一対の窓辺
あそこに光が灯ってる
レースの向こうに生活がある
明かりは暖色落ち着きがある
それはいかにも良いもので
きっと僕より良い生活だ
(勝手に想像しているのだけど)
きっと良いものを食べている
食器も質素で手作りだ
パスタの食べ方とっても綺麗さ
かびたパンなんて食っちゃいないぜ
きちんと座って手を合わせるだろう
僕はあぐらをかいている
桃爪の揃う足元は品で
しなやかな口で優しくはむ
あれは女の人だろうか
ロングスカートが掛かってる
奇抜な服は着ないだろうな
スマホを取って耳に当てる
きっと親しい僕以外だ
明確なまでに目尻が下がる
そこに憂いはいっさいない
怪しい僕とは大違いだ
やがてベッドにもぐりこむ
側にはおおきなぬいぐるみ
電気が消えて僕と同じ
けれど向こうは暖かそうだ
一対の窓はどこにもなく
その他の窓と同化する
僕は立ち上がりノートにつける
そして同様ベッドへ向かう
眠りの前にもう一度見た
窓辺に妖しい一点の赤
そこで僕は微笑み出した
ああ、きちんと闇はあったと
その一点は僕からではない
向こうの窓辺で光っているのだ
赤の瞳は僕からではない
赤の一線は僕の窓辺に
僕の透明視点は向こうに
ああ、恐ろしい、恐ろしい!
良ければなにか残してね




