意味……わかるな?
みんなで大掃除をして、なんだかんだなじみつつある如月。
季節はいよいよ夏休みへ!
「にがっちゃ~ん。ハイこれ、借りてた小説」
輝流さんが渡した一冊ノートを、私はゆっくり受け取った。
あの大掃除から一週間、私達はあっという間に夏休みへと突入した。
最近台風が近くなってきているせいか、梅雨明けしたにもかかわらず外は雨が降っていた。
「あ、ありがとうございます。あの……どうでした?」
「ん♪ すっごくよかったよ。主人公のバカっぷりにみんながつっこんでいくのが面白かったな~」
はあ、よかった。
こういう感想が、一番心の支えになる。
なんせ輝流さんがにこにこしながら言うものだから、嘘じゃないんだって分かるし。
「にがっちゃんってもしかしたら才能あるんじゃない? 何かに投稿しちゃいなよ」
「そ、そんな! 私なんてまだまだですし……」
「ちぃ~っす! お疲れちゃ~ん!」
そういっている途中、喫茶店のドアが開いた。
それは私服を身にまとった美宇さんと、天衣さんだった。
美宇さんは半そでの半ズボンを着ていて、天衣さんはかわいらしいワンピースを着ている。
一目見ただけでも二人の性格が分かるほどの違いだった。
「やっほ~ミュウミュウ、あまちゃん。遅かったね~」
「すみません。早く着く電車が見つからなくて……」
「休日はあんまでぇへんのや。つうかマスターも、わざわざ休日に呼び出さんでもええのになぁ」
実を言うと、今日はルナティックハウスが定休日の日曜日である。
なぜか突然昨日の夜に、神宮さんから全員招集がかかったのだ。
「お前ら、全員そろったな」
違う部屋から、神宮さんが出てきた。
はうっ! 神宮さん、イケメン!
私服姿で出てくるなんて、反則ですよ! まったく!
「わざわざ休日に来てもらったのはほかでもない。ルナティックハウスについて話すためだ」
そういう神宮さんの顔は真剣で、いかにもこの店を支えるマスターって感じだった。
そんな彼にうっとり見とれながらも、私はごくりと唾をのんだ。
「この前大掃除した時にここの昔のデータが出てきてな。それと近年のデータを合わせてみて、近年の売り上げが悪くなっている。意味……分かるな?」
え、え~っと……
まずい、神宮さんに目を合わせられない。
じろりと見つめる彼の目線が、怒っているかのようにも見えるし……
「お前らはここ近年、なぜ客が減っていると思う?」
突然聞かれ、つい私は考えてしまう。
なかなか返事を返せない私に対し、三人はさらりと答えた。
「は~い、店が狭いから~」
「冷暖房が全然きかないからや!」
「メニューが少ないから、でしょうか?」
「お前ら殺すぞ」
さ、さすがだ……。この従業員三人は色々な意味で無敵な気がする。
「水瀬、お前はなんかねぇのか?」
「そうですね……あ! 初めて来た時に思ったんですけど、コーヒーに対してデザートが少ないのかなって」
「なるほど、やはりそうか……つーわけで、今から新メニュー考案を行う」
い、今から!?
もしかして休日に呼ばれた理由ってこれ!?
神宮さん……喫茶店に関しての愛情が半端ないなあ……
「なんかねぇのか、アイデア的なもの」
「はいっ! 提案なんやけど!」
神宮さんが言うとすぐ、美宇さんが手をあげた。
「ターゲットとなる客を絞ってみたらええやない? そしたらメニューとかも自然に出てこぉへん?」
おお! 美宇さんにしてはすごく納得できる理由!
「だったらやっぱり女子高生じゃね?」
「確かに、コーヒーは全種揃ってますからね」
女子高生か~。
私は思わず、この前来た高校生を思い出す。
確かに高校生の客は少ないかも。比較的成人の男女だし……
ていうか、比較的に男性の比率が高い気がするのは私だけか!?
「あ、思い出した! 女子って甘いもん好きだし、スイーツ系がいいんじゃね? この前聞いたら、そういってた」
輝流さんの意見はあながち嘘じゃない。
だが彼が言うと、女子である私が複雑だ……
「スイーツか……桜庭、作れるやつあるか?」
「えっと、基本的に全部大丈夫です、レシピ本も揃ってますし、部活で色々作っているので……」
そっか、天衣さんは家庭科のサークルに入ってるんだっけ。
毎年文化祭とかで手芸品寄贈したり、小さなお茶会開いてるよな。
あんまり詳しくは知らないけど。
「よし、じゃあ新メニューとして作れるデザートがあるか一通り言ってみな」
「はい! うち、クレープが食いたい!」
「お前個人のことは聞いてねぇよ。つかクレープ器おいてねぇし」
「んじゃ和菓子とかは? やっぱ日本っていえば和食じゃね?」
「どうやって作るのか知ってんのか、お前は」
きれきれなボケと突っ込みに、思わず苦笑する。
この二人からいい意見が出るとは思えないし、ましてや天衣さんが作れるような料理と言ってもなぁ。
………あ!
「パフェ、とかどうですか?」
私が言うと、四人の視線が一気に向いた。
「ファミレスとかでも普通にありますし、デコレーションとかを工夫すれば……」
「そんな難しいもの、桜庭が作れるわけ……」
「できます。私、パフェ作ります」
決意に満ちたその一言に、私はびっくりする。
神宮さんも珍しいような目つきで、彼女を見つめていた。
「よう言うた、天衣! それでこそ、うちの親友や!」
「……分かった、作るだけ作ってみろ。杉本、今のうちにあいつにアポとっとけ」
「りょ~かい♪」
淡々と始まる新メニュー計画に、私は戸惑いざるを得なかった……
(続く!)
ルナティックハウスメンバーのぼけとつっこみは、
書いていてとても楽しいものがあります。
コメディものに慣れつつあるって証拠ですよね! ・・・あれ、違いますか?笑
次回から三日後更新にさせていただきます。
はたして新メニューの行方はいかに・・・




