37 諦めて良い?
戦闘が始まり、数分が経過した。たった数分。
それなのに俺の魔力は尽き始めてきた。
ソラの【異空間収納】に俺の【毒弾】を二重で発動しているのだ。当然の結果といえる。
「逃げ回るの疲れたから諦めて良い?」
「いいわけないじゃないの。逃げ回るの疲れたなら突っ込めばいい話じゃない」
それはもろに【毒霧】くらえってことですよね。最悪死にますよ。
毒の精霊であるあなたなら大丈夫でしょうけど。
疲れたのは本当だけどこれ以上魔力を使うのは得策ではない。
『ソラ、次のが終わったら取り敢えず待機』
『わかった』
と言ったのもつかの間【毒霧】が放たれたのでソラが【異空間収納】で吸収する。
これでソラには頼れなくなった。
この時、双頭毒蛇が【毒霧】しか使わないのに俺は違和感を全く覚えなかった。
足がぐいぐいと引っ張られる。
「パル邪魔だ。やめろ」
「はぁ?何言ってるのよ」
と不機嫌そうなパルの声が耳元で聞こえた。パルはさっきから肩に乗っかっている。
じゃ、足を引っ張ったのは?
俺の足に何か巻き付いていた。
わー見た事あるこれ。双頭毒蛇の尻尾だ。
・・・あ、ヤバいわこれ。
物凄い筋力で足が尻尾に引っ張られ、片足が引っ張られたことによりバランスを崩していともたやすく双頭毒蛇の前まで連れてこられる。
転んだ際にパルを振り落としたが、それより自分の身を心配するべきだな。
今の俺は宙吊り状態である。
目の前には左頭。いや、逆さでそう見えるだけだから右頭かな。
まさかのゼロ距離【毒霧】ですか。
ソラに今から【異空間収納】をやってもらう事はできない。詠唱してないだろうからな。
右頭の口が開き、【毒霧】が放射される。
やばっ。
だが【毒霧】が俺にかかることはなかった。
かかる寸前に空間に歪が生まれて吸い込んだからだ。
『ソラがやってくれたの?』
『やってない』
じゃあエイリャ達?
でもソラが見えてなかったし、空間属性に適していない者が空間魔法は使えないはず。
『パルか?』
『私じゃないわ。私に空間魔法なんて使えるわけがないじゃないの』
じゃ、誰が?
『あんたって可能性はないの?』
『詠唱唱えてないし』
『詠唱が必ず必要というわけではないでしょ?』
確かにそうだ。詠唱に頼らず、直接魔術式を構築すれば無詠唱でもできる。
だがそんなの練習無しにすぐ発動なんて出来るわけがない。
『無我夢中でやってたら何とかなったとか』
ありえ・・・ないとは言い切れないですね。一番可能性としては高いし。
と脳内で時間があまり経たないとはいえ、戦闘中に油断していた。
「ってうわ!」
【毒霧】を使うのを諦めた双頭毒蛇が俺を壁に叩きつける。
ゴッという鈍い音が響く。
ぐはっと吐いたつばの中に血が混じっている。
双頭毒蛇はそれだけで終わらせず、さらに壁に引きずり始める。
俺が通った後には血痕が付く。
背中からも血が出てきた証拠だ。
半周くらい引きずってようやく止まる。
ダメージを受けずぎて動く気になれない。どうせ掴まれてるし。
身動きしない俺に今度は左頭が近ずく。
【毒霧】か?
と思うと同時にそれが放たれる。
【毒霧】とは違う、黄色を混ぜたような霧。
それが俺を包み込むと、一瞬何かが体の中を駆け巡るかのような感覚が襲ったのだった。




