特別メニューですよっ
新メニューがパフェに決まり、無事に完成!
と同時にやってきたのは、背高のっぽのふりょ・・・常連客で・・・?
尾上さんとかいう人は、私を見下ろしながらふっと目線をそらす。
私はもう、何がなんだか分からなくなっていた。
この人が常連客の上に、輝流さんの友達だって?
この身長差はとてもじゃないが二年上とは思えないぞ?
もっとも、私の身長が低すぎるのが悪いんだが……
「よぅ、尾上。日曜なのにわりぃな、呼び出したりして」
「……別に……。マスターの頼みなら、仕方ないので……」
会話からすると、神宮さんとも仲がよさそうに見える。
こういうヤンキーっぽい人がここに通っていると、周りのお客さんを怖がらせちゃうんじゃ……
「いや~終業式ぶりだね~。メール飛ばしたらすぐ来るとか、暇人?」
「うるせぇ、お前にだけは言われたくねぇ」
「ひどいなぁ、チューンは」
チューンと聞いて、ピンと来る人はあまりいないだろう。
輝流さんがつけるニックネームは変わってるのが多いけど、彼のは名前のどことも一致しない。
「あの……チューンって?」
「ああ、こいつのニックネームだよ。魁皇って名前だから海王星を英語にしたの。海王星ってネプチューンっていうでしょ? だからチューン」
まず、英語に直す意図が分からないのだが……。
「んで? 料理はどこだ? どうせ試食に呼ばれたんだろ」
「あ、分かっちゃった? その通り~今回はパフェだよ~!」
もしかして、パフェの試食に来てもらったのかな?
どうせって言ってる時点で、今回が初めてではないんだろうな。
輝流さんがパフェを指さすと、尾上さんの顔は今まで以上に険しくなった。
「おい輝流。なんだこれは」
「何ってパフェに決まってんじゃん」
「そうじゃなくて……これを俺に食べろってことか……甘いもの苦手だって言わなかったっけなぁ……」
「いたたたたた! ギブギブギブ!」
輝流さんの首元を強い力で締めてみせる。
尾上さんが小さく舌打ちしているのを、何とも楽しそうに見ている美宇さんがにんまり笑った。
「ええや~ん。甘いもんの一つ二つ食うたとこで死にはせぇへんって」
「人を殺す気か、お前は」
「天衣がせっかく作ったのに、食わんのか~?」
美宇さんがそういうと、彼の目線は天衣さんにうつる。
彼女はパフェを手に持ちながら、いつもの笑みを浮かべた。
「尾上さんが甘いもの苦手と聞いていたので、甘さ控えめにしてます。試食に毎回来てくれるのは尾上さんくらいなので」
「………」
尾上さんはしばらく黙ってしまった。
だがすぐにふっか~いため息をつき、そのパフェを取った。
「はいはい、食えばいいんだろ…………ん、確かにあんまり甘くはねぇな」
「それはよかったです~尾上さんだけの特別メニューですよっ」
「無駄な気使わせて悪かったな。サンキュー」
尾上さんの顔が、心なしか明るくなった気がした。
あれ? 思ってたよりいい人、なのかも……?
「んじゃ、俺帰る」
「えっ!? もうですか?」
「もうちょいいてもええやん。せっかく来たのに水臭いで」
「雨ひどくならないうちに帰りたいんだよ」
そういいながら喫茶店のドアを閉める。
するとなぜか急に、外の雨がひどく降り荒れた。
しばらくして尾上さんはびしょびしょになって、帰ってきた。
「帰れなくなった……」
「チューンって雨男だったっけ?」
「マスター、天気予報だしてぇな~」
テレビに映されたのは、まぎれもなくひどい台風情報。
まさかとは思ったが、ここ直撃してる!
こ、これは! 自転車で帰れん!
つうか電車とか絶対止まってるでしょ、みんなどうするんだ!?
「仕方ねぇ……お前ら全員、ここ泊まってけ」
!!!!??
「ちょ、マジで王様!? いいの!?」
「ああ。この喫茶店、前のマスターが住んでた家だったから整備整ってるんだ」
「いやだからって! 男女一緒に屋根の下とか嫌やわ!」
「男女別にすれば問題ねぇだろ。それにこの雨の中、どう帰るんだ?」
た、確かに……。
私は気まずくなって隣にいる二人の先輩を見る。
天衣さんは苦笑いし、美宇さんは舌打ち交じりで私を見つめ返す。
「……お……お願いします……神宮さん……」
かくして喫茶店メンバーによる一夏の夜が、今幕を開けたのだった。
(つづく!)
先日ものすごい久しぶりに体を動かしたら
めちゃくちゃ動けませんでした。
翌日には体痛いし・・・はあ、つらいですね。
次回、まさかの合宿?




