32 乙女チックなのな
「私に何か用でしょうか?」
「主が本当にソレでいいのか聞きたくて」
精霊王がソレと言ってきたときエイリャの方を向いた気がした。
この場合のソレは『エイリャと契約する事』ではなく『エイリャ自身』を指すのだろう。
そのことが分かると少しイラっとした。
「もう一度問おう。本当にソレで良いのか?」
イライラが溜まってくる。殴りたい。無理だろうけど。
「わ、私・・・は・・・」
毒の精霊は自分のことにいっぱいいっぱいだからその事に気づいていないんだろうな。
「・・・凪。聞いて」
毒の精霊が真剣な眼差しで見てくる。
この場合精霊王に何か言うんじゃないの?
「私がね、エイリャが契約しようと言うのを断ったのはね凪と契約したかったから。凪じゃないと嫌だから。凪と・・・ずっと一緒にいたかったからなの!!」
心の底から嬉しさがこみ上げてくる。
今までこんなに好かれたことなんてなかったから。
それがなくてもこれからも毒の精霊と冒険していたいと思っていたからどちらにしろ嬉しかっただろうが。
すぐに名前をつけてやりたかったがその前に別の言葉が放たれた。
「我らからも頼もう。こやつと契約してはくれぬだろうか。精霊と契約するという事はそなたにとっても強くなると言うメリットがあるぞ」
プッツンと俺の中の何かが切れる音がした。
「お前の頼み、聞くことは出来ねぇな」
「何だと?」
あー。毒の精霊そんな悲しそうな顔をしないでくれよ。別にお前を振ったわけじゃないからさ。
こいつは腐っても神霊種。世界最強の一角。そんなのに何喧嘩売ってんだとしか言いようがないが、もうどうでもよくなった。
「お前の言い方が気に食わないんだよ」
「そうか。上から目線が気に食わなかったのであろう。だが我も王と言う身。軽々しく接するということは出来ないのだ。許してはくれぬか?」
「お前は馬鹿か。そんなことで怒ってんじゃねぇ!自分で言ったことを思い出してみろよ」
「何を―———」
「分かんねぇのか。じゃ教えてやるから耳の穴こっぽじってよく聞けよ。お前は『精霊と契約する事にはメリットがあるぞ』って言ったんだ。それは毒の精霊を道具としか思っていないって事じゃないのか!?」
こいつが言っているのは自分が儲ける事しか考えていない鍛冶屋が『これを使えば竜も倒せますよ』と言っているのと同じだ。」
勿論凄い鍛冶職人はそんなことは言わないが。
エイリャの事も毒の精霊の事も道具としてしか思っていない。
「百歩譲ってエイリャは人間だし道具扱いしても構わない」
「酷くない!?」
「でもお前は精霊王だろう。王が守らなければならない精霊たちを、道具とは思ってはいけないはずだ」
それを考えるとエル・ウエストは人族のために俺を幽閉したのだから正しかったと言えるだろう。人族からしたらだけど。
精霊王はというと青筋を立てている。
やっぱり怒っているのだろうな。
「主の言う事は正しいのだろう」
あら?随分と物分かりがいい事で。
「我は帰るとする。このままでは怒りのままに主を殺すだろうからな」
怖いな。
「また来る」
「二度とくんな」
最後にハハハッと笑いながら魔法陣に消えていった。
あの人怒ってたんだよな?
「凪・・・」
毒の精霊が声を掛けてきた。
「やっぱりダメなのね」
「契約だろ?別にいいよ」
「へ?」
勘違いしそうな言い方してたから仕方ないか。
「でもさっきお前の頼みは聞けないって」
「あれはあのおっさんのことで、毒の精霊がそう頼むなら構わない」
「あぁ、勘違いしてたわけね。じゃ何でこの前無理って言ったの?」
「お前あの時おっさんと同じで俺のこと道具としか見てなったじゃん」
会ったばかりなのに契約の話を持ち掛けるという事は俺のことを道具としか思ってなかったという事だろう。
「でも今は違うだろう?」
「・・・そうだけど」
「あんな熱烈な告白までしてくれたもんね」
「告白!?そんなのしてないわよ!捏造しないで」
「じゃあ聞いてみよう。『あなたがいい。あなたと一緒にいたい』これ告白だと思う人手をあげて」
手を挙げたのは三人。ソラ、エイリャ、ダーさん。三分の三の人が手を挙げました。もう決まりだね。
「俺もその・・・そう思ってるしな。告白で決まりだ」
とダーさんがエイリャをチラチラ見ながらそう言う。
よく分かっていないダーさんがそう言うなら間違いないだろう。
てかダーさんって意外と乙女チックなのな。
「私はあんたみたいな雄豚なんて好きじゃないわよ」
毒舌さんがツンデレ化した件について。
「俺、女だけどな」
「そうだったの!?でも俺って言ってるじゃない」
「知らないのか?オレっ娘って言う一人称が俺の女性もいるんだぞ」
「そうなの。じゃ雌豚かしら?」
「まぁ。俺は男だけどな」
「死ね!」
やっぱりこいつといると楽しいな。
「でも死んだら契約できないぞ」
「そうだった。・・・名前、くれる?」
そんな風に言うなよ。しおらしいの得意じゃないんだから。
「あぁ。つけてやるよ。実はもう決めてあったんだ」
「もう?なんだつけてくれる気満々だったんじゃない」
「じゃつけるぞ。お前の名前は――――『パル』だ」




