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受信
なんだか久しい顔を見た
田口さんなんでいるんですか
ここは侘しい場所ですよ
僕の生まれた場所ですよ
どこか遠くに行くでもなく
僕らはずうっと歩いていた
なにか愉快に話している
それはカニです、ヤドカリじゃない
歩いて話しているうちに
車でどこかへ行こうと言った
それは良いやとどちらかが言う
けれどしばらく歩いたまんまだ
そこで田口さん、どうしてか謝る
なにがそんなに罪なのか
僕には到底わからなかった
ずっとしんぼり謝っていた
それから僕らは駆け出した
車あるはずの場所へ向かって
しかしどこへ行くのだろう
車があるとは限らないのに
最後に彼は謝った
僕はなぜだか笑ってた
そうしてあえなく夢は終わった
布団に残ったシガーの匂い……
スマホに通知が入ってた
(それは三十分前の通知)
田口さんからのメッセージ
僕はいったいなにを受信したか……
良ければなにか残してね




