表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

エピローグ

 夜が明け、晴れ間の現れた北海道大学の空。


 低温実験室では、相変わらず中谷と孫野、そして増えた助手たちが忙しく動いていた。


 孫野や他の学生たちが、人工雪の実験装置を操作する。隣では、中谷が次々に実験の指示を出していた。


 中谷の手には実験を進めるための計画書があった。その計画書の余白には、いくつかの詩や随筆の原案がしたためられていた。

 その中には、「雪は天から届く声」という題字も記されていた。


◇   ◇   ◇


 中谷宇吉郎。

 雪の科学者であり、詩人であり、随筆家でもあった。

 彼が雪に魅せられた理由わけは、記録に残されていない。

 けれども、人工雪を作ろうとするまなざしの傍には、いつも幼い妹に雪を見せそびれた日の記憶が白い息のように寄り添っていた。

 科学史に確かに刻まれた彼の生涯は、小さな約束を果たそうとした、ひとりの兄のささやかな愛情の物語でもあったと思えてならない。


〈終〉

 この物語を書いているあいだ、私は山下達郎やましたたつろうさんの「クリスマス・イブ」を流していました。

 この曲の歌詞の「会いたいけど来ない人」を「もう会うことが出来ない人」とイメージを転換し、妹文子を当てはめました。そして、宇吉郎が、ずっと「心深く秘めた想い」である「出来たての雪をつくる」という願いを、二度と会えない文子のために叶えることができた時、どんなことが起こるだろうか……。

 そんな風に想像を膨らませながら、この物語を整えていきました。


 作中の設定について補足します。

 中谷宇吉郎には一人の弟と四人の妹がおり、そのうちの一人の文子が生没年不明で、後年の記録にほぼ出てこないことから、作者は若くして亡くなったものと想像し、この物語を書きました。

 ただ、史実としては夭折した可能性もあるが、長生きした可能性もあり、正確なところは不明ということを添えておきます。

 また、中谷宇吉郎が作中で「雪は天から届く声」という文を著していますが、宇吉郎が本当に残した言葉は「雪は天から送られた手紙」です。作中の言葉は、作者が作品に合わせてアレンジしたものであることを付け加えておきます。


 2026年6月、自宅にて記す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