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幼い頃から好奇心旺盛で天真爛漫だった古暮明日香(こぐれあすか)は、隣の家に住んでいる幼馴染みの島一樹(しまいつき)のことが大好きだった。
生まれた時からベッドは隣同士で、親同士も交流が深く、何をするにも常に一緒。
その当時明日香は、「わたしと一樹は、これからもこの先も、ずっと一緒に過ごすんだ」と日々思っていた。
「一樹、わたし達これからもずっと一緒に居ようね!」
小学校の卒業式。
泣きながら別れを惜しんでいる同級生達をよそに、明日香は満面の笑みを一樹に向けた。
明日香にとって、小学校の卒業式はさほど悲しいものでは無かった。
これからも一樹と一緒に居られるのなら、ちっとも悲しく無い。
仲の良かった同性の友達が遠くに行ってしまうことなど、別にどうだって良かったのだ。
だがいつもは太陽のように眩しい笑顔を浮かべる彼は、少しだけ暗い笑みを返した。
他の人ならば見落としてしまう微妙な変化だが、明日香は目ざとく気づき首を傾げる。
「あすか。オレ、明日引っ越すんだ」
「……え?」
「今まで黙っててごめん。でも、その日までが楽しくなくなるかと思って」
衝撃な言葉に、明日香の頭は真っ白になった。
それは残酷な優しさのせいで訪れた、突然の別れ。
当たり前だと思っていた日常に訪れた、悲しい崩壊だった。