世界一ですよ
桜庭家長女・瑞樹を説得させるため
鈴蘭・柊の二人の姉を連れて、喫茶店へ!
ついに桜庭姉妹、ここに集結!!
「到着、やでっ!」
美宇さんの運転してたバイクが、ブレーキをかけながらゆっくりとまる。
私はヘルメットを取り、ふうっと息をついた。
バイクの後ろをついてきていた柊さん達を乗せた車も、同じようにとまる。
「ここがルナティックハウス~? とてもきれいだね~」
「この喫茶店に二人とも働いてるんでしょ?」
「せやで。如月はまだ二か月ちょいやけど、うちと天衣は二年前からしとる」
二年前ってことは、高校時代からやってたのかな?
一緒にバイトを始めるくらい、仲がいいってことだよね。
「わあ、お客さんいっぱ~い」
鈴蘭さんが窓越しで眺めながら、にっこり笑う。
この時間帯はたいてい高校生やらが友達と来ることが多い。
間の悪い時に遭遇しちゃったなと思っていた、その時だった。
窓越しに、笑顔を浮かべた天衣さんが見えたのは。
彼女はいつものように明るく、お客さんから注文を取っていく。
はっと隣を見ると、美宇さんが小声で「いつも通り接客しろ言うとったんや」とささやいた。
美宇さんのパワー、恐るべしだな。
「あれが……天衣?」
信じられないようなそんな声を上げ、瑞樹さんはずっと天衣さんを見ていた。
その瞳が、大きく揺れている。
「天衣ちゃん、キラキラしてる~」
「あんなに笑った顔、初めて見たかも」
「何言ってるんですか。天衣さんの笑顔は、世界一ですよ」
二人の言葉につられて私も言う。
それからどれくらいたっただろう。
しばらくして客がいなくなり始めた頃、何を思ったのか瑞樹さんは店の中に入っていった。
ついていくように慌てて私や美宇さんも入る。
「いらっしゃいま……! お姉様方! どうして……」
「天衣」
瑞樹さんの声が、しーんとした中で響く。
今まで厳しく見えた彼女の顔は、心なしか明るく見えた。
「あなたは小さい頃からドジっ子で、何をやらせてもダメでした。だからせめて桜庭企業の後を継いでくれればと、そう思ってました。でも……私が間違っていたようですね……」
皆の顔がハッとする。
天衣さんに向かって、彼女はうっすら笑顔を浮かべた。
「ここでのあなたはとても輝いていた。やりたいなら、やりなさい。弱音を吐いたら、許しませんよ?」
「瑞樹……お姉様……」
「それと、たまには家にも顔だしてよね!」
「喫茶店の話やお友達の話、たっくさん聞かせてね~」
「柊お姉様……鈴蘭お姉様……」
ぼろぼろと天衣さんの目から涙がこぼれる。
私はほっとして、肩をなでおろした。
涙をぬぐう天衣さんに、美宇さんが肩を組み合う。
「天衣は、うちらの仲間や! だからもう泣くなや」
「これは嬉し涙ですよ……お姉様方、喫茶店のみなさん! ありがとうございました!」
涙がきらめき、満面の笑みが咲き誇る。
やっぱり天衣さんには、笑顔が一番だな。
この笑顔が見たくて、私は行動にうつしたんだから。
「よかったね~あまちゃん。にしても、お姉さん達みんなきれいだね~。メアドもらってきていい~?」
「あほか、リュウ! お前は誰でもええんか!」
「冗談だよ~つれないなあ」
「まあまあ二人とも。ほどほどにしてくださいよ」
いつも通りの日常があるからこそ、毎日が楽しい。
何だかすっきりしたなあ。
そうだ! 瑞樹さんをモデルにしたキャラを作ったらいんでね?
主人公を縛り付けるお母さん的なので!
って何を考えてるんじゃ、私は!
「水瀬」
はっと我に返ると、すぐ隣に神宮さんがいた。
今更ながら私がとってしまった行動を思い出す。
神宮さんの許可なしに飛び出し、勝手なことしたもんな~
ううっ、怒られる……。
「鈴木ならまだしも、お前まで桜庭企業に乗り込むとは思わなかった。根性あるな、お前」
「え、乗り込んだこと知ってるんですか!? なんかすみません! 勝手なことして!」
「別に、結果オーライだろ? 水瀬のそういう行動、俺嫌いじゃないけど?」
え? ちょっ、まっ。はい?!
聞きました、みなさん! 嫌いじゃないけどですって!
それって「嫌いじゃない=好き」ってことにならない!?
「うふふ~青春だね~店員さん☆」
「うわっ! 鈴蘭さん! 柊さんも!」
「あんなイケメンに好かれるなんて、君もやるねぇ」
「や、やめてください! そんなんじゃ……」
「なになに? にがっちゃん、からかわれてるの~?」
「如月はいじりがいがあるからなぁ~よし、うちも加わるで!」
ちょっ! なんでこうなるの!?
「天衣さん! 助けてください!」
「えっと~……ファイトです、如月さん」
「そ、そんなぁぁぁぁぁぁぁ!」
私の叫びが空しく空に響き渡る。
何はともあれ、天衣さんのバイト騒動がこうして幕を閉じたのだった。
(つづく!!)
桜庭家のお姉さま方の名前は、
もちろん花の名前から来ています。
天衣ちゃんも漢字が違うので
わかりにくいかもしれませんが、
そういう名前の花があるみたいなので、
探してみてください。
次回、のほほんとした日常が戻ってくる?




