よくあるおはなし
あの人とは、近い場所にいたのかもしれない。距離とか関係なしに、心のどこかで。
ありきたりな話さ。もともと知り合いで話も合って、感性も合って、ってね。すぐに親友的な存在になった。ー少なくとも私のなかでは。
男と女だが、あの人とはずっと続ける関係でいたかった。恋愛よりも、友情で結ばれた関係の方が、私にとっては都合がよかった。いつまでも悪友のようなやりあいを、言い合いをしていたかった。
あの人は、自分を卑下するわりにはとても魅力的な内面を持っていたと思う。惹かれるのも時間の問題だった。
よくあの人とこの会話をくりかえした。
「もう、結婚しようか」
「いいよ、30になって誰もいなかったらもらってあげる」
私たちにとっては軽口で済ませられたような何気もない会話。
しかし、だんだんあの人がもっと近くに欲しくなってしまった。好きになってしまった。会話に出てしまっていたのだろうか、はたまたあの人が私との会話に飽きたのだろうか、連絡がとれなくなった。
ーある日なにげなしにあの人のSNSのページをみてみた。大切な子がいたみたいだ。苦しかった。あの人と話せる時間が自分の癒しだった。多分それも無理だろう。
自分では動けなかったくせに、それでも苦しいなんて悲しいなんて本当にどうかしてる。そういうくらい、私にとってはかけがえのない存在だった。
でも、私は意気地無しで、意地っ張りで、弱虫だから。“その子のほうがきっとあの人を応援して、近くで支えてあげられる”
もしあの人に伝えることがあるとするならば、
案外貴方は魅力的だ。貴方とした会話はとても楽しくて嬉しくて勇気をもらった。そんな貴方に感謝と友情と愛情を込めて。これから貴方が幸せになる呪いかけといたから。
…私も幸せになりたいわ。一人は嫌なの。誰かここから連れ出して。