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とある冒険者の話(第0話改)

0話の改変バージョンです。

本編は少年の物語となります。

「やっぱり早く着きすぎたじゃーん」

「十日も前は早すぎるって、私たちの足じゃ王都から此処まで一日もかからなかったね」


 ナツミはシラヒメの愚痴に相槌のようにそう答える。日程を考えたのはリーダーだが、NPCから情報を仕入れたのはナツミだった。ナツミは言葉をつづける。


「王都じゃ五日はかかるって言われたんだけどなぁ、NPCだとって事だったのかな」

「徒歩での移動だと、時間かかるだろうね。それでも僕たちなら二日でたどり着ける距離だと思うけど」


 ナツミの言葉に答えたのはヨロギだ。


「さて、空いた時間どうやって潰そうか」


 リーダーであるミカナギの相談に、メンバーはうんうんとしばらく考える。


「じゃぁさ、ウィンブル山脈で金策しようぜ」

「あぁ確か、魔物素材うまいんだっけ?」

「そそ、五年前くらいに一回狩りつくした奴いたみたいだけど、もう大分復活してるってさ」


 ヨロギの提案にミカナギがいくつか質問をいれ、方向を定めていった。


「私はいってもいいよー、ネコとナッツンはどうする?」

「俺もいくよー、お前も行くだろ?」


 シラヒメとネコは行くようだ。――ナツミは最近合成スキルを上げていたのでそちらを優先させようと決めた。


「うーん、私はやめとくよ。街でゆっくりしとくね」

「そっか、じゃ早速向かいますか、ナッツンじゃぁねー」

「はいはーい、がんばってねー」

「そだ、俺の分の闘技大会登録しておいてくれよ、あれ代理でもできるらしいから」

「了解、やっとくね」


 五人の仲間たちは北にある森を抜け山の方へと向かう。ナツミは一人街へと歩く。


 ナツミはこの街に来たのは初めてだ。初めての街についたらやることはただ一つ。武器屋に向かうのだ。それが冒険者たるものの使命だろう。ということで大きな門を抜け、そのまま通りをまっすぐ歩く。

(人通りは結構多いねぇ、活気もあるしいい街だ)

 ナツミは大きな通りを少し行くと武器屋を発見した。武器屋の前には店の商品を眺めてる少年がいる。

 昔、なにかで見たラッパを欲しがっている少年みたいだとナツミは思う。少年は身長の割には引き締まった顔立ちであったが、武器を眺める姿はやはり身長相応な雰囲気があった。


 ナツミは少年が立ち去るまでずっと見ていた。彼の姿はナツミの琴線に触れるものがあった。少年はナニを欲しがっていたのかなと店先を伺う。そこにはミスリルの槍が飾られていた。あの少年には少し早い装備だろう、レベルに見合っていない武器だ。そう評価するとナツミは店の中に入った。


「へらっしぇー、ソーンズ武具店へようこそ! ガハッハ」

 なかなか特徴のあるおっさんだ。店の取り扱っている武器のランクはCってところだろうとナツミは推測する。初級から中級者向けの装備だ。

(掘り出し物もなさそうだし、見るところは無さそうだなぁ)

 ナツミはそう考えると、すぐに店を後にした。


 宿屋を探しながら、出店を周るが、ナツミの眼鏡にかなうような品はなかなか無い。私も狩りに行けばよかったか――とナツミは思う。

(でもあの少年を見れなかったかもしれないし、あれだけでも十分収穫だよね)

 自分の中でなんとか利点を見つけると、ネコマルから頼まれていた、闘技大会の登録に向かった。


 闘技場は街の外れ、南の方角にある。さっさと終わらせようとナツミは急いだ。


 適当に説明を聞き流し登録を始める。あれよあれよという間にナツミは何故か自分の分も登録してしまう。一通り終わってから、腕試しも悪くないかと思い直し、登録はそのままにしておいた。

 その後、ナツミは宿屋にもどって手持ちの素材で合成のスキル上げを行った。



「お、みんなお疲れー」

 山に狩りに行っていたメンバーが帰ってきた、八日間もナツミは一人でひたすら合成のスキル上げをしていた。おかげでカンストまで目前だ。

 今は宿屋で彼らの土産話を聞いているところだ。

「ネコが武者修行じゃーとか言って狩りまくって大変だったよ」

「手あたり次第やってたもんねぇ」

「う、だって闘技大会出ると思うとたぎってさ。そだ、登録してくれた?」

「したよー」

「さんくすー」

「間違って自分の分も登録しちゃったけど」

「ナッツンも出るんだ! 優勝したら賞金で飯おごってね」

「あんた達のほうが狩りで儲けてるでしょー」

「それとこれは別問題さ」

「いみわかんねー」

(仲間たちとの会話は楽しいな)

 長時間一人で孤独死しそうだったナツミである。スキル上げはライン工のようで精神的にもかなり辛い。システムウインドウを連打する作業を一日十時間は行っていた。


 彼らの話を聞きつつ、ナツミは二日後に迫った闘技大会に思いをはせる。なんだかんだで楽しみなのだ。シラヒメ達に自分のスキル上げの苦行や初日に武器屋の店の前でみた可愛い少年の話などをしつつ、夜は更けていくのだった。

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