脚フェチな彼にハーレムエンドは似合わない
「喜由、そこもとの兄上が何やら気味の悪い笑みを見せながら涎を垂らしておるが? あれは何かの術でも使うておるのかのう」
「ヤツの視線からすると、多分脳内でお姉ちゃん殿を絶賛凌辱中かと推察されるでござる。そんな短いキュロットにニーハイなんて履いてるから……ってかあの男マトモに見ると目ぇ潰れるから気を付けた方がいいぜぇ?」
「このあるばむの中ではまだ可愛らしい子供であるというに…………」
「あ、でもおみっちゃん殿、この頃からもう始まってたらしいよ? 五年の時クラスの女子に足の匂い嗅がせてくれって頼み込んで、クラスはおろか学校中を震撼させたとか」
「人の、いや、男の性というものか? 足の匂いを好むとは儂には解せぬ趣向じゃ」
「それがしにも解せませぬが」
「拙者もだっつーの。ちなみにそん時のおにゃのことは同じ学校らしいんスわ」
「何と嫌な縁じゃ。儂がその女子であるならとっくに小僧を斬り捨てておるな」
「何なら今からでもそれがしが斬りましょうか?」
「斬るなら両腕で十分だから。シャドウセクロス出来なくなったら勝手に舌噛んで死ぬんじゃないかと思われ」
回想から我に返ると、三人娘が俺をボロ雑巾でも見るような目で見ていた。
そしてご覧の有様だ。
確かに光世の脚に見惚れながら回想しつつ涎を垂らしていたのは事実だが、流石に言い過ぎだろう。これは俺好みの服装をしている光世にも責任があるというものだ。
ってゆーか。
「お前らいい加減にしろ」
流石に止めるわ。何だこの会話の流れは。何気に俺の黒歴史を暴露までした挙句、各々言いたい放題言いやがって。
「てへっ! ごめんニャ、あにあにっ」
「てへっ、じゃないよ。何が舌噛んで死ぬだ。お前はもうちょっと兄を敬う事を覚えろ」
「あれれ~? そんな事言っていいの~? 誰のお蔭で無事に済んだか、もう忘れたんだ~?」
途端に喜由が勝ち誇ったような表情を見せる。誰のお蔭ってお前のお蔭だよこの野郎。ありがとうございましたコンチクショウ。
そう。あの時。お光と感覚を同化させて霊力全開で戦ったあの時。最後の最後でお光が止めを刺されそうになったあの局面で、俺は確かに持てる霊力を全て解放した。しかし、結果として俺は生命に別状はなく、こうして自室で光世の美しいおみ足を拝見している。
結論から言えば、全ては喜由の差し金だった。この言い方だと語弊があるが。
最初に俺達が光世と遭遇してボロ負けし、喜由の正体が露見したあの日。我が聡明な妹は、遠からず再戦の日が来るであろうと既に予見していたという。しかしどう考えても俺達の方が不利。どうしよう。
じゃあこうしよう――
その結果があの“いなり寿司”である。喜由は自分の妖力を寿司に練り込んでいた。それを口にする事で、一時的に力のバックアップが用意されていた状態だったのだとか。本来はバッテリーが二つで力も二倍という使い方だったそうだが、俺は充電切れに使う予備バッテリーとして使用したらしい。だから俺は自分の力を残らず振り絞ってしまったにもかかわらず、その不足分が知らずに補充されて一命を取り留めたという訳だ。
どうりであの時喜由の声が聞こえた筈だ。
――大丈夫、兄者はわたしが護るもの
などと何処かで聞いたようなセリフだったのが気になるが。
最初に真相を聞いた時、俺は心の底から妹に感謝すると共に、改めて家族愛の偉大さを思い知った。だがしかし、その後の喜由の恩着せがましさといったら半端ない。ぶっちゃけ全部台無しである。
「おい、兄者聞いてんのか?」
「え? あ、ああ聞いてるよ。ってお前それズルいぞ。それ言われたら何でもアリじゃないか」
「その為に手ぇ貸したんだから当然じゃ~ん? これで兄者は一生拙者のど・れ・い(はあと)」
「(はあと)うぜぇ。もういい。そんな事よりそろそろアルバムしまってくれよ。マジメに話しようと思って呼んだんだぞ?」
そう。ここ一ヶ月程の間に色んな事が一度に起こって一気に片付いて、生活環境が一変した。ここらで一度、整理が必要ではないかと考えた次第だ。
俺は改めてテーブルを囲む三人に目を向ける。
お馴染みの長袖体操服に身を包んだ我が妹の喜由。さらさらの茶髪で童顔・小柄・巨乳とある意味三拍子揃った無双の美少女。
上が白・下が紺色の剣道着で折り目正しく正座をしているお光。刀の鍔を眼帯替わりにして左眼を覆い、前髪ぱっつんで艶やかな黒髪をきゅっと一つに結い上げた、どこかあどけなさを残しながらも凛々しい雰囲気を纏う正統派美少女。
白の長袖Tシャツに短いキュロットをあわせた上に二―ソックス装備という出で立ちで俺を悩殺する光世。お光をそのまま成長させたかのような容姿で、ちょっと大人な香りを感じさせるお姉さん系美少女。
この三者三様の見目麗しい三人の女子は、揃いも揃って付喪神である。それぞれちょっとずつ違ったタイプではあるが。
そしてそんな付喪神達と、俺はこれから嬉し恥ずかしの一つ屋根の下ライフを送る事になるのだ。何というハーレムエンド。こんな幸福があっていいのだろうか。痛い目や怖い目も見たけど、こんなご褒美が貰えたのなら全部オッケー。もっとキツい目に遭っても俺は満面の笑みで受け入れられた事だろう。
いかん。嬉し過ぎてちょっと涙出そう。
よろしくお願いします!




