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百遍の原で眠りたい
ほどこしのない夜をください
寝静まったこの街で
しんしんとする曇り空の下
時計の駆動が聴こえるような
いつかは憧れだったこの時間
ほどこしのない夜をください
吐息のぬくもり逃げる間もなく
柔肌に触れる黒髪たおやか
仄かに香るは煙草と紅水
まつ毛の長さがよく見える
枕の匂いが落ち着きのしるし
ぽつぽつ街灯星は遠く
くぐもる微音の切なさよ
すべて流れるためにあるのか
ほどこしのない夜をください
よだかのようでありたいと
そう願ったのはなぜだろう
あれは星になったんじゃない
爪とあかねの代物だ
ろうで固めた羽ではない
かぶとむしだって食べたかない
けれども僕は願ったんだ
サザンクロスのふもとから
ほどこしのない夜をください
神でもなんでもいいのです
サンタマリアの膝でもいい
焚べようとするその薪で
僕の頭を殴ってくれ
ほどこしのない夜を、くれ!
良ければなにか残してね




