17 バット超優秀
「ごはんはどうするの?」
ソラが無邪気に話しかけてくる。
今はダンジョン【アシュタロス】一層にいる。石でできた迷路みたいなところだ。
そしてそこに準備もなくシエラに入れられたわけで食べ物がない。
俺は魔物の血でも飲めば大丈夫だろうがソラはやばい。ただでさえよく食べるのに食料がないとか可哀そうすぎる。
「魔物の肉にするか」
「やたー!」
それでいいらしい。まぁ。ちゃんと調理すれば大丈夫か。
「まものさがしいくー」
と言って俺の肩に乗ってくる。飛ぶのは疲れるからだろう。
「ダンジョンって初めて来るんだが一層目ってどんな魔物が出てくるんだ?」
「んー。じーくらいじゃない?」
じーというのは多分魔物のランクのGだろう。
魔物にもランクというものがある。だいたいその魔物と同じランクの冒険者最低三人で倒すことが出来るのだそうだ。
Gランクの冒険者は非戦闘員なので俺なら一人でも倒せるだろう。
「そうか。・・・おっ、あれ魔物かな」
相手の魔物には気づかれていない。【スキル共有】というスキルを持っており、オリジナル以外の俺のスキルも使うことが出来る。
なのでソラにも【視力強化】で見えているはずだ。
まぁ。それでも若干ぼやけているのだが。
「そだねー。あれはごぶりんかな?みどりいろー」
ソラの言う通り視界に映っているのは緑色をしている。
ゴブリンなら勝てるだろう。と思い、走る。
集団で来られたら厄介だが、見たところ一匹。十分勝てる。
と、思っていたがゴブリンからでも見えるくらいのところまで行って、それがただのゴブリンでないことに気づく。
ゴブリンと言ったら小さな鬼を思い浮かべる。漫画とかでは子鬼族だったしな。
だがそのゴブリンは俺の身長を超える。明らかにゴブリンより一段階上の存在。
「ほぶごぶりんだった」
ソラがそんなこと言うが清く俺は引き返す。
「なんでたたかわないの?」
理由は二つある。一つ目はホブゴブリンはFランクと言う事だ。戦うにしてもGランクの魔物で慣れてからするべきだと思ったから。
そしてもう一つはあのホブゴブリンの持ち物にある。
「あいつの剣見てみ」
ホブゴブリンは俺達を追いかけている。右手には剣。
そしてソラがその剣を見た時丁度剣から液体が滴り落ち、地面につく。
シュウゥゥゥ
「!?」
その液体が落ちた地面が溶けた。
おそらく酸とかだろう。
そしてソラはそれにパニクる。余程パニクったのか念話になっている。まぁそっちの方が楽だしな。
『ななななにあれ?え?え?え?』
あんなもん喰らったら溶けて死ぬだろうよ。
「というわけで逃げる。ソラは【鑑定】よろしく」
『わかった』
【鑑定】は【スキル共有】で、使うとソラだけではなく俺にも結果が見れるようになる。
『鑑定結果:魔物』
『みればわかるよ!?』
まぁ、技量あげてないしこんなもんか。
『やばいソラ』
『なに?』
『もうちょいで行き止まり』
『うそ!?』
マジなんですなこれが。しゃーない。先頭に移りますか。
足を止めて振り返る。ホブゴブリンはというと走った勢いのまま剣を振りかぶってきた。
「【血液凝固】刀」
その言葉と共に親指を噛む。自分の口の中に甘い香りが広がる。
その親指を前に出すと血液がおそらく日本刀だろう形になっていく。
・・・しょうがないじゃん。【鑑定】と同じく技量あんまないんだから。
真上から迫る剣をそれで受け止める。ガキンという鈍い音とシュゥという音が重なる。
・・・シュゥ?
