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朝まだき
灯火にまとわりつく湿気
ぎんなん香水ツンとして
虫の楽団明け空に消ゆ
鳥のピーチクする時間
あたりに煙がたちのぼる
カンコン近所に鳴り響く
枝葉のつゆに薄曇りの空
稜線に沿って紫に赤
日輪の姿まだ見えぬ
こんな毎日が続くといい
ときに陽射しが見えずとも
朝の匂いは変わらない
時間と場所と季節が変わり
それに付随した記憶が違えど
朝の匂いは変わらないのだ
恐ろしさなどなにもない
薄明の清廉なる香りだ
スノウドームにのみ留まるような匂い
変えがたい、宇宙の、始まりの記憶
その因子はどこまでも続き
僕らのもとまでやってきた
明日も続けばいいなぁ
良ければなにか残してね




