第12話 姉とウザい友達
「ただいまー! 悠弥いるー?」
毎度のことながら勢いよく開けられる俺の部屋の扉。
何度も思うがノックしてから扉を開けてほしいんだけどな……
「おかえり……」
俺の目の前でやや興奮気味に見える深愛姉がカバンの中から用紙を数枚出し、こちらへみせてきた。
手にとって見ると、50点や40点と赤字でかかれていた。
「……テスト用紙?」
「うん!」
だとしたら、控えめにいってひどい……。
まさかこれで頑張ったから褒めてくれとか言われたらどうしようかと悩むぐらいだ。
たしか彼女が通っている高校はかなりレベルの高い進学校だった気がしたが?
「で、何でこれを俺に?」
俺は疑問に思ったことを深愛姉に訪ねる。
すると深愛姉は下をむきながら「ふっふっふ……」と不敵な笑みを浮かべていた。
「なんと今回は赤点がないから! 明日からテスト休みにはいれるんだよー」
天井を突き破るかのように勢いよく拳を振り上げる深愛姉。
「……そりゃよかったな」
つまりは俺の平穏な時が終焉を迎えたとも言える。
せっかく1人に慣れる時間ができると思ったのに。
「で、明日なんだけど友達呼んでいい?」
「ご自由にどうぞ。 俺は部屋にいると思うし」
「えー! 悠弥も一緒にだよ!」
いや……なんで!?
「何で俺も一緒にいなきゃいけないんだよ!?」
「学校でよく悠弥の話をするんだけど、そしたら友達が悠弥に会ってみたいって」
ただでさえ深愛姉の相手をするだけで精神的にきついっていうのに、プラスで深愛姉と同じレベルの女の相手をするのは体がいくつあっても足りないに決まっている。
いや、もしかしたら女ではなくて男って可能性も……?
「ちなみに友達って男?」
「ちがう女の子だよ! うちは女子校だから男子との交流なんかないよ!」
うん、明日はでかけることにしよう。
次の日、目が覚めてカーテンを開いた俺は絶望に打ちひしがれていた。
「……マジかよ」
空は真っ暗な分厚い雲に覆われており、その雲からポツポツとみたくもない雫が流れ出していた。
「今週は晴れって言ってたよな」
スマホの天気アプリを覗き込むと『今日は南から発生した低気圧が日本列島に上陸しており……』と、予報が外れたから雨が降っていますってことが書いてあった。
深愛姉の友達が来るので朝からバイクでどこか出かけようと考えていたのがこの雨で計画が水の泡に消えた。
レインコートを着れば運転できなくもないが、バイクが泥水で汚れることを考えると出かける気が失せてしまう。
「……今日は部屋にいるか」
そのための準備をするためにベッドから降りて洗面所で顔を洗い、歯を磨いてからリビングへと向かうと。既に深愛姉がいて、いつも通りソファに体育座りをしながらウイッチで遊んでいた。
「悠弥、おはようー! おにぎり作ったから食べちゃって!」
ウイッチの画面をみていた深愛姉は顔をあげて俺の方をみていた。
「おはよう……」
淡々と挨拶を済ませ、冷蔵庫から飲み物を取る。
「友達がね午前中のうちにくるって!」
「あっそ……」
ダイニングテーブルにあったおにぎりを持って自分の部屋に戻りいつも通りPCの起動、ヘッドフォンを装着し自分の世界に入っていった。
「デイリークエスト終わりっと……!」
ヘッドホンを外してから腕を伸ばし自分の体を背もたれに倒していくと背中と腕からポキポキと軽い音がなっていた。
スマホを見ると時刻はお昼を過ぎていた。
LIMEにメッセージと着信がきていたが、見なかったことに。
深愛姉の友達が午前中には来ると言っていたので今頃は楽しんでいることだろう。
「……腹減ったな」
寝起きにおにぎりを食べて以降何も食べていなかったためか腹の虫が鳴き出していた。
だが、リビングに行けば深愛姉に捕まること間違いなし。
財布を取り出して中身を確認すると青いお札が数枚入っていた。
「コンビニ行ってくるか」
厚手のパーカーとネックウォーマーを取り出して部屋を出ようとすると、外から勢いよくドアが開いた。
もちろん開けたのは俺ではなく……
「もー! 呼んでるのに何でこないのー!」
肩を露出させた紺のニットセーターにジーパン姿の深愛姉で俺の顔を見るなり、頬を膨らませていた。
「……俺がいたら邪魔だろと思ったんだ」
「邪魔じゃないよ! むしろ悠弥がいないとはじまらないよ!」
深愛姉の言葉に頭を抱え込みそうになっていた。
「その子が弟クンかい?」
初めて聞く声に思わず視線がそっちへと向ける。
声の主は深愛姉の背中越しからひょこっと顔を覗かせていた。
肩までスラっと伸びた黒髪に赤い丸メガネ、白のパーカーに足元全体を覆ったロングスカート姿と深愛姉とは系統が対称的に見えた。
「うん、悠弥っていうの!」
「へぇ〜」
深愛姉の友達は俺をみながらゆっくりと下げていく。
「話に聞いてたよりも、かっこいいじゃないか。 まあタイガきゅんには到底叶わないけど」
誰だよタイガきゅんって……。
「えっと、この子はね松戸琴葉っていうの! 小学校からの幼馴染なんだよ」
深愛姉は友人の琴葉の隣に立って紹介をする。
紹介された琴葉は俺の方を向くと「松戸 琴葉です」と言いながら会釈をしていた。
「……佐倉悠弥です」
俺も名乗ると琴葉につられるように会釈をした。




