11グリグリ
俺たちはウエスタリア王国から抜け出した。
兵士たちは片付けたし、夜という事もあって抜け出すのは簡単だった。
その後は森の中にある整備された道ををひたすら歩く。
「こんなことをしなくてももっと早く着く方法があるのになー」
シエラがそんな事を言い始めた。
「どうせ【蝙蝠化】だろ?」
【蝙蝠化】自分の身体を蝙蝠に変身させることが出来る。変身時、攻撃力と防御力低下。素早さ上昇。
これを使えば確かに早く着くだろう。だが、
「俺まだスキル使ったことないからやり方分からん」
そう。この世界に来て修行だと思ったら幽閉されて、一日もたたないうちに脱獄して今の状態だからスキルは使っていない。
いや、正確に言えば使ったことはある。【吸血】とか【超幸運】とか。だが【吸血】は血を吸うだけでできたし、【超幸運】なんかはいつの間にか使ってたし。
はっきり言ってその他はどうやって使うか分からない。
「ああ、それでやろうとしないんだね」
「そゆこと」
「じゃあ、どうせなら私がスキルの使い方を教えてあげよっか」
それは正直言ってありがたい。これからスキルというのはたくさん使っていくだろう。なら少しでも早めに覚えて慣れてゆくべきだ。
「いいのか?その分遅れるぞ」
「いいよいいよ。むしろ【蝙蝠化】するなら今より全然早く着くし。それに教える時間が全くないっていうわけじゃないよ」
教える時間ね。その間移動しないって事だろ?そんな時間・・・・・
「ああ。昼間か」
「その通り」
「だけどお前【日光耐性】持ってなかったか?」
【日光耐性】があれば数時間くらいなら日の下で活動できる。ならその時間も移動に使った方がいいと思うが。
「たかが数時間じゃあんま変わんないでしょ。それに昼寝にもあこがれてたんだよね」
あ、はい。さいですか。多分最後の方が本音なんだるうな。
「うわ!ちょうど日が昇って来たよ。さっさと森ん中行こ」
シエラの言う通り朝日が昇り始めていた。シエラは森の中に言ったので俺も諦めて森の中に隠れるように入って行く。
と言う事で講座が始まった。
「じゃあ、今日は【蝙蝠化】をやろう」
ちなみに予定としては今日が【蝙蝠化】をマスターして三日間で帝都に行くらしい。そしてその三日の間に【血液凝固】と【視力強化】をマスターすると。【視力強化】にはそんなに時間はかからないそうだけど【血液凝固】は憶えるのは難しいのだとか。
とりあえず今は【蝙蝠化】の講座に集中する。
「まぁぶっちゃけ、心の中で【蝙蝠化】って呟くだけで出来るんだけどね」
おい。それを早く言え。
とりあえずやってみる。
【蝙蝠化】
瞬間、視界が黒に包まれ、視線の高さが低くなる。
確かシエラが【蝙蝠化】したときは胸の方に現れたんだよな。
だとしたら俺の目は今元の身体の胸だったところあたりにあるのかな?なんか不思議な気分。
黒い霧が晴れ視界が明けてきた。と思ったら重力にひかれるように地に落ちた。
何故?
「あーあ、やっぱりこうなったか」
どういう意味だ?
「蝙蝠になったら自由に飛べると思ってる人とかいるんだけどね。それ本物の蝙蝠みたいにバサバサしないと飛べないから」
ああ。成る程。つまり羽を動かせと。こうかな?
バサバサ
腕を上下に振るような感覚で羽を動かしてみると少し浮いた。
おお。浮いた。
「そうそう。じゃあ、あとは自由に動けるように練習してね」
と言ってシエラは近くの木に寄りかかって寝始めた。
無視して練習した。
そんなこんなで【血液凝固】や【視力強化】も教えてもらいながら移動して三日後無事帝国アストルティア、そのケイネス領というところに着いた。
「大きい」
ウエスタリア王国は急いでて見て回れなかったから比較できないがここは大きい。少なくともそんな感想が自然に出てくるくらいには。
「なぎっち今日はもう疲れたから宿とって寝よ」
隣でシエラがそう言ってきたので頷いておく。
その間周りの店を見ている。
あっ。あのガラス細工面白そ・・・・?
「ねぇシエラっち。あれ何?」
「そんな風に呼ばないでくれる?」
グリグリ
痛い痛い。シエラがこめかみに両拳を押し付けてグリグリしてきた。
自分を棚に置いて何を言ってるんでしょうね。
「で、あれってどれ?」
グリグリしながら聞いてきた。やめてから聞いてほしい。
「どれってあのガラス細工のショウケースの前に居る小人みたいなの」
「え?何も見えないけど・・・・・・まさか精霊?!」
そのショウケースの前には羽の生えた10センチくらいのかわいらしい小人が居た。
7話と9話のルビ振りがうまくできていなかったので修正しました。
ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。




