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傾いた東雲
煙草を吸うためベランダに出たら
ようく傾いた空に出会った
パチリと火をつけ朝けむりを吸う
ふぅーっと吐く間にうろこが見えた
まるで巨大な空さかな
尾びれは暗がり稜線にかかる
先頭はまるで炎のまたたき
あいつの瞳を見てごらん?
翡翠とトパーズ、それと鍾乳
朝という名の薄明ざかな
そんな大きなさかなの隅で
しんねり眺める三日月は
もうすぐ眠りにつくらしい
その下で光る明星は
羨ましそうにさかなを眺める
……煙草の火種が消える頃
さかなはどこかへ行ってしまった
代わりに一羽つっこんでくる
早起きな鳥は南へと行った
寒さに応えて大窓閉めれば
無数の水滴張り付いている
……僕はいままで海にいたらしい
良ければなにか残してね




