お二人はサークル活動やってますか?!
従業員達の意外な実力を目の当たりにした如月は
不安を覚えながらもバイト生活を送るが・・・?
目覚ましが薄れた意識の中で聞こえてくる。
目を覚ました時には、すでに朝六時を回っていた。
もうこんな時間かと体を起こし、リビングへと歩く。
テレビをのほほんと見ながら、もぐもぐご飯をたべる。
今日から学校だと思うと、毎日が憂鬱で仕方ない。
義務教育じゃないんだから行く必要ないじゃん。
なのに毎日来いって、矛盾してない?
ちなみに暴露させてもらうと、私には五つ離れた弟がいる。
その名も、水瀬睦月。
輝流さんが彼に会ったら、一月君とでも言われているだろう。
姉弟そろってこんな名前だと、嫌でしょうがない。
というわけで、朝はたいてい一緒にいるわけで……
「きーちゃ~ん、携帯なんかちかちかしてるよー」
「うそ? とって」
「自分でとれよ~はい」
ったく、似ないでいいとこまで似やがて……
しかし誰だよ、こんな時間に。
今忙し……って、んん?
『件名 ルナティックハウスより』
こ、これは!!!
間違いない、神宮さんからのEメール!
『朝早くに悪いな。シフト表作りたいから、授業が終わり次第来い。時間割とか持ってくるように。あ、あと俺のメアドちゃんと登録しとけよ。じゃあな 神宮明王』
ふぉぉぉぉぉぉ!
やばい、やばい! テンションおかしくなりそう!
神宮さんのメアドゲ~~~ット!!
よし、このメールも保存してっと……
「きーちゃん、うるさい。なんだったの?」
どうやら声が漏れてたらしい。
睦月が顔をしかめながら、私を見つめていた。
「ほら、前話したじゃん? あきお様似の人のこと」
「ああ~……どうでもいいや」
「聞けよっ!」
「ねぇ、きーちゃん。なんかネタないの? ネタ」
急に話を振られ、ほへ? と変な声が出てしまう
睦月は相変わらず携帯ゲームをしたままで、こっちをみてさえいなかった。
下は上をみて育つ、というのは本当ならしい。
私が小説をかいていると同時に、こいつも書いているのだ。
しかも無駄に。
その上に結構色々な人が読んでくれたりとか、感想ももらっていたりするようで何かと自慢してくる。
まあそれがいらつくわ、気に入らないわ‥‥
「ほら、そんなことより学校の時間でしょ。ささっときがえて」
「へーい」
気のない返事に、またイラつきを覚える。
まさか自分の弟が小説のライバルになるなんて、誰が想像しただろうか。
なんとかしないとな‥‥
そう思いつつ、私も学校へと足を運ばせた。
「こんにちは……」
「おう、水瀬。お疲れ、浮かない顔してんな。なんかあったのか?」
ええ、そりゃあもうありましたとも。
学校が無事に終わり、今日も今日とてバイトの日。
喫茶店にいくと、客が引いたところなのか神宮さんは本を眺めみていた。
「い、いえ。なんでもありません、大丈夫です」
「そうか? とりあえず着替えてこい。話はそれからだ」
ひとまずの危機を乗り越え、私は一息つき更衣室へ歩いた。
神宮さんにまで心配させるわけにはいかないしね。
これ以上迷惑かけたら、嫌われちゃうかもだし。
さすがに小説のことでなやんでます! なぁんていえないしねぇ。
ていうか、いっそのこと神宮さんのことをネタにすればいいんじゃね?
神宮さん似の男性キャラに恋して、ゆくゆくは結ばれる主人公!
……って私の願望まんまじゃん!
そ~んな夢のような小説書いたら、毎日萌え死ぬっつうの。
「お、如月やん~今から仕事か?」
「講義、お疲れ様です。如月さん」
更衣室を開けると、そこには天衣さんと美宇さんがいた。
彼女達はルナティックハウスの制服ではなく、大学の制服を……ってん?
ちょっと待てよ、この制服……
「お、お二人はまさか冥皇大学に通っているんですか!?」
「はい、そうですよー」
「ちゅーても、うちらは二年やけどな」
まさかの同じ大学!! しかも先輩!
こんな偶然あるのか、普通! てか気づかなかった私もどうなんだ!
「うちらもマスターに聞いたんや。まさか同じ大学とは思わんかったわ」
「本当ですよ~これも何かの縁かもしれませんね~」
同じ大学と聞いて、私が黙っているわけがない。
こうなったら、ダメもとで聞いてやる!
「あの! お二人はサークル活動やってますか?!」
「ん? まあ一応してるで」
ですよね~……私の願望瞬殺……
「まあ所属はしてはないがな。うちはあらゆるスポーツのサークルでやってるんや」
「私は家庭科のサークルをさせていただいてます。と言っても、失敗ばかりですけど……」
ああ、もう。ついてないなぁ。
せっかく文芸部に誘おうと思ったのに。
ま、この二人を誘ったところで今の状況が救われるとは思ってないけど。
「んじゃ、うちら今から講義やから。きばっていけよ、如月」
「お先に失礼します」
二人はそういって、さっさと出てしまう。
ついぽかんとしていた私は我に返り、ブラウスのボタンをはずしだした。
いやあ、まさか同じ大学だったとはなぁ‥‥
小説が作りたくて文芸部に入ったけど、まさかの部員が全然いないんだもの。
廃部になるんじゃないかとか、同級生に追い越されまくるわ‥‥今日はとことんいいことなかったな。
……やめようかな、小説かくの。
私になんて、そもそもできるわけない話じゃん。
この機会だ、あきらめよう……
「は~だっる。わざわざ制服に着替えるってめんど……ん?」
聞きなれた声に、私は動きを止める。
手に持っていたブラウスが、はたりと落ちた。
「❤☆○◇§¶!?」
言葉にならない声を出し、私は彼―輝流さんを殴った……
(続く!)
主人公が私なら、弟は実の弟をモデルにしてます。
あ、先に言っておきますけど従業員メンバーにはモデルなんていませんので・・・笑
ちなみに冥皇大学は三年制だったりしますので
そこらへんは頭にいれててくださいませ