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穴と工業
私はむかし、空色だった
記憶の彼方を探ろうするとき
大海反転望まぬ反芻の
そこに立つのは何者か
どうにも堰き止められてしまって
不思議と行き着く始発の朝は
雲と青とが織り成しゆく
加えて夕空ひぐらしの鳴く
曖昧模糊なるもののけの色
荒れる大海途中の駅は
星瞬き吸う乳房の夜と
酔いしれすぎるか月夜の民
それぞれ更けいる酸性の闇
私はむかし、空色だった
見開く眼の先には待つか
時間の川辺と殺人の陽
いつからラムネは入れ替わろう
虚像の行き先、いなそれが光
誰がいつから望んだか
針と陽光織りなす無常
雲は素通り去りゆく水
通して通して底抜けの日々
ゆきゆき終着その果てに
花瓶は融解ほどなくして砂
灰色めぐりて砂に逢いて
空へと溶け込み針ごとくなる
私はこの先、空となろうか
目玉は大きな硝子細工。意外と抜け落ち、星を拾って何度も作る。不純物は隠し味です。