『なぎ!とけてる!』
ソラの言う通り俺の日本刀モドキはホブゴブリンの剣に浸食されていく。
『あれ?血って溶けるの?』
『しらないよ』
『そうか分かったぞ。俺が今まで考えていたことだが、【血液凝固】というのは科学でいう状態変化を利用しているんじゃないか?通常液体が固体になるには分子と分子がくっつく必要がある。冷却させる事で分子と分子の隙間を無くして固体にするのが科学だと習ったような気がする。だが【血液凝固】は分子と分子を魔力で無理やりくっつけてるんじゃないかと思うのだがどうだろう。そしてあの刀には魔力を消す、または吸収する働きがあるのではないか?だとしたら説明が』
『ながいよ!あぁ!もうすぐでぶきがおれる!』
ソラはそう言うがこの言葉は全て脳内で行われている。なので時間はあまりかからない。因みに攻撃を受けてからここまでにかかった時間は一秒にもなっていない。
それでもソラは心配なようだし、いつまでも余裕ぶっこいていられないからそろそろ反撃しますか。
「【血液凝固】小太刀」
まだ親指は出血しているので問題なく発動できる。
血は小太刀の形になり、左手に収まる。それでホブゴブリンの左胸を狙って突き出す。
小太刀は胸に吸い込まれるように突き刺さ・・・らなかった。
小太刀は刺さることなくホブゴブリンを突く。俺の筋力があまりないため威力もそこまでないが、胸を突かれたホブゴブリンはバランスを崩し後退する。
『え?なんでささらなかったの?』
そうソラが言ってくるが原因はだいたい予想がついている。それは【血液凝固】の技量が低い事。
【血液凝固】の技量が上がることで造形の精密さが上がる。俺の技量はあまり使っていないので最初と変わらない。
思うに刃筋などの鋭さも造形の精密さに含まれているのではなかろうか。そう考えると技量の少ない俺が貫く刀を作れない事の説明がつく。
バットにすればよかったかな。
ソラにその考えを言うと納得された。
と、そんな事をやっている間にホブゴブリンが体勢を立て直し、また向かってきた。
さて、理由も分かったし違う戦法も使ってみますかな。
ホブゴブリンの剣の振りに合わせてスキルを発動させる。
【蝙蝠化】
ホブゴブリンの攻撃は霧を切る。
前にシエラがやっていたことだ。
だが、これは簡単そうに見えて難しかった。
まず、剣の振りが自分に当たるすれすれの時にやらないと相手に気づかれ構え直されてしまう。
次に初速の速さ。ゼロからマックスまで一気に上げないと相手の反応の方が若干早くなる。
そして変身速度。
どれも俺にはない技術だ。だが知能の低い魔物であるため対応されずに後ろに回ることが出来た。
後ろから乗りかかり、地面に倒す。腕は動かれると邪魔なので両腕でしっかりと固定する。
そしてそのまま首にかぶりつく。
カプッ
噛んでいるため何色かは分からないがおそらく赤ではないだろう。シエラとは全然違う味。てか美味しくない。むしろ不味い。
〈【悪魔吸血】並びに【超幸運】の使用を確認〉
〈スキルの獲得・・・成功しました〉
〈スキル【毒刃】の劣化スキル【弱毒刃】を獲得しました〉
おぉ。やっぱり魔物でも獲得出来るんだ。
てかここ毒属性のダンジョンだったのな。
・・・とりあえずこれ邪魔だから撲殺でもしようかな。
結果。バット超優秀。
そして【弱毒刃】の効果はこんな感じだ。
【弱毒刃】自分の武器に毒属性を付与。付与できる毒は技量により増やすことが出来る。
毒【弱酸】
酸て毒だったの?まぁ。それはいい。異世界ではそういう定義が違うかもしれないし。
そして肝心の【弱毒刃】だが一見使えそうに見える。
だが、俺とは相性が悪いようだった。
俺の武器は【血液凝固】で作るんだが、先ほど作った小太刀に使ってみたところ変化なし。
どうやら【血液凝固】で作った武器は血液として扱われるため【弱毒刃】の範囲外らしい。
全く使えない。




