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可憐で苛烈な気になるあの子  作者: 葉時


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23/26

2月 前編 冷たい風の中で、温もりが試される季節でした。

冷たい風が容赦なく窓を叩き、

白い息がすぐに空へ消えていく季節。


暦の上では春だけど、まだまだ寒さ真っ盛り。


気が付けば、年が変わってもう1か月が終わっていた。

冬休みが明けてから、綾瀬と直哉の距離は、誰の目にも分かるほど自然に近づいていた。


登校すれば挨拶を交わすのも当たり前、

授業の合間にちょこんと隣に来るのも当たり前、

昼休みに一緒に笑い合うのも当たり前。


ただ。


そんな温かい日常に、冬という季節は試練をもたらす。


学年末テストが近づく二月半ば。

寒さが厳しい朝。


直哉は、少し痛む頭を押さえながら学校へ向かっていた。


胸の奥が、きゅっと痛む。


(やば……なんか寒気する……)


この寒気が、自分の体調からくるものか。


それとも——

綾瀬と朝会った時のドキドキから来るものか。


まだ直哉には区別がつかなかった。



---------------



「なおくんの……声、弱すぎへん……?」


2月のある朝。

学校に来た直哉は、明らかに顔色が悪かった。


「なおくん、どうしたん?」

綾瀬が首をかしげる。


「いや……ちょっと寝不足で……」

声がかすれて熱っぽい。


(……絶対寝不足じゃない。これは風邪や)

(……でも……かすれた声もたまらん…)


綾瀬の乙女レーダーが即反応した。

ノイズもちょっと入っていた。



放課後


ふらふらと歩く直哉を見かねて、綾瀬は肩を貸す。


(……え、近……

 なんかいい匂い……)

動かない頭でぼんやりと考えながら、思い体を引きずる


帰宅し布団に倒れ込む。


(やば……頭痛い……)



布団に寝かせたあと


綾瀬はそっと額に手を当てた。


「……熱、あるやん……もう……」


いつもより声が優しい。

いや、甘い。


「ごめん……なんか迷惑……」


「迷惑ちゃいます。

 なおくんがしんどいの、嫌やもん」


(——“嫌”って……

 そんな言い方されたら……

 無理……)


直哉の心臓は弱っているどころか

むしろ限界突破しそうだった。


(なおくん風邪ひいて可哀そう…

でも咳してるなおくんもかわいい…)


綾瀬はタオルを替えようとしていた。


その手を——

直哉が、弱った声でそっと掴んだ。


「……もう少し……いてほしい……」


「っ………!」


一瞬、息が止まる。


(……ど、どうしよ……

 こんなん言われたら……

 うちが倒れる……)


頬が真っ赤になる。


「……う、うち、いますよ……

 なおくんが元気になるまで……ね?」


「綾瀬さん……

 やさしい……すき……」


「…………っっ!!??」


綾瀬、完全に固まった。


熱で甘えた言葉だと分かっていても、

心臓が破裂しそうだった。


(“すき”って……

 “すき”って……

 反則やろ……なおくん……)


(落ち着け綾瀬……

 これは熱のせいや……

 甘えてるだけや……

 ……でも……でも……)


胸に手を当てて深呼吸しても、

顔の熱は下がらない。


添い寝はしないが、距離は近い


「……綾瀬さん……

 ……いますか……?」


「……はい。います。

 なおくん、寝ててええよ……」


椅子に座ったまま、

ベッドの横で手を握られたまま、

綾瀬は小さく微笑んだ。


(……なおくんが、

 こんなふうに頼ってくれる日が来るなんて……

 うち……どうしたらいいんやろ……)



綾瀬は結局、

直哉が眠るまで手を握られていた。


帰り際、

寝息を立てる直哉の髪をそっと撫でて、

ぽつりと呟く。


「なおくん……

 こんなふうに甘えてくれはるの……

 反則やわ……もう……」


そして、

ほのかに赤い頬のまま、

静かに部屋を後にした。


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