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83 ドラゴンだよね!

初めての転移は次元を越えるときの浮遊感がアトラクションみたいで面白かった。


でも長いこと薄暗い所にいたせいか地上に戻ってきて早々、目を焼かれて悶えた。【直射日光無効】が仕事してない。


「それ見た後に日向(そっち)行きたくないんだけど」

「くっサリア様、ここは俺を盾にして早くっ!」


こっちの二人は大げさだよね。目くらい慣れればなんともないのに。


『吸血鬼にとって日光は天敵だということ忘れてません?』


おお、そういえば。


「これが地上。・・・やっと出れたのね」


広がる空、活気ある街並みに感動している人が一人。ダンジョン生まれ、ダンジョン育ちの田舎っ子、パルだ。


「なぎ〜あれおいしそ〜」


ソラはソラで屋台に釘付けになっている。


みんな好き勝手しすぎだよね。まぁいいか。

シエラから宿屋に来るように言われてるけどこれが終わってからでいいよね〜。


「じゃ、あとは自由行動ということで。ソラ、パル行こう」

「ちょっと!せっかくの自由行動なのに動けないってどういうことなの!?」


つまりアフターケアしろと?吸血鬼にしろって言ったの俺じゃないし、ヴァイロだし。そこまで面倒見るつもりなかったんだけど。


因みに、サリアもヴァイロも吸血鬼になったのだが、見た目は変わっていない。濁った紅眼と鋭い犬歯は【肉体改造】で元に戻っている。この【肉体改造】は地味に優秀で他者にも適用できるのだ。抵抗みたいな感じがして変化させるのが難しかったけど、視認できる分自分に使うより繊細にできた。


そして俺も中肉中背、顔は男とも女とも取れる中性的な童顔となっている。髪や瞳も目立つだろうから茶髪と鳶色の瞳に変えている。


パルやサリアに凄いたくさんの指摘をされて造った最高傑作だ。声も中性的なものに変えているので俺と気付くものはいないだろう。


話はそれたが、サリアもヴァイロも見た目こそ元の人族であるが、立派な吸血鬼なのだ。だから日光が苦手でもしょうがないよね。


「全身黒尽くめにするか」

「怪しすぎるだろ!」


わがままだ。


【眷属召喚】みたいにスキルを渡せたらよかったんだけどね。


『出来ますよ』


あ、はい。スキルカードを見ると【眷族】の説明欄に“同種化”と“遺伝”と書かれていた。前はなかったけど【遺伝細胞】が統合されたから増えたのだろう。見ると血を吸う時に所持スキルの中から一つまで与えられるとでている。後付けもできるようだ。


血を吸うのを人に見られないように両の手の平に【肉体改造】で歯を作ってそれぞれの首に押し当てる。身体の構成を変えるスキルなので口の中の歯を移動させないといけない。今口を開いたら歯がなくなっているので少し怖いだろう。もっと融通を利かせてほしいものだ。


「私たちはギルドに行くけど、本当に魔石もらっていいの?」


今度こそお別れというところでサリアが尋ねてくる。ファンタジー定番の冒険ギルドがあるらしいので俺も後から行くつもりだ。


サリアに渡した魔石は四十層の巨大アントビーの物でBランクらしい。ギルドに持っていけばBランクになれるのだと。生き残りだけ数えると確かに三人だ(精霊は割愛)。


俺は行かないけどね。テンプレは大事だけど、どうやって倒したかとか聞かれたら答えられないし。そこらへんはサリアたちに任せることにする。


それにしても魔石を渡した時にこれでBランクになれると喜んでいたのに、どうしたのだろう。


「このレベルの魔石になると高く売れるんだよ。私たちに安く売るより、自分でギルドに持っていったほうがいいんじゃないかと思って」


高く売れるのならそうしたいのだけどね。


「俺無一文なんだよ。だから宿取るにしても飯食うにしても金いるし、ギルドで魔石売るにしてもギルド会員証いるだろ?それにも金かかるし。だったら条件なしで買ってくれるやつに売った方がいいんだよ」

「そういうことなら、有り難く」


納得してくれたようなので、今度こそ別れた。


「それで、いくら貰ったの?」

「金貨一枚、大銀貨五枚、銀貨十枚かな」


貨幣の値は上から順に大金貨、金貨、大銀貨、銀貨、大銅貨、銅貨の順で、十枚で上の硬貨になる。サリア達から相場を聞いたところによると大体、大銅貨一枚で日本円で言うところの百円になるようだ。


とすると、今もらったお金は・・・十六万か。大体初任給ぐらいかな。高校生からしたら大金なんじゃない?というかギルドで売ったらもっと高くなるのか。Bランクは伊達じゃないってか。


「よし、買い食いしようか」

「やた〜」

「よく考えて使うべきだと思うのだけど」


パルがやれやれといった感じで言うけど、どこか嬉しそうなのは気のせいじゃないはず。今まで食べてたものってゲテモノばかりだもんね。


取り敢えず目についた屋台で焼き鳥モドキを買う。シエラに前買ってもらったやつだ。


一本銅貨三枚だったので銀貨で三十本買った。計算が苦手らしく、大銅貨二枚のお釣りがきたんだけど、これ貰っていいのかな。


店員さんはホコホコ顔だけど後から絶望顔に変わるのだろうか。案外、一生わからなかったりするのかもしれない。


罪悪感が湧き出そうだったので焼き鳥モドキを包んだり焼いてくれている間に小銭箱にコインシュートした。


【無慈悲】で罪悪感覚えないとか俺わかんない。悪い事したら罪悪感が出るものなんだよ。多分。


そのあと蒸かし芋みたいなのとか、ジルの実という硬いリンゴみたいな実とか、その果実水とか結構買った。最初の焼き鳥モドキと合わせて銀貨三枚と大銅貨二枚。主婦じゃないから高いとか安いとか分からない。重たくなってきてからは【異空間収納】に入れているので量も分からない。


適当に景色のいいところでも見つけたらそこで食べるつもりだ。


「おいし〜」

「ふふん♪まぁまぁね〜」


ソラとパルには先に焼き鳥モドキを食べさせている。好評のようで何より。


飲食系の屋台は終わったのか、古着が売られているところに出た。フリマみたいな感じだ。ただ、汚れが目立つ。


ふと気になって自分の格好を見てみる。前にシエラに買って貰った服を着ているのだが血塗れだ。“着色”で誤魔化してはいるが一着だけというのもおかしいか。


結局ボロみたいな服を何着か買った。新品は高かったのだ。


「おい、あれは・・・」「な、なんでこんなところに!?」「子どもたちを避難させるんだ!早く!」


急に騒がしくなってきた。まったく、なんだというのか。


その時だった、日が隠れたのは。


日に照らされて明るかったところが一転、暗く染まる。【危機察知】に反応がないので大丈夫ではあるのだろうが、不気味だ。


「キュルゥゥゥ!!」


上を見上げる。銀に輝く四肢、空をかける大きな翼、大地に轟く咆哮、爬虫類独特の縦に割れた瞳が目立つ城を見つめる。あれはもしかしてもしかするのじゃなかろうか。


「ドラゴン?ドラゴンだよね!」


ファンタジーの王道がそこを飛んでいた。

シエラとの約束の描写を追加しました。

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