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可憐で苛烈な気になるあの子  作者: 葉時


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14/26

10月 中編 空が高く澄みわたる季節、触れた指先の温度だけが胸に残りました。

秋晴れの京都。

空気は澄んでいて、観光地には柔らかな朝日が差し込んでいた。


班での自由行動・本番の日。


綾瀬の完璧な行程表のおかげで、

移動は驚くほどスムーズだった。


「朝比奈さん、これマジで助かるわ!」

「どこ回るか全部迷わんで済む!」

「すごい……朝比奈さん……!」


褒められても綾瀬は控えめに微笑むだけ。

ただ、直哉が「すごいな……」と呟いた瞬間だけ、

ほんの少し頬が緩んだ。


(なおくんに言われるの……嬉し過ぎる)


誰にも気づかれないほど小さな変化。




寺院の石段を上がる途中。

藤井が少しつまずきかけた。


「大丈夫!?」


直哉が手を伸ばし、隣にいた綾瀬も反射的に支えようと手を出した。


その瞬間——


直哉の指先と、綾瀬の指先が触れた。


ほんの一瞬。

けれど、二人の動きが止まる。


(あ……)

(……なおくん……)


誰にも気づかれない指先の温度。

綾瀬はすぐに視線を外し、標準語で取り繕う。


「失礼しました、大森君。」


「い、いや……僕こそ……っ」


たったそれだけで、二人とも階段の上まで妙に沈黙する。




昼食のあと、全員で記念写真を撮ることになった。


「じゃあ僕ら撮ってもらうかー!」


「朝比奈さーん、お願いしていいですか!」


綾瀬は快く引き受け、他の班の分まで撮影する。


そのあと藤井が言った。


「朝比奈さんも入りましょう!

 ほら、大森君の横空いてるし!」


その“自然な流れ”で綾瀬が直哉の真横に立つ。


距離、近い。


(えっ………近……っ!!)


綾瀬は何食わぬ顔で微笑む。


(なおくん……横に立つん、こんな嬉しいんや……)


写真を撮る直前、

直哉の耳がゆっくり赤くなっていったのは、

綾瀬だけが気づいていた。


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