも込めて即答してみる。


 「むぅ、面と向かって言われるとむかつくが、まぁ、そう言う事じゃ」

 「いや、どういうことだよ」

 「簡単に言えば点数稼ぎじゃよ」

 「は?」


 何言ってるか全然理解できないんだけど。


 『マスター。マスターの中で精霊王がどんな存在かはまぁ大体想像は出来ますけど、精霊王は基本的に外には厳しく、うちには優しくの精神を持っているのですよ』


 ほう、つまり?


 『契約違反者は例外なく屠りはすれど、契約を守る者、特に精霊に対して優しかったり親密になったりするものに対しては家族同然に接します。精霊王の言葉を要約すると家族に嫌われたままなのは嫌だ、という事でしょう』


 え?精霊王ってそんな奴だったの?ちょっと精霊王に対する認識を上方修正する必要が出て来たな。


 「それに我が眷族と会う機会が欲しかったしの」


 孫に会いたい爺さんかよ。


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