84 何その禍々しい左手
『【鑑定】出来ません。【鑑定遮断】でも持っているのでしょうが、見た目からして確かに竜種みたいですね』
詳細は見れないのか。それは残念だが、ファンタジー生物が折角登場してくれたんだから見ないてはないね。
「ソラ、パル、ご飯はアレ見ながら空で食べない?」
「いいよー」
「空からの眺めも良さそうね。私もそれでいいわ」
よしっ、言質とった!そうと決まればソラとパルを肩に乗せて跳躍し、民家の上に登る。跳躍力は足りないだろうが、【空間短縮】で屋根上までの距離を短くしたらなんとかなった。
民家の屋根と屋根を次々に乗り越えながら【偽り】で名前なし、種族吸血鬼(濃血種)に変更。更にスキルに固有を増やす。
人族が屋根なんて登っていたら怪しいしね。その点吸血鬼なら不思議に思うものは少ないはず。討伐対象にはなるだろうけど。
その後よく考えて思ったんだけど、住民の皆さんは竜から逃れるために家に閉じこもっているので見られる心配はなかったかもしれない。
城の近くの民家の上に着いたのでそこで胡座をかき、食べ物を出す。城の中で起こっていることもある程度わかるように【空間把握】の範囲を生物に限定して最大まで広げる。
「っくぅ!」
頭痛が襲うが我慢する。範囲内の生物を皿に限定して緩和させた。
竜は丁度城のあたりで停止し、城を中心に旋回している。その城は領主の城らしい。
城内では竜を撃退させるための戦力が編成されていた。が、なんかおかしな行動をしている二人がいる。
恐らく地下道の監視役らしき人や、戦う力のない率夫人みたいな人たちが編成に入っていないのはわかる。
だけどその二人組は戦う戦力がないわけではないだろうに、城を移動しているだけで編成に加わろうとしない。
そして不思議なことにそのまま真っ直ぐ進まず、不自然なところで曲がり角に入ったり、部屋の中に入ったりしている。何回も見ているうちにそれが兵士を避けての行動だということがわかった。
にもかかわらず明らかに見つかるというところで隠れなかったり、自分から見られに行ったりとしている時もある。何がやりたいのかまだ分からなくなった。
編成から何人かが抜けて城内を見回り始めた。恐らくその二人組を見つけるためだろう。ここまでくると流石に竜と二人組がグルだと思えるようになってきたよ。
編成された兵士たちが庭らしきところから出てきた。ようやく竜と戦うらしい。それにしてもそんなところで戦って大丈夫なのだろうか?花とか絶対散るでしょ。
竜に向かって一斉に矢が放たれた。その数は数百に及び、それが降り注ぐ様はなかなかに魅かれるものがある。と言っても竜にとっては大したものではないようで、鱗が矢のことごとくを弾いている。
次に魔法が放たれた。氷の槍、雷の光線、炎の玉などが竜を襲うがそれも全く効いていない。
「どうなってんだありゃ?スキル構成が気になる」
『だから【鑑定遮断】で無理ですって』
分かってるよ。でも見たいんだよ。
「うま〜」
「ナギナギ、これ食べて見なさいよ!美味しいわよ」
ソラたちはまさに花より団子だね。戦闘が花かと聞かれると否定せざるを得ないけど。
折角なので串を一本貰って影に隠れている華織にも食べさせてやる。影から顔だけを出させて串肉を近づける。魔物が食えるか分からなかったけど嬉しそうに触角を揺らしているので大丈夫か。
「あっ!?」
パルうるさい。どうかしたのか?
「ナ、ナギ、その子に食べさせていたらナギは食べられないわよねわ、私が食べさせてあげる」
「いや、左手使えるけど」
「何その禍々しい左手」
普通の手じゃない?
「そんな汚らしい手で食べてたら菌がうつるわよ」
俺の手そんなに汚い?確かにダンジョンの中じゃ手を洗う機会なんてなかったけど・・・あれ?俺の手ってまさかマジで汚い?
「だ、だから私がーー
「はい、あーん!」
「あっ!?」
パルの言葉を遮ってソラが肉串を食べさせてきた。コリコリしている。薄味、っていうか素の味に近い。塩買ってくるんだったかな。
ソラたちは満足していたみたいだしこの世界ではこれが常識なのかもしれない。
「あ・・・あ・・・」
「どうしたんだ?浮気現場を目撃した主婦みたいな顔して」
「どんな顔よ!?」
「そんな顔?」
「そういうことじゃないし、なぜ疑問形!?」
言いたいことが言葉にできなくてう〜う〜どうなっている。今思い出したけど撫でるって約束していたんだっけ。
「な、何よ」
「ん?そういえば約束していたなって」
人差し指でパルの頭をグリグリと乱暴に撫でていると次第にその顔に朱がさして、期限が戻ってきた。
「ふふ〜」
今ではすっかり元どおり。
「ん」
「何?」
パルが今度は手に持った肉串を俺の前に突き出してきた。
「えっ〜と、・・・か、飼い犬に餌をあげるのは主人の義務でしょ?し、仕方がないから食べさせてあげる」
そう言って更に肉串を押し付けてきた。
そのキャラ設定まだ続いていたんですね。久しぶりすぎて忘れていた。それとパルさんや、それは毒舌じゃなくてどっちかっていうとSっぽくないですかね。
そう思ったけどいうのはやめておいた。折角頑張っているんだし、今修正するのも面白くなさそうだし。
俺はパクッと突き出される串に食らいついた。
「うん、美味しくーー
話している途中で鈴のなるうるさい音が響いた。【危機察知】か。
その時、急に背中に衝撃が走った。
【危機察知】の描写を追加しました。




