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笑顔で
昔から今の写真を見ると
変わらずおかしな笑顔である
気にしだしたのはいつからだろう
とにかくそいつをどうにかしたいと
いつも笑顔を貼り付けていた
前歯がどうにもおかしいと
ほんのり引いて笑ってみた
それを見た父が言ったのは
変な笑いだということだ
下顎を出して笑ってみた
変にしゃくれて寒々しい
犬歯の控えが気持ち悪い
歯が出てなけりゃまだましだ
すると誰かが言ってきた
もっと笑顔でやってくれ、と
それはどいつだ
眉の下がった情けのないやつ
頬の張りが歪んでいる
これまた気持ちの悪いやつ
そうか鏡がいけないのだ
よく似た誰かを写すからだ
固まる、笑顔、自然と不自然
やがて上手く笑えるように
写真映りもだいぶ良いものに
しかしなんだろうこの痛みは
ああ、顎関節症を超えて
なにか無邪気な子供時代の
そこに映った僕が痛むのだ
良ければなにか残してね




