脚フェチな彼の訓練7
『コンクリートの上に正座すると結構辛い』
これ豆知識な。
「全くもって濡れ衣だ。顕現の時、一片たりともやましい考え何て持ってなかった。いやホントだって」
俺を見下ろすようにして仁王立ちする3人に対し、俺は必死で弁解していた。
「じゃあなんでお姉ちゃん殿がこんなエッチなバニーガールになっちゃったんでござる?」
「さっきから言ってるだろ? さっぱり分からないって。むしろ俺が聞きたいくらいだっての」
何で俺が密かに思い描いていた理想の姿になってくれたのかを。
まあ確かに? 全く考えていなかった、という事も無い。
けど、バニーで顕現しろ、とは神に誓って念じてはいない。
まるで俺の深層心理を反映して顕現したとしか…………
「それ、か……?」
「そ――クソ野郎殿、何かお心当たりでも?」
俯いたままポツリと漏らした俺の一言を、お光は聞き逃していなかったようだ。
「いや、心当たりと言えるようなものでも無いんだが……今の光世の姿さ。本当の事を言えば、想像した事がある。いや、妄想と言っ方が良いか。大人の色気を纏う光世だ。きっと成熟したオンナでないと似合わないバニーガールの姿が、恐ろしく似合うんじゃないか、とな」
「そんなマジメな顔で妄想解説されても…………」
「さっきの顕現の時、実はこれと言ってイメージが固まっていなかったのに、力が発動してたんだ。軽く暴走したと言っても良いかも知れない。だから、俺の意識の外にあった妄想の中の光世の姿が、無意識の内に反映されてしまったというところじゃないだろうか」
正直自分の妄想を披露するなんて恥ずかしいにも程がある仕打ちだったが、俺は真剣に説明していた。
3人はそれぞれが少々困惑したような表情を見せて、お互いに顔を見合わせている。
「喜由殿、今の総一郎殿の申出。いかがにございましょう」
「うーん、根拠ってのも無いんだけど……顕現までのプロセスが大幅に短縮された、って事なのかなあ」
「術の練度が増した、と解さば良いのか?」
「そんなとこ。でも霊力が増えたってだけじゃ普通そんな事にはなんないとも思うんだけど……」
腕を組んでしきりに頭を捻っている喜由。後ろに見える尻尾がゆらゆらとせわしなく揺れている。
「でも。原因があるとすれば、やっぱ“気持ち”の問題じゃないかな?」
揺れていた尻尾がピタリと止まり、喜由が真直ぐに俺を見ながら言った。
「気持ち? どういう事だ?」
「つまり、霊力が戻ったっていう事実で兄者が“その気”になったんだと思うんだ。元々地力はあったみたいだしさ、ちょっとしたきっかけでステップアップしたってとこかな? それまで乗れなかった自転車に、何かの拍子で急に乗れるようになった、みたいな」
「成程、そういう考え方もあるか……って、あの、そろそろ経っても良いか? 足が、かなり痺れてきたんだが」
ほとんど感覚が無いくらいに。
「どうする? お姉ちゃん殿」
「ふむ。まあ良かろう。他意があった訳でも無さそうじゃ」
お許しをいただいたので、早速立ち上がろうとして腰を浮かせた途端、想像以上に痺れている事に気が付く。
――こりゃヤバい。
直感的にそう思ったが後の祭り。
「うおっ!?」
そのまま強引に立ち上がろうとしていた俺は、ものの見事にバランスを崩し、顔面から突っ込んでいった。
「主殿……………………」
正面向かって右側に立っていた、光世の網タイツに包まれている美脚(太もも部分)に。
今時安い三文小説にだって出て来ないであろう、ベタベタなお約束。
最高だ。
「よし、お二方。この不埒なエロメガネにお仕置き、“痺れた足を容赦なくビシバシ叩く刑”の執行でござる」
「御意」
「手加減はせぬぞ?」
「おいやめろ!! 今のは不可抗り――うおおおおおお!? 痛!! いってええええええええ!! いていていていていてマジで痛いって!! おい!! やめろ!! やめて下さい!! いてえええええええええええ!!」
それから数分の間。俺は拷問の荒波に翻弄され続けた。
「ふう……これでエロメガネもちったあ反省したでござろう」
「思うた以上に楽しめたのう」
「まったくにございます。総一郎殿の悶絶する姿が何とも……」
ほのかに顔を上気させて、軽く息を上げながら感想を述べている3人。
ふっ、楽しめたのなら何よりだ。
あの腿と網タイツの感触。今まで実際に触れた事は無かったが、想像していた以上に素晴らしいものだった。あれを味わえたんだ。なあに、かえって免疫がつく。
こういうのがあれだな、ラッキースケベっていうヤツなんだろうな。
「さて兄者、おふざけはこんくらいにしといて、そろそろマジメにやろっか?」
立ち上がって、身体中の砂やホコリを落としている俺に向かって、喜由が言った。
「俺としては当初からマジメなつもりなんだが……」
「つべこべ言うねい。さ、もっかいお姉ちゃん殿を戻して顕現させるでござる」
しっしっと手で俺をあしらいながら、喜由が指示する。
少々ムッとするところだが、仕方無くそれに従った。
光世の前に立ち、左手をポンと頭に置いた。
丁度バニーの耳飾りの真ん中の部分だ。
「主殿、この際じゃ贅沢は言わぬ。じゃが……せめてもう少し肌が隠れるような出で立ちを願いたいのう。流石にこれは、ちと照れ臭いわ」
少し頬を赤くしながらそういった光世は、これまで見た事の無い、何とも女の子らしい表情だった。
「お…………」
不覚にも萌えてしまった俺は、思わず言葉に詰まってしまい、黙ってコクコクと頷いて返事をしていた。
よろしくお願いします。




