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夕10 実行してしまった

なんか夕編最近ネタが多くなったような気が・・・

この世界に来てなんだか二週間経った。


セフィとの稽古を終えた俺は王宮の浴室で汗を流していた。


魔王に傷つけられた騎士達はもう全員が意識を取り戻している。怪我はまだ完治とはいかないが、明日からは稽古を見てそれぞれにアドバイスをくれるそうだ。


霜月さんはエリオスさんに毎日稽古してもらっていたおかげで大分強くなっている。勿論エリオスさんには敵わないが、普通の騎士なら倒す事はできるだろうと言われていた。


因みにあの後誤解を解くのに何日もかかった。


最初は俺を見つけた瞬間逃げ出して話をすることすらできなかったのだ。


セフィやツグに協力してもらうことも考えた。いや、実行してしまった。その為に更に時間がかかったと言ってもいい。


ツグは霜月さんに見当違いなことを言って更に混乱させていた_____。


「貴方がシモツキさんですね」

「ええ、そうよ。貴方は・・・この前の・・・」

「私の名はツグと言います。主人殿(あるじどの)につけてもらった素晴らしい名です」


(つけてもらった?・・・もしかして夕君!?)


この時、理須奈は夕の部屋で見たものとセフィの言っていたこと、目の前のツグと名乗る少女の言葉から深く読んでいき、ある見当違いな事に思い当たる。


(夕君、奴隷を買って調教を!?)


この世界では勿論、人族の奴隷も存在する。


そして奴隷になる時その者は名前を失う。


この世界の『名前』というのは魂に直接刻まれ、力を実らせるものだ。その為、存在値の低い魔物に『名前』を与えると進化するものもいる。


奴隷の場合は、自分が考えた名前をつけたいという貴族がいる為だが。


生まれて少女と呼べるぐらい育っているのに名前を最近来たばかりの夕につけてもらうとはそう言う事だろうと考えるのは仕方ないといえるだろう。


夕の部屋で裸になっていたのは夕がそう命令したから。セフィの言っていた異空間に生物を入れることのできるスキルは、【奴隷強調】というスキルが存在するので奴隷も、もしかしたら入れることが出来るのだろうと理須奈はそう結論づけた。


他にもツグが夕の事を「主人殿(あるじどの)」と呼ぶのもそう結論づけるのを手伝う要因となった。


「そう。・・・夕君に何かされてないよね?」


霜月理須奈は夕にやましい事をされていないかという意味で聞いたが、ツグはこれを更に勘違いした。


(私と主人殿(あるじどの)の事を聞くという事は、やはりこいつも主人殿(あるじどの)を狙っているという事。ヤキモチを焼いているという事ですね)


「いえ、特には。・・・昨日も二人で荒い息を出しながら汗を流しあっただけですから」


なのでツグはハッタリを言うことにした。


と言っても事実しか言っていないが。


最近、夜は二人で筋トレをしている。ツグは筋トレをしろと言われていないが、自分の強さがどれくらいか分からないわけではない。努力は怠らないようにしている。夕のために。


ツグはその事実を少し誤解しやすいように言っただけだ。嘘を言って主人に怒られるのは彼女も願っていないのだから。


「っ――――!」


そしてやましい事をしていないかという意味で問うた理須奈は当然ツグの狙い通りに誤解し、更に夕から逃げるようになった。





セフィはというと理須奈に誤解を解こうとすら思っていなかった_____。




「シモツキさん、申し訳ないのだけれどシノムラ君と距離を取ってもらえないかしら?」

「どうしたんですか?セフィさん。いきなりそんなことを言うなんて。理由を伺ってもよろしいですか?」

「実はシノムラ君が誰よりも思っている人がいるの。多分相手もシノムラ君の事を思ってる。だから――――」


この時、理須奈はツグと話した後だった。その為この相手の事をツグと解釈してしまっていた。


(なんだ、奴隷じゃなくて恋人として扱うために買ったのね。人権が保証されてるなら別にいいか)


「そう言う事ですか。なら良いですよ勿論」

「ほんと?ありがとう」



そのおかげで夕は理須奈から逃げられるような事は無くなり、元通りの関係になった。


元通りと言ってもこの世界に来る前の関係であって、この世界に来た後の関係ではないので、話したりはするけどそこまで仲が良いわけじゃないみたいな関係だが。


因みにセフィが言っていた相手だが、これはツグの事でも無ければセフィ自身の事でもない。


凪の事である。



時は遡り、凪が攫われた翌日の昼___。


セフィは夕からその目的を聞いていた。そして聞いた彼女が最初に発したのは


「つまり魔王に囚われた凪姫を助けるために勇者シノムラが立ち向かうという事だね!」


何処をどう勘違いしたら凪が姫になるのやら。


夕はそう考えるが、実際夕の説明は言葉足らずで、セフィにそう思わせる要因になったのだ。


まず、凪の性別を言うのを忘れていた。


夕の友達は男しかいない。女子とも話はするが友達と言えるかどうかと言われると言えないに入る。その為、自分の親友と言えば男だと思うだろうと、あって間もないというのにセフィなら分かると何の根拠もなく思ってしまったのだ。


そしてセフィの思考にも原因はある。実はセフィ、その行動や発言からそうとは思えないが以外にも乙女チックなのだ。


日本の少女たちが好みそうなシンデレラや白雪姫など前野勇者たちが伝えたそういう物語は全て読破している。勿論、魔王にさらわれた姫を勇者が助けるような話はこの世界では実際にそういったモデルがいる為、当たり前に普及しているので尚更。


更に、この世界では【勇者召喚】や【同族召喚】などがあるように異世界召喚が存在し、異世界人が思いの外いるというのも大きい。


セフィは何年か前に『ナギ』という異世界人と会ったことがある。その『ナギ』が女だったことから夕達の世界の『ナギ』という名前の人物は女だと考えたのだ。


案外乙女脳なセフィがそんな美味しいシチュを見逃すわけがないのである。


当然夕が凪は男だと言えばいいだけの話なのだが、夕はこの凪姫発言をおかしいとは思うものの「いつものおふざけか」と訂正をしなかった。


それで張り切ったセフィの稽古は当初よりきつくなり、結果的に夕も相当強くなれたのだが。

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