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ある配達員
その人は本を運んでいる
いつも深夜にやってくる
白毛混じりに皺の頬
緑の配達服が似合う
挨拶はいつもはっきりで
にこやかな顔は若く見える
しかし手慣れた様子からは
相応の刻が垣間見える
なぜこんなにも爽やかなのか
煌々とする店内で
包装された本だけを置きにやってくる
無垢のアナウンス耳障り
それでもやっぱりにこやかだ
僕より多くを生きているはずだ
僕より負荷はあるはずなのだ
なのにどうして楽しげだ
素なのかポリシー?
一服してても変わらない
なぜだ、なぜ?
もしもそれが彼の答えならば
いったいどんなものにあったのだろう
友愛?それとも長きの憎しみ?
蓋はないし覗けるものでもないが
良ければ見てみたいものです
欲しているものがあるかもしれない
なると骨に似た過去と
すでに寂れたプラットフォームを
良ければなにか残してね




