31 せいれいおう!
~毒の精霊目線~
なんなの!凪ってば。
少しくらい分かって欲しかったのに・・・。気づいてほしかったのに。
気がついたら涙がぽろぽろ零れてくる。
凪の事を考えれば考えるほど感情が大きくなっていく。
もうこんな事になるなら、変に意地はってないで素直に言えば良かったんだ。
”私は凪と契約したい”って。
でもやっぱり駄目なんだろうなぁ。最初に会った時にそうだったんだもんね・・・。
そう思うとさらに涙が大きくなり、嗚咽が漏れる。
「どうしたの!?」
エイリャの声が聞こえた。
次々出てくる涙も心の底から吐き出す嗚咽も何とか気合でぐっと堪え、せき止める。
見られなくなかったから。
「エイリャ・・・丁度良かったわ。私、決めたから」
「決めたって何?って、それより目赤いよ!どうしたの?」
「それはいいのよ。エイリャ、聞いて頂戴」
このままだと他の事に気を取られて聞いてくれないと思い、真剣にそう言う。
するとエイリャも分かってくれたのか真面目に聞く姿勢になった。
「私、エイリャと契約するって」
それを聞いたエイリャの顔は驚愕。てっきり喜ぶのかと思っていた。
「私でいいの?」
エイリャが諭すように聞いてくる。
エイリャで本当に良いの?しなくて凪は契約してくれる?してくれないんじゃないかな?私じゃ、ソラと同じように素直になんてなれなくて、こんな事になってるんだよ?
なら・・・凪と契約できないんなら、誰だって同じだよ。
「勿論。良いわ」
「そう」
これでいいの、これで、もう・・・。
「じゃあ名前、何にしようかな」
エイリャは楽しそうだ。それと反比例するように私の心は曇って落ちていく。
もうこうするしかないというのに。
「よし決めた!君の名前は――――――――」
突如、私とエイリャの間に虹色の魔方陣が広がる。
強大な魔力と魔方陣の色。こんなことができる人物に、一人だけ心当たりがあった。
魔方陣がさらに広がり、その人物がゆっくり現れる。
白髪で仙人と思わせるような老齢な顔。だがそれには凡人を寄せ付けないような威圧がある。背には全部で12の羽根。
世界最強の種族、神霊種。その王たる精霊王がそこにいた。
~緋月凪目線~
毒の精霊を追っているとすぐに見つける事が出来た。
めっちゃわかりやすい目印がそこにいたからだ。
「せいれいおう!」
ソラがその目印にそんな事を言う。
精霊王。俺が知っている事は最強種である事と、契約違反者を殺すということだけ。
この場に現れたということはエイリャが違反を?
だがそれはあり得ない。
毒の精霊は自らエイリャと契約すると言っていたし、何よりエイリャの中に入っていない。
ソラと契約した時ソラは光の粒子となって俺の中に入った。
毒の精霊がまだいるということは契約していないということだろう。
他に目的があるのか?
「クソッ!精霊王か。エイリャ逃げろ!俺が足止めをする」
ダーさんが精霊王とエイリャの間に入りロングソードを構える。
ダーさんかっこいい。でもこっちから攻撃するのはまずいよな。
「ダーさん待って」
「お前はエイリャをみすみす殺せというのか!?」
「そんなこと言ってない。取り敢えず剣を下ろせ。勝てるわけない」
「うるせぇ!」
近くに行ってダーさんを止めようとしたが無理なようだ。
顔に血が登って周りが見えてないのか?
「名前をつけたのか?」
「つけてない。でも現れたら戦うしかない」
「契約してないのに殺されるわけないだろ。殺すつもりなら俺らはとっくに殺されている。落ち着け」
やっと納得してくれたのかダーさんは剣を下ろす。
次は精霊王だな。
「精霊王に問います。エイリャを殺しに来たわけではないですよね」
「勿論だ」
渋く重みのある声が響く。
「では何用でこんなところに?」
「そこな童に物申したいことがあって来た」
精霊王は毒の精霊を指さしてそう言った。




