私たちしかしらない秘密、です
輝流とすこ~~~しだけ仲を縮めた如月。
今日も今日とてバイトに励む・・・
「強くなってきましたねー、雨」
ぽつりと言った天衣さんの声に、私は窓をちらりと見た。
七月下旬、夏本番だというのにまだまだ梅雨真っ盛りだ。
毎日雨ばかりだと、どうも嫌になる。
私がこのバイトを始めて、結構な月日がたつ。
メニューもだいぶ覚えてきて、彼らの雰囲気にも慣れ始めた。
というか親しみやすい人ばかりだから、苦労とかはしなかったけど。
「もう七月やで~? はよぅ梅雨明けんかな~」
「美宇ちゃん、雨苦手ですもんね」
「当たり前や! じめじめしてて気持ち悪いし、す~ぐイライラする」
「ミュウミュウの怒りやすい性格は、雨のせいじゃない気がするけどねぇ」
気楽な輝流さんの声が、美宇さんの耳に入る。
彼女はすくっと立ち上がり、輝流さんにつめ寄った。
「どういう意味や、リュウ! もう一回言ってみ!?」
「ほらそうやってすぐ怒る~怒ると寿命縮むよ~?」
「なんやと~!?」
「まあまあ二人とも、そう熱くならずに、冷たい水でもどうぞ?」
二人の間に天衣さんが割って入る。
輝流さんに怒りながらも飲む美宇さんは、少しだけ怒りが覚めたようだった。
「あ、そ~だ。王様~お願いがあるんだけど」
「なんだ」
「今年も自由研究あるから、観測させて?」
なんのことを言ってるんだろう。
私が考えている裏で、それに便乗するように美宇さんも手をあげて答えた。
「ほなうちも頼むわ! 宿題終わりそうにないねん。マスター頼む!」
「お前らなぁ。毎年同じやつばっかして、よく怒られねぇな。そもそもあれは自由研究のために見せてんじゃねえよ、却下」
神宮さんがそういうと、文句を言うように二人がダラダラ言っている。
私はもう、何がなんだかわからない。
二人の話題についていけないことは初めてじゃなかったけど、今回のは何の話かさえ分からない。
そんな私に気付いたのか、天衣さんが覗き込みながら聞いた。
「そういえば如月さんはあの事を知っているんですか?」
「あのことって?」
「私たちしか知らない秘密、です」
知らないというように首を振ると、すかさず二人が食って掛かった。
「そうや、如月はここに来てまだ見とらんやん! うちらだけ見せるなんて不公平や!」
「そうだよ~にがっちゃん最近頑張ってるし、そろそろ見せてもいい頃じゃない?」
「お前ら……自分が見たいだけだろ……」
神宮さんはそういいながら、はあっとため息をつく。
彼はスタスタと電気のスイッチのもとへと歩いた。
「今回は特別だからな」
部屋の電気が消え、店内はたちまち暗闇に包まれた。
何かのスイッチが入る音が聞こえる。
視界がぱあっと開けた。
私の目の前には、満天の星空が広がっていた。
青く、美しい夜空の様子が私を包む。
まるで宇宙の中にでもいるような、不思議な感覚……
「すごい……」
私は思わず口を開いていた。
「うふふ、すごいでしょう? ルナティックハウス風プラネタリウムです」
天衣さんに言われ、一か所だけ明るいところをちらりとを見てみる。
神宮さんの隣には星空を映し出している機械があった。
あんなところに、機械なんておいてあったんだ。
何だろうとは思ってたけど。
「でもなんで、プラネタリウムの機械がここに?」
「俺がもらったんだよ。ま、色々あってな」
暗くてはっきりとは見えなかったけど、神宮さんの顔はどことなく寂しげで何かを思い出しているようで……
「いやあ、いつ見てもいいもんだなぁ。確かあれがシリウスだっけ?」
「馬鹿、ちげぇよ。シリウスはオリオン座の一角だ。あれはアルタイル」
く、詳しい!
アルタイルって、確か夏の大三角形だよね。
名前までは分かるけど、神宮さんって星に関して詳しんだなぁ。
ますます惚れちゃった❤
「ほな自由研究がてら、一つメモしとくか~」
「誰がさせるって?」
美宇さんがそういった瞬間、スイッチが切られ星空が消える。
二人からブーイングが漏れた。
「ちょい、マスター! 何で消すん!?」
「そうだよ~オレらが自由研究出せなくなったらどうすんの~?」
「お前らのためじゃねぇって言っただろ。今回は特別だ。見せたかわりに、今から大掃除をしてもらう」
!!!?
(つづく!)
お知らせです
他の作品にて、JOKERの朔也の誕生日エピソード、
そしてトライブさん一周年記念のエピソードを投稿させて
もらいました
懐かしい作品のエピソードを書くのは記憶を呼び起こすところから始まるので大変ではありますが
皆様に喜んでもらえるとありがたいです。
しくにくのも引き続きお願いします♪
次回、みんなで大掃除♪