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可憐で苛烈な気になるあの子  作者: 葉時


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20/26

12月 後編 冬の澄んだ気配が、いっそう深く胸に染みる季節となりました。

冷たい空気の中、

街路樹のイルミネーションがキラキラと光っていた。


白い息を吐きながら歩く綾瀬は、

横顔がやわらかく照らされ

まるで物語の中の人みたいで。


僕は——

気づけばずっと、その横顔ばかり見ていた。


イルミネーションの輝きなんて、

まるで脇役みたいにぼやけていく。


——綾瀬さん、綺麗すぎる。


そんな時だった。


「なおくん。」


「へっ!? な、なに……!?」


綾瀬は足を止め、肩まで届く髪の揺れもそのままに、

ゆっくりとこちらへ向き直る。


そして——少し笑って言った。


「なおくん、うちの横顔……好きやんな?」


「………………え?」


頭が真っ白になる。

心臓の音だけが、冬空にやたらと大きく響く。


綾瀬はくすっと笑い、

イルミネーションの光を背にして続けた。


「せやろ? 春休みの時も、教室でも。夏祭りの時も。」


そこまで言うと——

綾瀬は迷いのない足取りで直哉に歩み寄り、


顔をすっと寄せて、

まるで秘密を囁くように続けた。


「——しかも今も、ずーっと見てはったやん?」


「——————————————ッ!!!???」


声にならない声が漏れる。


「な、な、な、なんで……っ!」


綾瀬は片手で口元を隠しつつ、

わざとらしく首を傾けた。


「なおくんじぃっと見すぎやもん……うちじゃなくてもすぐ分かりますよ?」


「い、いや、その、ちが……!」


「何が違うん?」


綾瀬は歩幅をひとつ縮めて、僕の横へすっと並び立つ。


イルミネーションの光が、

彼女の横顔をまたやわらかく照らし出す。


「なおくんがうちのこと見てくれるの……うち、嫌やあらへんよ?」


「う、あ、あの、えっ……」


僕の反応に、綾瀬はくすくす笑いながら、

マフラーの端を指でちょん、とつまんだ。


「ほんなら……なおくん。

 これからも、うちの横顔……いっぱい見てええからね?」


心臓が限界を迎え、

冬なのに暑くて息ができない。


そんな僕を見て、

綾瀬は満足そうに微笑んだ。


「ふふ……なおくんが見てくれはるなら、

 他の何より……ずっと嬉しいわ。」


もはや言葉を発せない僕を置いて、

綾瀬は上機嫌に歩き出した。



イルミネーションの通りを抜けて、

少しだけ静かな道に入ったとき。


横を歩く綾瀬が、

ふと指先を自分の胸元でぎゅっと握った。


「なおくん。」


「え……な、なに?」


綾瀬は、困った顔で言った。


「うち、手ぇ寒いねんけど。」


「え?」


「え、やなくて。」


綾瀬は少しむっとしたように、もう一度、言葉を重ねた。


「うち、手ぇ寒いねんけど?」


そう言って綾瀬は僕の方へ小さく一歩近づいて、


手の甲をそっと上向きにして見せ、


「……ん。」


と言いながら、

まるで当たり前のことみたいに僕に片手を差し出してきた。


イルミネーションの残光が、

その指先を淡く照らす。


「なおくん、あっためて?」


死んだ方がましだと思うほど、

心臓が激しく動いた。


「えっ……あっ……いや……これは……」


「なおくん?」


「っ……あの、その……」


綾瀬は首を傾け、上目づかいでぽつり。


「……いやなん?」


「いやじゃないです!!!!!!!」


食い気味に答える僕に、

綾瀬は満足そうににっこり微笑む。


「ほんなら、握って?」


——冬はつとめて。

 雪の降りたるはいふべきにもあらず、霜のいと白きも、

 僕も白き灰になりてわろしわろし。

(※現代語訳:緊張しすぎて灰になりました)


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