56/108
よがれ、朧月夜に
午前三時二十一分
ここには二度と訪れぬ
眠るように冷めるまでに
訪れた朝は二度と来ぬ
午前三時二十一分
窓辺にうつる朧月の
射し込む光にぽろぽろちらつく
そうか予報は雪だった
線が揺らいで窓が震える
反してここは暖かで
ぽっかりストーブ揺れている
午前三時二十一分
パイプの銀には映らない
生命膜にも映らない
ただ月ひかりに浮かび上がる
雪の精とも言えようか
だんだん窓辺へ近づいて
夜空の灰へのぼりゆく
午前三時二十一分
こののち永遠などいらぬ
若葉は白に埋もれている
タイルも冷色かんがんだ
紺と灰色の二相系に生まれし時は
ひとつを願うものとなろう
声や動きとは違う叫びで
午前三時二十一分
唱えがたき名前と顔を
悠久の空へ送るとともに
ただあなたの安らぎを願い……
良ければなにか残してね




