ソラトリアム
逆さ吊りの男が呼んでる
月に住んでいるらしい
ニヤけたつらがどうにも癪だ
ようし応答してみよう
なになにそいつが言うには
空には立方グラスがあるらしい
それで一杯やろうという
なるほどやってみようじゃないか
手を取り僕は吊るされる
それが乾杯の条件だとか
けれども僕は逆さにならない
男はほんのり悲しそう
けれど見たまえ空中散歩だ
街はこれほど小さかったか
家は砂漠の粒と同じ
僕が空色に澄んでいく
男は手を引き雲を下ろす
そこには魚と釣り人だ
どうやら炎も上がってる
星霜林まで見えてるぞ
やがて逆さの男と一杯
立方グラスは透き通る
どうやらこれにてお別れだと
逆さの男は帰っていった
僕はどうしたらよいだろう
空に落ちること叶わない
上下左右までがらんどう青
なんなんだろうこれは
西の海にある瑪瑙の煌めき
やがて夜には星海月
男の涙が流流と
地上へ登って龍となる
貝が開く
直線光のささやきだ
男はまた泣く
だんだんだんだん逆さとなって
星は遥かに青白く浮かび
やがて逆さの天となった
僕は境目に立っている
円筒宇宙にただ独りのみ……
良ければなにか残してね




