夕1 俺の知らないところで
ここで夕編です。
ちょくちょく勇者たちの事も書いて行こうと思います。
~篠村夕目線~
目覚めると床に転がっていた。
どうやら寝相が悪かったため、ベットから落ちてしまったらしい。
昨日王から一人一部屋づつ貸してもらったのを思い出す。
部屋にあるものはどれも豪華で、ベットなんかは特にふかふかでとても寝心地がよかった。まぁ、落ちたわけだが。
あいつは今石畳で寝てるんだよな。少し可哀そうだと思ったりしなくもない。早く魔王を倒して開放してやらないとな。
部屋着から着替えて部屋から出る。
大理石の廊下では兵士たちが慌ただしく行き交いが多いような気がする。何かあったのだろうか?
まぁ考えてもどうせ分からんし、飯でも食いに行きますか。
俺はその廊下を歩き、食堂に向かう。
食堂にはもう全員が集合していた。俺で最後だったようだ。
席に座ると隣の霜月さんが声をかけてくれた。
「おはよう、夕君」
「おはよう」
「昨日はよく眠れた?」
「あー、まぁね」
「今まで寝ていたものね」
「お、おう・・・ごめん」
今まで知らなかったが霜月さん、こういうふうに弄ったりしてくることがある。
多分それは凪との約束が関係しているのだと思う。
多分霜月さんは凪が『あいつの面倒みてやってくれよ』と言ったのを勘違いして凪の代わりになろうとしてるんじゃないかな。
しかも俺と凪のやり取りを真似しようとしてそれが絡まって毒舌キャラに、みたいな。
あり得る。
俺と凪がいつも一緒に居るのを見てこうやって隣の席に座ってくれるのは嬉しい。緊張してしまうが、凪の代わりをやってくれていることで一番嬉しかったのはこれだ。
そうこうしている間に俺の前にも料理が並ぶ。
この世界では「いただきます」は言わないが皆気分でそう言ってから食べ始める。
白の料理は美味しいが、たまには日本食が食べたいと思うのは贅沢だろうか。
食べ始めて少しすると食堂に王がやって来た。
その所作一つ一つが洗練されており、その人が王であると訴えてくる。
「勇者達よ、お主らに言わなければならぬことがある。昨夜、魔王が城に侵入した」
瞬間、皆に緊張が走る。当然だ。俺らが倒さなければならない魔王が、寝ている間にやって来たのだから。
このタイミングでやって来ると言う事は狙いは勇者か?
皆、クラスの人達は周りに皆いるか確認し始める。
が、居なくなっているものが居ないことが分かり直ぐに王の方を向く。
「昨晩、中庭を見張っていた兵士が魔王を確認。騎士団を向かわせたが一人残らず全滅させられていた」
騎士団は強い。昨日模擬線をやったが、その長年の嫌疑で誰一人勝つことを許さなかった。今の俺達じゃ勝てないってことだ。
その騎士団を魔王は壊滅させたという。俺達なんかで勝てるのか?皆そう思っていることだろう。
「騎士団のけがは?」
霜月さんが王にそう問う。
「怪我は浅い。だが出血量が多くてのう。まだ気を失ったままじゃ。
「魔王の狙いは何だったのでしょう?僕たちは今のところ何もありません。勇者が狙いではないと言う事でしょうか?」
弘斗がそんな事を言う。
「それなのじゃがな、その・・・牢屋に入った痕跡があってのう」
「まさか緋月君が!?」
よほど驚いたのか霜月さんが勢いよく席を立つ。椅子が転げそうになったので支える。
「その通りじゃ。鉄格子はすでに壊されており、中には誰もいなかった」
「そんな・・・」
「今回の事で魔王と戦う気が無くなった者もおるじゃろう。そういうものは辞退してくれて構わん。稽古は予定通りに行う。まだ続けるというものだけ参加してくれ」
王はそう言い残して食堂から出て行く。
「魔王討伐、やめたいやつはいるか?」
転生者以外居なくなったところで弘斗が聞く。
するとぽつぽつと手を上げるものが出始める。
一方でかたくなに手を上げようとしない者もいる。俺や霜月さんや弘斗など。
俺は魔王討伐はどうでもいいが最悪でも凪は助け出す。ただそれしかいい方法が無い気がするのも確かだ。
例えば、魔王領に侵入して凪を助け出すという案。それだけを目指せば出来なくもないような気がするが、魔王がまた凪を攫う可能性もある。結果、魔王を倒さないと安心できない。
「俺は魔王討伐するべきだと思う。正直怖い。だが俺らは全員エクストラル以上のスキルを持っている。ここの兵たちは強くてもスキルの面では俺たちに軍配が上がる。なら、俺たちがやらなければいけないんじゃないか?」
スキルの面では俺たちに軍配が上がる。それは弘斗の言う通りだ。
【身体強化】や【五感強化】などの強化系は比較的獲得しやすいが、この世界ではエクストラルスキルはなかなか手に入らないスキルなのだ。それ故とても強い。
さらにこのクラスにはオリジナルスキル持ちもいる。技量を上げれば下手な軍隊になら余裕で勝てるくらいの力がある。
ちなみに俺のスキルカードはこんな感じだ。
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シノムラ ユウ (篠村 夕)
種族 人族
スキル
オリジナル
【竜種召喚】
エクストラル
【騎竜】
ノーマル
【視覚共有】【勘】【竜種鑑定】
スペル
【火属性魔法】
称号 勇者の連れ、竜騎士
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竜種というのはこの世界最強の種族の一つの龍種の一歩手前だ。
うん、強そう。
俺だけではなくみんなこんな感じなんだろう。だから勝てる可能性はゼロではないと考えているのだ。
「それに緋月も助けないといけないしな」
うまい。
そんな事を言われたらやらないわけにはいかない。もしやらなかったら『仲間を見捨てる』という行為をしたことになりクラスの中で孤立する。
こいつはそれを見越したうえでわざと言ったんだろうな。
それが本心から言っているのならまだいい。だが、まずこいつは凪を助けたいなんて思っていない。
凪はあまり積極的に人と接していない。あいつは多分学校では俺以外と話してないんじゃないかな。
対して仲のいいわけでもない奴を命をかけてまで助けたいと思うか?
よほどのお人よしなら助けるだろうが、あいつはそんなんじゃない。それに俺はあいつが陰で凪のことを悪く言っているのを知っている。
つまりあいつは凪を利用したのだ。
周りの奴らは「確かに」とか「心配だもんね」とか言っているがこいつらも本当に凪を助けたいと思っているか疑わしい。
昨日仲良くなった霜月さんや、基本的クラス皆と仲良くやる沙菜などは助けたいと思っているだろうが。
二階堂は分からん。よく授業をさぼったりする凪の事は嫌いなのかとも思うが、以前凪は二階堂に対して『夕の次に仲良くなりたい』と言っていた。
なんだかんだ言って仲良しなのだろうか?でも学校では一緒に居るとこ見たことないんだよな。
まさか・・・俺の知らないところで会っているとか?
あー、やめだやめ。どうせ答えなんてわからんがだし。
取り敢えず俺はそんな事を言う弘斗達とは出来るだけ行動したくないし、する時間も惜しい。
この城である程度学んだらさっさと出て凪を取り返しに行く。




